投資総研
減価償却

初めての減価償却、
正しく理解しよう

「節税になります」と勧められる商品の多くは、減価償却を使っています。今年の税は減りますが、売るときや契約が終わるときに、その分を払い直す「先送り」がほとんどです。「今年いくら減るか」ではなく「最後にいくら残るか」で考えられるように、しくみを絵と数字で、ひとつずつ説明します。税の記述は、国税庁と法令の原文で確かめたものだけです。

4年で減る税
−300万円

1,000万円を4年で経費に(税率30%の例)

売るときに増える税
+240万円

5年目に800万円で売った場合

本当に減った税
60万円

差し引き

しくみ

お金の流れと、4つのリスク

  1. 資産を買う築古アパート・リースなど
  2. 毎年経費にして、今年の税が減る
  3. 出口で売る・契約が終わる
  4. 戻ったお金に税がかかる
⚠ 節税の多くは、税を払う時期を先に延ばすことです。
●元本割れ元本が減ることがある:あてはまる
●途中換金途中で換金しにくい:あてはまる
△値動き売るときの値段が動く:条件つき
○為替為替で円の額が動く:あてはまらない

●あてはまる △条件つき ○あてはまらない(トップの「リスクとリターンの3段」と同じ物差し)

ポイント

まず、3つだけ覚える

  • 税はなくならず、後ろにずれる経費にした分だけ今年の税は減りますが、帳簿の上の価値も同じだけ減ります。
  • 売るとき・終わるときに、取り戻される帳簿の価値が小さい資産を売ると、売った額のほとんどが利益になり、そこで税がかかります。
  • 手数料や値下がりで、損になることもある手数料や資産の値下がりは、税の効果から差し引かれます。何もしないほうが手元に残る場合もあります。
税の増減(万円):1,000万円の資産を4年で経費にし、5年目に800万円で売った場合(税率30%の例)
±0−751年目−752年目−753年目−754年目+2405年目に売る−60差し引き

税が減る税が増える差し引き

注記・出典

4年で税は300万円減りますが、売るときに240万円増えるので、本当に減ったのは60万円です。もし1,000万円のまま売れたら、300万円減って300万円増え、差し引き0。得が出るのは「今の税率が高く、売る年の税率が低い」ときと、「払うのを先に延ばせる」ことに価値がある場合です(帳簿に残る1円などは省いています)。

基本

しくみを、3分で

1,000万円の木造アパートを買ったら、何年に分けて経費にする?

新築法定耐用年数 22年
45万円1年あたり
築22年を過ぎた中古簡便法で 4年
250万円1年あたり

同じ1,000万円でも、中古なら1年あたりの経費が約5.5倍。これが「中古の資産で節税」と言われる理由です(建物部分だけ。土地は経費になりません)。

1減価償却とは

1,000万円の設備を買っても、その年に1,000万円を経費にはしません。使える年数に分けて、毎年少しずつ経費にします。 これが減価償却です。何年に分けるかは、資産の種類ごとに国が決めています(法定耐用年数)。

2なぜ節税になるのか

経費が増えると利益が減り、税が減ります。中古の資産は分ける年数が短くなるので、早く・たくさん経費にできます。 たとえば築22年を過ぎた木造住宅は、最短4年で経費にできます。

3なぜ「先送り」なのか

経費にするたびに、帳簿の上の価値は減っていきます。帳簿の価値が0に近い資産を売ると、売った額のほとんどが利益になり、そこで税がかかります。 先に減った税を、売るときに払い直す形です。

この先で出てくる言葉(5つ)
法定耐用年数
資産の種類ごとに国が決めた、経費に分ける年数。木造の住宅は22年、普通車は6年。
簡便法
中古の資産の年数を短くできる計算。法定の年数をすべて過ぎていれば、法定の年数×20%。
定額法・定率法
毎年同じ額を経費にするのが定額法、初めの年ほど多く経費にするのが定率法。建物は定額法だけ。
損益通算
ある所得の赤字を、ほかの所得(給与など)の黒字と差し引くこと。これで給与にかかる税が戻る。
繰り延べ(先送り)
税をなくすのではなく、払う時期を後ろにずらすこと。減価償却の節税の多くはこれです。
型

勧められることが多い4つの型

オペレーティングリース

主に法人
何をする
航空機・船舶・コンテナなどを貸す事業に、匿名組合などを通じて出資する
税の効果
事業を営む側が資産を償却し、初めの数年に損失が出る。出資者はその損失の分配を受ける
出口
資産の売却や契約の終了で利益の分配を受け、そこで課税される
主なリスク
資産の中古価格、為替、借り手の倒産。法人でも出資額を超える損失は経費にならない
詳しく見る →

築年数の古い木造アパート

主に個人
何をする
法定耐用年数(22年)を過ぎた木造アパートを買って貸す
税の効果
建物部分を最短4年で経費にでき、不動産所得の赤字を給与などと損益通算できる
出口
売却するとき、経費にした分だけ取得費が小さくなり、売却益が大きくなる
主なリスク
修繕・空室・売却価格。建物以外(土地)は経費にならない
詳しく見る →

少額の資産を貸す事業(コンテナ・足場など)

法人・個人
何をする
少額の資産を買って貸し、買った年に経費にする
税の効果
令和4年4月以後に取得した貸付け用の資産は、少額資産の一括経費化の特例の対象から外れた(主要な事業として行う場合を除く)
出口
資産の売却・事業の終了
主なリスク
特例が使えないと、通常の耐用年数で経費にすることになる

中古の高級車

主に法人
何をする
法定耐用年数(普通車6年)を過ぎた中古車を事業用に買う
税の効果
簡便法で耐用年数2年。定率法なら償却率1.000で、使い始めた年に(月割りで)経費にできる
出口
売却すると、帳簿の価値との差が利益になり課税される
主なリスク
事業に使っている実態。売却価格。経費にした分は売却時に取り戻される

足場・ドローンなど資産ごとの法定耐用年数は、この表には載せていません。耐用年数省令の別表で個別に確かめてください。

計算機

本当に得か、出口まで計算する

例を選ぶか、勧められた商品の数字を入れてください。左上の「今年減る税」は売り文句になりやすい数字で、右上が出口の税と時間の価値まで引いた、何もしない場合と比べた差です。

売り文句になりやすい数字:今年減る税—
出口の税まで引いた、本当の得(損)—
  • 経費にした額による、税の減少(合計)—
  • 出口で戻る額にかかる税—
  • ① 税率の差の効果—
  • ② 税を先に延ばした価値—
  • ③ 元本の増減(税引後)と手数料—
  • ④ 戻るまでお金を寝かせるコスト—
  • ⑤ 毎年の事業の利益(税引後・割引後)—
  • ①〜⑤の合計=本当の得(損)—

注記・出典

計算の例は実際の商品の条件ではなく、税率も例です。経費にした額は投資額と同じで、出口の時点で帳簿の価値は0、手数料は経費にならないもの、毎年の事業の利益は今の税率で課税されるものとして計算しています。所得税の税率は国税庁 No.2260 ↗、法人税の税率は国税庁 No.5759 ↗で確かめられます。

耐用年数

中古で買うと、何年で経費になるか

中古で買った場合の耐用年数(簡便法) —

注記・出典

国税庁 タックスアンサー No.5404(簡便法)と耐用年数省令 別表第一の年数です。改修などの支出が取得価額の50%を超える場合は簡便法を使えません。国税庁 No.5404 ↗ 耐用年数省令 ↗

よくある勘違い

よくある勘違い

  • ✕経費にすれば、その分の税は消える

    ○税は消えず、多くは後ろにずれるだけ

    経費にした分だけ帳簿の価値が減り、売るときにその分が利益になって課税されます。
  • ✕今年減る税が大きいほど、得をする

    ○最後に手元にいくら残るかで決まる

    手数料、資産の値下がり、出口の年の税率で、何もしない場合より手元のお金が減ることもあります。
  • ✕個人でも法人でも、同じように使える

    ○契約の形と、個人か法人かで扱いが違う

    個人が匿名組合から受ける分配は原則として雑所得で、その損失は給与などと相殺できません。法人でも、出資額を超える損失は経費になりません。
  • ✕即時償却は、どんな設備でも使える

    ○要件と対象外が細かく決まっている

    売電が主な目的の発電設備、委託型のコインランドリー、マイニング、貸付け用・中古の資産などは対象外です。
チェックリスト

契約する前に、確かめる6つ

  1. 出口で戻ってくる額と、その年の税率

    今年減る税の額ではなく、売却・分配・償還のときにいくら戻り、そのときいくら課税されるかを先に聞いてください。上の計算機に入れると、本当の得が出ます。

  2. 手数料の総額

    組成・仲介・管理の手数料は、税の効果から直接差し引かれます。

  3. 資産が実在し、事業として動いているか

    貸す相手・資産の所在・稼働の状況を書面で確かめます。

  4. 契約の形(任意組合・匿名組合・直接保有)

    形によって、損失を他の所得と相殺できるかどうかが変わります。個人が匿名組合から受ける分配は原則として雑所得で、その損失は損益通算できません。

  5. 自分の税率が、出口でも同じか

    今の税率が高く、出口の年の税率が低いときに得が出やすくなります。同じなら、残るのは税の先送りの価値だけです。

  6. 税理士の確認

    個別の商品が自分に当てはまるかは、契約の前に税理士に確認してください。

もっと詳しく

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即時償却の要件や改正の歴史など、詳しく知りたい人向けです。押すと開きます。

ほかにも勧められる資産(8つ)蓄電池・マイニング・コインランドリー・自販機・LED・トレーラーハウス・美術品・競走馬
資産売り文句の型耐用年数・扱い注意
系統用蓄電池即時償却を売り文句に耐用年数の区分を明示した国税庁の文書は確認できず売電が主な目的の発電設備等は経営強化税制の対象外。市場価格で収益が動く
マイニングマシン即時償却・短い年数を売り文句にパソコン4年・その他の電子計算機5年(区分は機械による)暗号資産マイニング業の資産は経営強化税制の対象外と明記
コインランドリー即時償却洗濯業用設備13年(器具備品との線引きは確認中)管理のおおむね全部を他に委託する型は経営強化税制の対象外と明記
自動販売機短い年数5年(器具及び備品)置き場所・売上の見込み。貸付けとして扱われる形か
LED照明少額資産・短い年数照明設備は建物附属設備。器具一式の扱いは確認中貸付け用の少額資産は一括経費化の特例の対象外(令和4年4月〜)
トレーラーハウス建物でなく車両として年数を短く建物か車両かを示した国税庁の文書は確認できず扱いは国税庁の文書で確かめられなかった。売り手の説明だけで判断せず税理士に確認
美術品減価償却できる範囲平成27年1月1日以後の取得で1点100万円未満は、原則として減価償却資産時の経過で価値が減らないことが明らかなものは除く
競走馬短い年数4年(競走用の馬)賞金は成績しだい。維持費がかかる
注記・出典

耐用年数は耐用年数省令の別表、美術品は国税庁 美術品等についての減価償却資産の判定FAQ ↗。「蓄電池電源設備(6年)」は停電時用の設備を指し、系統用蓄電池には当たりません(耐用年数通達2-2-2 ↗)。「確認できず」「確認中」のものは、国税庁の文書で扱いを確かめられなかったもので、当サイトは断定していません。

即時償却の特例:使えるもの・使えないもの中小企業経営強化税制の要件と、対象外のもの

蓄電池・コインランドリー・マイニングマシンなどは、買った年に全額を経費にできる(即時償却)ことを売り文句に勧められることが多い資産です。 その根拠になるのが「中小企業経営強化税制」です。使えれば効果は大きい一方、要件と対象外のものが細かく決まっています。

中小企業経営強化税制
中小企業投資促進税制
効果
即時償却か、税額控除(10%。資本金3,000万円超の法人は7%)を選ぶ
30%の特別償却か、7%の税額控除(控除は資本金3,000万円以下の法人のみ)
前提
経営力向上計画の認定を受け、計画に沿った設備を取得して国内の指定事業に使う
対象の機械・ソフトウエアなどを取得して指定事業に使う
最低の取得価額
機械装置160万円、器具備品40万円(令和8年4月1日以後の取得。それ以前は30万円)、建物附属設備60万円、ソフトウエア70万円
設備の種類ごとに定め
期限
令和9年3月31日までの取得
令和9年3月31日までの取得

対象にならないもの(手引き・法令の記載)

  • 売電が主な目的の発電設備等売電の割合が2分の1を超える発電設備は対象外。「発電設備等」には併設する蓄電装置も含まれ、全量を売る場合は電気業として扱われる。
  • 委託型のコインランドリー「コインランドリー業(主要な事業であるものを除く。)の用に供する資産でその管理のおおむね全部を他の者に委託するもの」は除かれる。
  • 暗号資産のマイニング「暗号資産マイニング業の用に供する資産」は除かれる。
  • 貸付けに使う資産・中古・国外で使う資産新品を取得し、自社が国内で営む事業に使うことが条件。
  • 所有権移転外リースで取得したもの即時償却は使えない(税額控除は使える)。
注記・出典

中小企業庁 税制措置・金融支援活用の手引き(PDF) ↗ 国税庁 No.5434 ↗  国税庁 令和8年度 法人税関係法令の改正の概要(PDF) ↗。 認定を受けても、税の要件を満たさなければ適用は受けられません。取得の前に、計画の認定と税の要件の両方を確かめてください。

マイニングマシン収益の決まり方と、税制の対象外

暗号資産の採掘機を買い、採掘の報酬を得る事業です。短い耐用年数や即時償却を売り文句にした商品がありますが、 中小企業経営強化税制の手引きは「暗号資産マイニング業の用に供する資産」を対象外と明記しています。

  1. 収益は3つの変動で決まる

    暗号資産の価格、電気代、採掘の難しさ(ほかの採掘者との競争)。どれも自分では決められません。

  2. 機械はすぐに古くなる

    新しい機種が出ると、古い機種は採算が合わなくなります。出口で売れる額は小さくなりがちです。

  3. 設置場所

    海外の施設に置く商品もあります。国内で使うことが税制の条件なので、置き場所は特に確かめてください。

  4. 税の扱い

    国税庁は、マイニングで得た暗号資産の扱いと、採掘にかかった費用を経費にできることを示しています。所得の区分は状況で変わるので、税理士に確認してください。

注記・出典

中小企業庁 手引き(PDF) ↗ 国税庁 暗号資産に関する税務上の取扱い(FAQ) ↗

改正で塞がれてきた型1998年から2022年までの7つの改正
  1. 1998年4月〜建物は定額法だけに

    平成10年4月1日以後に取得した建物は、定率法が使えず定額法だけになりました。出典 ↗

  2. 2005年4月〜(法人)組合を通じた損失は出資額まで

    法人が組合を通じて受ける損失のうち、出資額を超える部分は経費になりません(同 第67条の12。現行法では匿名組合も対象)。e-Gov法令 ↗

  3. 2006年分〜(個人)組合を通じた不動産の損失は「なかったもの」に

    業務の重要な決定に関わらない個人の組合員は、民法組合などから生じた不動産所得の損失を、給与などと損益通算できなくなりました(租税特別措置法 第41条の4の2)。e-Gov法令 ↗

  4. 2012年4月〜定率法は「200%定率法」に

    平成24年4月1日以後に取得した資産の定率法は、定額法の償却率の2倍になりました。出典 ↗

  5. 2016年4月〜建物附属設備・構築物も定額法だけに

    平成28年4月1日以後の取得分から。出典 ↗

  6. 2021年分〜(個人)海外の中古建物の償却費は、損益通算に使えない

    簡便法などで短い耐用年数を使った国外中古建物について、不動産所得の損失のうち償却費に当たる部分は「生じなかったもの」とみなされます。出典 ↗

  7. 2022年4月〜貸付け用の少額資産は、一括経費化の特例から除外

    10万円未満・20万円未満の資産と中小企業の少額資産の特例から、貸付けの用に供したもの(主要な事業として行う場合を除く)が外れました。国税庁(PDF) ↗

中小企業の少額資産の特例は、現在は1点40万円未満(令和11年3月31日まで)です。上の除外は、この特例にも及びます。

このページの出典国税庁・e-Gov法令(2026年9月30日時点で確認)

税制は毎年改正されます。

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