01第一種少額電子募集取扱業務とは
株式投資型クラウドファンディングを行うための登録です。2014年の金融商品取引法の改正で作られ、2015年から登録が始まりました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式な名称 | 第一種少額電子募集取扱業務 |
| 根拠 | 金融商品取引法 |
| できること | 非上場株式の募集の取扱いを、インターネットで行う |
| 発行会社の調達の上限 | 1年間に1億円未満 |
| 1投資家の投資の上限 | 同一の発行者につき年間50万円 |
| 最低資本金 | 1,000万円 |
| 日本証券業協会への加入 | 必須 |
| 発行会社の審査 | 事業計画の妥当性を審査する義務がある |
通常の第一種金融商品取引業(証券会社)は資本金5,000万円が必要ですが、この業務は1,000万円に抑えられています。取り扱える金額に上限を設ける代わりに、参入しやすくしたという設計です。
02なぜ事業者が少ないのか
制度ができて10年以上経ちますが、国内で実際に運営されているプラットフォームはごく限られます。当サイトが把握している募集の実績は次のとおりです。
| プラットフォーム | 募集件数 | 成立 | 不成立 | 累計調達額 | 最初の募集 | 直近の募集 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| FUNDINNO | 696件 | 455件 | 173件 | 142.7億円 | 2017-04 | 2026-05 |
| イークラウド | 62件 | 47件 | 6件 | 13.2億円 | 2020-07 | 2026-04 |
| ユニコーン | 40件 | 25件 | 14件 | 10.1億円 | 2019-07 | 2022-10 |
| CF Angels | 36件 | 21件 | 13件 | 3.9億円 | 2020-08 | 2024-11 |
| AngelNavi | 5件 | 5件 | 0件 | 5,057万円 | 2020-02 | 2023-05 |
事業者が増えない理由を、制度の面から挙げます。
| 制約 | 中身 | 事業への影響 |
|---|---|---|
| 発行会社1社あたり年間1億円未満 | 1社から取れる手数料の上限が決まる | 件数を増やさないと採算が合わない |
| 1投資家あたり年間50万円 | 1人から集められる額が限られる | 投資家数を増やす必要がある |
| 発行会社の審査義務 | 事業計画の妥当性を審査しなければならない | 審査に人手と時間がかかる。件数を増やしにくい |
| 日証協の自主規制 | 協会の規則に従う必要がある | 体制の維持に費用がかかる |
| EXITが少ない | 投資家が回収できる例が限られる | 投資家が増えにくい |
| 不成立のリスク | 目標額に届かなければ手数料が入らない | 収益が不安定 |
1行目と2行目の組み合わせが効いています。1件あたりの調達額が数千万円で、そこから得られる手数料は限られる。それでいて審査の負担は重い。事業として成り立たせるには、相当の件数を回す必要があります。
03上限の意味を、投資家の側から読む
2つの上限は、投資家を守るために設けられています。それぞれの意味を確認します。
| 上限 | 誰を守るか | 守っているもの |
|---|---|---|
| 発行会社1社につき年間1億円未満 | 投資家 | 小口の資金で大きな調達をさせないことで、開示の負担が軽い枠に収める。1億円以上なら有価証券届出書が必要になる |
| 1投資家につき同一発行者で年間50万円 | 投資家 | 1社に集中させないこと。この商品の性質上、1社の結果で全部が決まるのを防ぐ |
2行目が重要です。制度が明示的に「1社に集中させるな」と言っています。不動産型や融資型にはこの上限がありません。株式投資型だけに上限があるのは、ゼロになる確率が高い商品だからです。
| 種別 | 1社あたりの投資の上限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 株式投資型 | 年間50万円 | 金商法 |
| 不動産型 | 上限なし(小規模不特事業は100万円) | 不特法 |
| 融資型 | 上限なし | — |
| 事業型 | 上限なし | — |
不動産型の小規模不特事業に100万円の上限があるのも同じ発想です。規模が小さい事業者ほど、1投資家あたりの上限を設ける。制度の一貫した考え方です。
04発行会社の審査は、何をしているのか
プラットフォームには、発行会社の事業計画の妥当性を審査する義務があります。何を見ているのかを整理します。
| 審査の項目 | 中身 | 投資家が確かめられるか |
|---|---|---|
| 発行会社の実在と適格性 | 登記、役員の経歴、反社会的勢力との関係 | 募集ページの会社情報 |
| 財務の状況 | 直近の決算、資金繰り | 募集ページの業績 |
| 事業計画の妥当性 | 計画の前提が不合理でないか | 募集ページの計画 |
| 調達資金の使途 | 使い道が明確か | 募集ページ |
| 開示の内容 | 投資家の判断に必要な情報が出ているか | 募集ページ全体 |
| 株価の算定根拠 | 評価額の根拠が示されているか | 募集ページ |
審査を通っているということは、最低限の確認は済んでいるということです。ただし「この会社は成功する」という判断ではありません。
実際、審査を通った募集の中にもその後倒産した会社があります。審査は「募集をしてよいか」の判断であって、「投資すべきか」の判断ではありません。そこは投資家が自分でやることになります。
05日本証券業協会への加入が必須な理由
第一種少額電子募集取扱業務の登録には、日本証券業協会(日証協)への加入が事実上必須です。協会に加入しない場合、同等の社内規則を整備する必要がありますが、実務上は加入するのが通例です。
| 日証協が定めていること | 中身 |
|---|---|
| 株主コミュニティ制度の運営 | 非上場株式の売買の場を提供する仕組み |
| 非上場株式の取扱いに関する規則 | 勧誘の方法、開示の内容、審査の基準 |
| 投資家の投資限度額の管理 | 1社につき年間50万円を超えないようにする仕組み |
| 苦情・紛争の解決 | FINMACを通じたあっせん |
| 会員の監査 | 定期的な検査 |
3行目が実務的に効いています。50万円の上限は、プラットフォームが管理する義務を負っています。投資家が自分で申告するのではなく、システムで制限されます。
ただし、プラットフォームをまたいだ合計は把握されません。同じ会社が複数のプラットフォームで募集することは通常ないので実害は小さいのですが、投資家が自分で全体の金額を把握しておく必要があることは変わりません。
06この制度で投資する前に、確かめること
株式投資型のプラットフォームを選ぶときの確認です。
| 確認 | 見るところ | OKの条件 |
|---|---|---|
| 第一種少額電子募集取扱業務の登録があるか | サイトのフッター、金融庁の一覧 | 登録番号が一致する |
| 日本証券業協会の会員か | サイトの記載、日証協の会員名簿 | 会員として掲載されている |
| 募集の実績が何件あるか | サイトの実績ページ | 件数と、成立・不成立の内訳が出ている |
| 不成立の実績を公表しているか | 同上 | 不成立を隠していないか |
| EXITの実績を公表しているか | 同上 | 件数と内容が出ている |
| 募集ページの情報量 | 実際の募集を見る | 財務、事業計画、株価の算定根拠、リスクが書かれている |
| 投資家保護基金に加入しているか | サイトの記載 | 第一種金商業者として加入している |
4行目を補足します。不成立の件数を公表しているプラットフォームは、情報開示の姿勢として信用できる部類です。成立したものだけを並べれば実績はよく見えますが、投資家にとっては不成立の割合も重要な情報です。
07よくある質問
登録や許可があれば安全ですか。
違います。登録・許可は最低限の体制と財産的基礎を確かめたもので、集めた資金が正しく使われることの保証ではありません。過去に事故を起こした事業者も、全社が登録業者でした。
登録番号はどこで確かめられますか。
金融商品取引業者は金融庁の「金融商品取引業者登録一覧」、不動産特定共同事業者は国土交通省の一覧で照合できます。どちらも無料で公開されています。
不動産型と融資型で、監督する役所は違いますか。
違います。不動産特定共同事業は国土交通省と都道府県、金融商品取引業と貸金業は金融庁(財務局)です。
元本を保証する商品はありますか。
ありません。出資を集めて元本を保証することは出資法で禁じられています。「元本保証」と書いてある業者には関わらないでください。
08この記事の数字は、どこから取ったか
会社名を挙げて処分や事故を書くにあたっては、照合を法人番号の完全一致に限りました。社名の部分一致で突き合わせると、似た社名の別会社の記録を拾ってしまいます。当サイトが実際に試したところ、82件が一致したように見えてそのほとんどが別会社でした。
できていないことも書きます。不動産特定共同事業者への監督処分は国土交通省・都道府県の所管で、この事例集には含まれていません。また償還後の実績は、事業型を除いてどの事業者も公表していないため、不動産型・融資型については「戻らなかった件数」を外から数えられません。
数字はいずれも元本を保証するものではなく、この記事は特定の商品の勧誘ではありません。

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