- 01先に結論
- 02この記事で使った資料と、分からないこと
- 03資産の種類と論点で数える
- 04事業の用に供した時期:条文と通達
- 05事業供用で争われた7件
- 06即時償却の要件と、裁決で争われた点を並べる
- 07取引と事業の実態:条文の形式どおりに扱われなかった例
- 08時価・価額:代金の配分と、対価の水準
- 09少額資産の単位
- 10裁決の本文にある金額を読む
- 11仮装とされた例、されなかった例
- 12高額な中古車は「減価する資産」か
- 13否認されたら、何がかかるか(法人の計算の例)
- 14時期だけの否認でも、加算税と延滞税は残る
- 15自分で直した場合
- 16個人で損益通算が否認された場合
- 17更正される期間
- 18裁決から読める、確かめておく書類
- 19よくある質問
- 20この記事の数字は、どこから取ったか
01先に結論
国税不服審判所が公表している裁決のうち、減価償却や節税目的の取引に関わるものを当サイトが読み、25件を選んで整理しました。論点で分けると、事業の用に供した時期(7件)、取引や事業の実態(11件)、取得価額や対価の水準(5件)、少額資産の単位(2件)です。結論は、否認がそのまま維持された「棄却」が13件、一部が取り消されたものが9件、全部が取り消されたものが1件、要旨だけが公表されていて区分が分からないものが2件でした。
否認の理由を短くまとめると、次の3つです。
- 事業供用:償却できるのは、期末までに引渡しを受け、資産を本来の目的で使い始めたものだけ。納品書の日付や、電力会社との系統連系の前の発電設備は認められていない。
- 実態:買ってすぐ売主に貸し戻す取引、出資額の範囲でしかリスクを負わない組合、利益の出ない取組は、形式どおりの償却や所得区分が認められていない。
- 時価・価額:土地と建物の一括購入で建物に代金を寄せた内訳や、同族会社への相場を超えるリース料は、合理的な基準に置き換えられている。
否認されたときの負担も計算しました。この記事の例(法人税率23.2%・2024年3月期・2026年6月に更正)では、1,000万円の償却が否認されると、本税2,320,000円に過少申告加算税232,000円と延滞税61,000円が加わります(地方税は含まない)。
02この記事で使った資料と、分からないこと
使ったのは、国税不服審判所のサイトで公表されている裁決の全文と要旨です。審判所は、納税者が税務署の処分に不服を申し立てた事件を審理する機関で、公表されるのはその一部です。税務調査で指摘され、そのまま修正申告をした事例や、審査請求まで進まなかった事例は含まれません。この記事の件数は「どこが争いになったか」の例で、「調査でどこが指摘されやすいか」の統計ではありません。
25件のうち、全文が公表されているのは23件で、残りは要旨だけが公表されている古い事例です。裁決日の古いものは、その後の法令改正で前提が変わっている場合があります。各事例の「審判所の判断」は、全文の判断の部分を当サイトが言い換えたもので、原文の短い引用を添えています。正確な内容は出典のリンクから全文を確かめてください。
税目で分けると、法人税(地方法人税などを含む)が16件、所得税(復興特別所得税を含む)が9件です。
取得した価額が時価を上回るとして差額を寄附金などとした、減価償却資産の事例は、今回の検索では公表裁決から見つかりませんでした。「時価」の節は、土地建物の価額の配分と、同族会社への対価の事例で構成しています。
03資産の種類と論点で数える
25件を、資産の種類と論点で数えました。
| 資産の種類 | 事業供用 | 実態 | 時価・価額 | 少額の単位 | 計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 太陽光発電設備 | 2 | 1 | 0 | 0 | 3 |
| 機械・車両・その他の設備 | 5 | 4 | 0 | 2 | 11 |
| 船舶・航空機・客船 | 0 | 3 | 0 | 0 | 3 |
| 建物・土地建物・建物附属設備 | 0 | 3 | 3 | 0 | 6 |
| 医療機器の対価 | 0 | 0 | 2 | 0 | 2 |
裁決日で分けると、1990年代以前が6件、2000年代が6件、2010年代以降が13件です。一部でも取り消されたものは10件で、そのうち納税者の主張の中身が認められたものは6件でした(残りは計算の誤りの是正や加算税だけの取消しなど)。認められたのは、フェンス・除雪機・換気扇のように資産ごとに事実を分けて示せた部分や、耐用年数の区分・価額の按分のように合理的な根拠を出せた部分でした。
04事業の用に供した時期:条文と通達
法人税法で減価償却資産とされるのは、建物・機械・船舶・航空機などのうち、事業の用に供していないものや時の経過で価値の減らないものを除いたものです(法人税法施行令13条)。償却費を損金にできるのは、損金経理をした金額のうち償却限度額までです(法人税法31条1項)。
「事業の用に供した日」を一般的に定めた法人税基本通達の項目は見当たりません。関連する通達は次の2つです。
- 法人税基本通達7-1-3:稼働を休止している資産でも、休止期間中に必要な維持補修が行われ、いつでも稼働し得る状態にあるものは減価償却資産に当たる。
- 法人税基本通達7-1-4:建設中の資産は減価償却資産に当たらないが、建設仮勘定でも完成した部分が事業の用に供されていれば、その部分は減価償却資産に当たる。
中小企業経営強化税制の即時償却(租税特別措置法42条の12の4第1項)などは、その事業年度に「取得し」「事業の用に供した」ことを要件にしています。期末の直前に買う商品ほど、この日付が争点になります。
05事業供用で争われた7件
| 裁決日 | 資産・論点 | 税目 | 結論 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 平成18年5月22日 | 自動旋盤(特別償却) | 法人税 | 棄却 | 裁決事例集No.71・413頁 |
| 平成30年6月19日 | 太陽光発電設備(即時償却) | 法人税・地方法人税 | 一部取消し | 裁決事例集No.111 |
| 平成30年3月27日 | 太陽光発電設備 | 法人税・地方法人税 | 棄却 | 裁決事例集No.110 |
| 平成10年5月29日 | スキー場のリフトほか(中小企業者の特別償却) | 法人税 | 一部取消し | 裁決事例集No.55・370頁 |
| 平成10年12月17日 | 中空成型機など(事業基盤強化設備の税額控除) | 法人税 | 棄却 | 裁決事例集No.56・281頁 |
| 平成元年1月12日 | 機械及び装置(特別償却) | 法人税 | 区分の記載なし | 裁決事例集No.37・305頁(要旨のみ) |
| 昭和62年12月18日 | 特殊車両 | 法人税 | 区分の記載なし | 裁決事例集No.34・57頁(要旨のみ) |
平成18年5月22日裁決:自動旋盤(特別償却)
何をしたか:年末の日付の納品書・預り書を受け取り、期末に取得したとして普通償却と特別償却を計上。実際の出荷は翌期だった。
審判所の判断:「取得し」「有する」かは引渡しがあったかで判断するとし、顧客仕様の附属品取付けや検査を経て出荷される機械が期末までに引き渡されていないと認定。重加算税も維持された。(原文:「いずれも請求人に引き渡されていない。」)
結論:棄却 裁決事例集No.71・413頁
平成30年6月19日裁決:太陽光発電設備(即時償却)
何をしたか:期中に設備の引渡しを受け、取得価額の全額を特別償却。電力会社との系統連系は期末後だった。
審判所の判断:事業の用に供したかは、資産をその属性に従って本来の目的のために使用を開始したかで判定するとし、系統連系前の発電設備本体は当期に事業の用に供していないとした。稼働休止資産の通達(法基通7-1-3)は、一度事業の用に供した資産の休止の扱いで、当たらないとした。(原文:「その資産をその属性に従って本来の目的のために使用を開始したといえるか否かによって判定するのが相当である」)
納税者の主張が通った部分:発電設備を囲むフェンス・門扉等は別の減価償却資産で、引渡しの日から本来の目的で使われているとして、その償却は認められた。
結論:一部取消し 裁決事例集No.111
平成30年3月27日裁決:太陽光発電設備
何をしたか:事業の用に供する前の期に償却費を計上し、修正申告で加算。翌期(供用した期)に、前期の加算額を償却超過額の認容として損金にしようとした。
審判所の判断:事業年度終了の時に事業の用に供していない資産はその年度の減価償却資産に当たらず、前期の加算額は償却超過額でもないとした。供用した期に損金経理した額がないので、その期の償却も損金にならない。(原文:「事業年度終了の時において事業の用に供していない資産は、その事業年度における法人税法上の減価償却資産に該当しないこととなる。」)
結論:棄却 裁決事例集No.110
平成10年5月29日裁決:スキー場のリフトほか(中小企業者の特別償却)
何をしたか:対象外のリフト事業と、対象のロッヂ内事業を営む法人が、リフトやショベルローダー等を対象事業の用に供したとして特別償却。
審判所の判断:対象事業の用に供するとは、その事業を遂行するための方法や手段として使うことだとし、リフトはロッヂ内事業の運搬手段として使われているとは認めなかった。(原文:「リフトをロッヂ内事業を遂行するための運搬手段として使用しているとは認められない。」)
納税者の主張が通った部分:ロッヂの地域の圧雪・除雪に使われていたショベル等は認められた。
結論:一部取消し 裁決事例集No.55・370頁
平成10年12月17日裁決:中空成型機など(事業基盤強化設備の税額控除)
何をしたか:化粧品容器を製造する機械を、卸売業の用に供したとして税額控除。
審判所の判断:機械は専ら製造業の用に供されているとした。前回の調査で指摘されなかったことも、更正に影響しないとした。(原文:「本件機械装置は専ら製造業の用に供されていると認められる。」)
結論:棄却 裁決事例集No.56・281頁
平成元年1月12日裁決:機械及び装置(特別償却)
何をしたか:検査・性能試験で確認して引き渡す取決めで、保証性能の確認・引渡しは翌事業年度だった。
審判所の判断:その事業年度中に取得し事業の用に供することが要件で、取得の日は翌事業年度だとして、特別償却を認めなかった(要旨)。(原文:「本件装置の取得の日は、翌事業年度中の昭和60年7月12日となり」)
結論:区分の記載なし 裁決事例集No.37・305頁(要旨のみ)
昭和62年12月18日裁決:特殊車両
何をしたか:新車は登録後に改造架装に着手した日、中古車は修理を終えた日に事業の用に供したと主張。
審判所の判断:改造架装が終わって納車されたのも、保安基準適合証の交付も翌事業年度で、いずれも翌事業年度に事業の用に供したとした(要旨)。(原文:「いずれの車両も事業の用に供したのは翌事業年度であり」)
結論:区分の記載なし 裁決事例集No.34・57頁(要旨のみ)
共通しているのは、書類の日付より、物が届いて使い始めた事実が見られていることです。太陽光発電設備の事例では、発電設備本体は系統連系の前で否認された一方、フェンスは別の資産として引渡しの日から使われていると認められ、資産ごとに判断が分かれました。前倒しで計上した償却が否認されると、使い始めた期に改めて損金経理しない限り、その期の償却も取れない、という事例もあります。
06即時償却の要件と、裁決で争われた点を並べる
中小企業経営強化税制の即時償却(租税特別措置法42条の12の4第1項)は、2026年9月30日時点の条文で、中小企業者等が令和9年3月31日までに、経営力向上計画に記載された設備で「その製作若しくは建設の後事業の用に供されたことのないもの」を取得し、「国内にある当該中小企業者等の営む事業の用(指定事業の用に限る)」に供した場合に、その指定事業の用に供した日を含む事業年度に特別償却を認めるものです。条文の要件と、この記事の裁決で争われた点を並べました(裁決は当時の別の特別償却の規定に関するものを含みます)。
| 条文の要件 | 裁決で争われた点 | 該当する裁決 |
|---|---|---|
| 取得し、事業の用に供した | 引渡しがあったか、本来の目的で使い始めたか | 平成18年5月22日、平成30年6月19日、平成元年1月12日、昭和62年12月18日 |
| 指定事業の用に供した | 対象の事業を遂行する方法や手段として使っているか | 平成10年5月29日、平成10年12月17日 |
| 事業の用に供されたことのないもの(新品) | 販売者の展示・実演での使用 | 平成29年10月31日 |
| 供用年度に償却限度額まで損金経理 | 前倒しの計上は翌期に持ち越せない | 平成30年3月27日 |
即時償却は、要件を満たせば取得価額の全額を1年で損金にできる分、要件を外れたときの否認額も全額になります。期末近くに取得する設備、展示品・デモ機の購入、対象外の事業と共用する設備は、裁決で争われた点と重なります。
07取引と事業の実態:条文の形式どおりに扱われなかった例
ここでは、節税目的の取引の実質、所得の区分、新品かどうか、中古の年数、耐用年数の区分をまとめました。
| 裁決日 | 資産・論点 | 税目 | 結論 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 平成5年12月15日 | 電話回線アダプター1,506台(少額減価償却資産) | 法人税 | 棄却 | 裁決事例集No.46・156頁 |
| 平成16年3月30日 | 船舶(民法上の任意組合) | 所得税 | 一部取消し | 裁決事例集No.67・165頁 |
| 平成20年8月21日 | 航空機(匿名組合) | 所得税 | 棄却 | 裁決事例集No.76・110頁 |
| 平成25年3月27日 | クルーズ客船の居室の居住権 | 所得税 | 棄却 | 裁決事例集No.90 |
| 令和4年12月14日 | 太陽光発電設備(個人) | 所得税・復興特別所得税 | 一部取消し | 裁決事例集No.129 |
| 平成14年7月9日 | 建物附属設備(セール・アンド・リースバック) | 法人税 | 棄却 | 裁決事例集No.64・324頁 |
| 平成18年10月19日 | リース物件(リースバック) | 法人税 | 棄却 | 裁決事例集No.72・346頁 |
| 平成29年10月31日 | 展示・実演に使われた機械(中小企業者等の特別償却) | 法人税・地方法人税 | 棄却 | 裁決事例集No.109 |
| 平成25年12月17日 | 中古建物(耐用年数の見積り) | 法人税 | 棄却 | 裁決事例集No.93 |
| 平成24年3月1日 | 相続で取得した賃貸建物(簡便法) | 所得税 | 棄却 | 裁決事例集No.86 |
| 令和3年12月17日 | 全自動乾海苔製造装置など(耐用年数の区分) | 所得税・復興特別所得税 | 全部取消し | 裁決事例集No.125 |
平成5年12月15日裁決:電話回線アダプター1,506台(少額減価償却資産)
何をしたか:リース会社から割賦で購入し、同日そのリース会社に6年でリース。1台20万円未満として購入価額の全額を損金算入。
審判所の判断:物件は請求人を経由せず直接ユーザーに納品されていたと認定し、取得の実質がない請求人を介在させ、少額資産の一時損金算入で損失を先に出す経済的効果を目的とした取引で、経済的実質において賃貸借と認められないとした。(原文:「少額減価償却資産の取得価額の一時損金算入の規定を適用し損失の先出しという経済的効果を生じさせることを目的として」)
結論:棄却 裁決事例集No.46・156頁
平成16年3月30日裁決:船舶(民法上の任意組合)
何をしたか:会社員が任意組合に出資し、組合が海外のパートナーシップを通じて船舶を購入・用船。組合の損益(減価償却など)を不動産所得として給与と損益通算。
審判所の判断:借入分は実質的に請求人の投資ではなく、請求人は出資額の範囲でしかリスクを負わない構造で、船舶の賃貸借という法形式に伴う経済的成果が発生していないとして、各年の収入・必要経費は発生していないとした。(原文:「現実的に出資額の範囲内でしかリスクを負わない構造となっている」)
納税者の主張が通った部分:平成12年分は、審判所の再計算の結果が更正の額を下回ったため一部取消し。考え方は各年とも否認側。
結論:一部取消し 裁決事例集No.67・165頁
平成20年8月21日裁決:航空機(匿名組合)
何をしたか:匿名組合の出資者の地位を譲り受けた個人が、航空機リース事業の損失を不動産所得の損失として申告。
審判所の判断:損失の分担は計算上のもので、請求人が不動産等を利用させて生じる所得ではないから不動産所得に当たらず、雑所得だとした。(原文:「損失の分担は、計算上のものであり」)
結論:棄却 裁決事例集No.76・110頁
平成25年3月27日裁決:クルーズ客船の居室の居住権
何をしたか:居室の居住権を取得し、運営会社経由で他人に有償で使わせ、居住権の償却費や維持管理費による損失を他の所得と通算。
審判所の判断:所得は不動産所得にも事業所得にも当たらず雑所得で、雑所得の損失には損益通算の規定が適用されないとした。必要経費は、貸し出した日数の割合に限られた。(原文:「本件業務に係る所得は、不動産所得には該当しない。」)
結論:棄却 裁決事例集No.90
令和4年12月14日裁決:太陽光発電設備(個人)
何をしたか:太陽光発電の取組の損失(減価償却費を含む)を事業所得の損失として申告。
審判所の判断:客観的には業務が営まれていない年があり、利益も生じておらず営利性に乏しいとして、所得税法27条1項の「事業」に当たらないとした。売電収入は減価償却費にも満たない額と認定。(原文:「利益が生じていないから、営利性は乏しい。」)
納税者の主張が通った部分:令和元年分の過少申告加算税の賦課決定だけが一部取り消された。更正処分は各年とも維持。
結論:一部取消し 裁決事例集No.129
平成14年7月9日裁決:建物附属設備(セール・アンド・リースバック)
何をしたか:使用中の建物附属設備を購入し、同時に売主へ20年で賃貸。
審判所の判断:売買はなかったものとし、購入代金相当額の貸付け(金融取引)として計算し直した処分を維持した。(原文:「本件取引は金融取引に該当しないとする請求人の主張には理由がない。」)
結論:棄却 裁決事例集No.64・324頁
平成18年10月19日裁決:リース物件(リースバック)
何をしたか:リース業の法人が、他社がユーザーにリース中の物件を買い取り、直ちにその他社にリースバック。
審判所の判断:取引をしても事務の負担は軽減されず、物件は既に中古だったことなどから、実質的に金銭の貸借である一連の取引(法人税法施行令136条の3第2項)に当たるとした。(原文:「本件リースバック取引を行っても事務の負担は何ら軽減されることはなく」)
結論:棄却 裁決事例集No.72・346頁
平成29年10月31日裁決:展示・実演に使われた機械(中小企業者等の特別償却)
何をしたか:販売者の展示場で1年以上、展示と切断加工の実演に使われた機械を新品として取得し、特別償却。
審判所の判断:特別償却の対象は販売者等で使用されたことのない新品で、この機械は販売者で使用されていたとした。販売者が固定資産として扱ったかどうかは要件ではないとした。(原文:「販売者等が固定資産として取り扱ったか否かが不可欠の要件とは解されない。」)
結論:棄却 裁決事例集No.109
平成25年12月17日裁決:中古建物(耐用年数の見積り)
何をしたか:中古建物に法定の年数を使っていた法人が、途中の事業年度から見積法などの短い年数に変更。
審判所の判断:中古資産の見積法・簡便法は、事業の用に供した最初の事業年度に自らその適用を受ける必要があり、後から変更できないとした。(原文:「見積法等を用いて変更することはできない。」)
結論:棄却 裁決事例集No.93
平成24年3月1日裁決:相続で取得した賃貸建物(簡便法)
何をしたか:相続したマンション等に、中古資産の簡便法の年数を使って不動産所得の必要経費に算入。
審判所の判断:相続等では被相続人の取得価額を引き継ぐ規定の趣旨から、耐用年数も引き継ぐことが前提だとして、中古資産の年数は使えないとした。(原文:「耐用年数をもそれぞれ引き継ぐことを当然の前提として規定したものと解される」)
結論:棄却 裁決事例集No.86
令和3年12月17日裁決:全自動乾海苔製造装置など(耐用年数の区分)
何をしたか:税務署は、最終製品が乾海苔なので「食料品製造業用設備(10年)」だとして更正。
審判所の判断:区分は業種ではなく、資産の使用状況等から社会通念に照らして判定するとし、別表第二の「水産養殖業用設備(5年)」に当たるとした。(原文:「請求人の業種ではなく、本件償却資産の使用状況等から社会通念に照らし」)
納税者の主張が通った部分:平成28年分は全部取消し、平成29・30年分は一部取消し。納税者の主張どおり5年とされた。
結論:全部取消し 裁決事例集No.125
組合や匿名組合を通じた船舶・航空機の事例は、いまは法令で塞がれている形です(個人の組合の不動産所得の損失は租税特別措置法41条の4の2、法人の出資額を超える損失は同法67条の12)。裁決が示した考え方(出資額の範囲でしかリスクを負わない構造、損失の分担は計算上のもの)は、形を変えた商品を見るときにも使えます。
中古資産の年数は、耐用年数の適用等に関する取扱通達1-5-1が「その事業の用に供した事業年度においてすることができるのであるから当該事業年度においてその算定をしなかったときは、その後の事業年度においてはその算定をすることができない」としていて、平成25年12月17日の裁決もこれに沿っています。同通達1-5-2は、中古資産を事業に使うための資本的支出が再取得価額の50%を超えるときは法定の年数によるとしています。
耐用年数の区分の事例(令和3年12月17日裁決)は、納税者の主張が通った例です。区分は業種ではなく、その資産の使われ方で判定されました。
08時価・価額:代金の配分と、対価の水準
| 裁決日 | 資産・論点 | 税目 | 結論 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 令和4年9月9日 | 一括購入の土地建物(建物価額の配分) | 所得税・復興特別所得税 | 一部取消し | 裁決事例集No.128 |
| 令和5年6月21日 | 一括取得の土地建物(建物価額の算定方法) | 法人税・地方法人税・消費税等 | 一部取消し | 裁決事例集No.131 |
| 平成27年6月1日 | 競売で一括取得した土地建物 | 法人税(ほか消費税等) | 一部取消し | 裁決事例集No.99 |
| 平成6年12月22日 | 同族会社から借りた医療機器(リース料) | 所得税 | 棄却 | 裁決事例集No.48・119頁 |
| 平成14年12月20日 | 同族会社から借りた医療機器(賃借料) | 所得税 | 棄却 | 裁決事例集No.64・207頁 |
令和4年9月9日裁決:一括購入の土地建物(建物価額の配分)
何をしたか:賃貸用の土地建物を一括購入し、売買契約書の内訳で建物の価額を大きく設定して減価償却。
審判所の判断:購入の代価は合理的な基準で算定すべきとし、契約書の内訳は過剰に建物へ配分されたもので、固定資産税評価額の比で按分すべきとした。売主は総額が大切で建物価額はどうでもよかった旨を述べていた。(原文:「売却に当たっては売買代金の総額が大切であり、建物価額はどうでもよかった旨」)
納税者の主張が通った部分:仲介手数料等の計算の誤りだけが是正された。按分の方法は税務署どおり。
結論:一部取消し 裁決事例集No.128
令和5年6月21日裁決:一括取得の土地建物(建物価額の算定方法)
何をしたか:売買代金の総額から路線価を基にした土地の価額を差し引いて、建物の価額を算定(差引法)。
審判所の判断:路線価は地価公示価格の80%程度を目途に設定されているとして差引法を合理的でないとし、建物ごとに、鑑定の積算価格比か固定資産税評価額比で按分した。(原文:「本件差引法は、本件各建物の売買代金相当額の算定方法として合理的とは認められない。」)
納税者の主張が通った部分:建物2・3については、不動産鑑定の積算価格の比で按分する方法が合理的と認められた。
結論:一部取消し 裁決事例集No.131
平成27年6月1日裁決:競売で一括取得した土地建物
何をしたか:路線価等で按分し、予備的に不動産鑑定士の評価額の比で按分すべきと主張。
審判所の判断:提出された鑑定の建物評価額は新築請負代金の合計の約2倍で採用できず、同じ時期の時価を反映する固定資産税評価額の比で按分するのが相当とした。(原文:「土地及び家屋の固定資産税評価額はいずれも同一時期の時価を反映しているものと考えられ」)
納税者の主張が通った部分:表題上「棄却、一部取消し」。取得価額の区分は固定資産税評価額の比とされた。
結論:一部取消し 裁決事例集No.99
平成6年12月22日裁決:同族会社から借りた医療機器(リース料)
何をしたか:医院が同族会社に、取得価額の2倍を回収する水準のリース料を支払った。
審判所の判断:一般のリース会社のリース料の倍率で算定した適正額を上回る部分は、同族会社であるがゆえに可能な計算だとして、所得税法157条で必要経費を否認した処分を維持。租税回避の意図は要件ではないとした。(原文:「租税回避の意図若しくは所得税の負担を減少させる意図が存在することは必要ではないと解される。」)
結論:棄却 裁決事例集No.48・119頁
平成14年12月20日裁決:同族会社から借りた医療機器(賃借料)
何をしたか:歯科医院が同族会社に医療機器等の賃借料を支払った。
審判所の判断:賃貸借市場の一般の相場から見て適正かで判断するとし、回収期間を過ぎた後の賃貸料は10分の1とみて、過大な部分を否認した処分を維持(回収期間は審判所が認定)。(原文:「本件医療機器等の賃貸借市場一般の相場から見て適正な金額であると認められるか否かによって判断すべき」)
結論:棄却 裁決事例集No.64・207頁
土地は減価償却できないので、土地と建物を一括で買うと、建物の割合が大きいほど償却が増えます。3件とも、売買契約書の内訳や路線価からの差引きがそのままは認められず、固定資産税評価額の比や鑑定の積算価格の比で按分し直されました。一方で、令和5年6月21日の裁決では鑑定の積算価格比が認められ、平成27年6月1日の裁決では鑑定の評価額が退けられています。どの基準が合理的かは、事例ごとの根拠の確かさで分かれています。
同族会社への医療機器のリース料・賃借料の2件は、所得税法157条(同族会社等の行為又は計算の否認)で、相場を超える部分が必要経費から外されました。租税回避の意図は要件ではないと判断されています。
09少額資産の単位
| 裁決日 | 資産・論点 | 税目 | 結論 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 平成24年2月6日 | 工場移転の工事(少額資産の単位) | 法人税 | 一部取消し | 裁決事例集No.86 |
| 平成24年6月19日 | 少額減価償却資産の特例(青色取消し後) | 法人税 | 一部取消し | 裁決事例集No.87 |
平成24年2月6日裁決:工場移転の工事(少額資産の単位)
何をしたか:工場移転の工事費を全額損金に算入。細かく分ければ少額資産に当たるものがあると主張。
審判所の判断:少額かどうかは通常1単位として取引される単位ごとに判定する通達(法基通7-1-11)を相当とし、内部造作は建物本体と一体不可分として資産計上とした。(原文:「それぞれが通常1台で取引され、その取得価額が10万円未満であり」)
納税者の主張が通った部分:既存設備の移設費用と、1台10万円未満の換気扇・テレビアンテナは損金と認められた。
結論:一部取消し 裁決事例集No.86
平成24年6月19日裁決:少額減価償却資産の特例(青色取消し後)
何をしたか:青色申告の承認を取り消された法人が、中小企業者等の少額減価償却資産の特例で全額を損金算入していた。
審判所の判断:特例は青色申告書を提出する法人であることが要件の一つだとして全額の損金算入は認めず、審査請求で出された明細から償却限度額までは損金に算入した。(原文:「同規定は青色申告書を提出する法人であることが要件の一つとされており」)
納税者の主張が通った部分:特例は使えないが、償却限度額までの通常の償却は損金と認められた。
結論:一部取消し 裁決事例集No.87
法人税基本通達7-1-11は、取得価額が10万円未満又は20万円未満かどうかを「通常1単位として取引されるその単位」ごとに判定するとし、機械及び装置は1台又は1基ごと、工具器具備品は1個・1組・1そろいごとと例示しています。同7-1-11の2は、一時的に貸付けの用に供した事実だけでは、貸付けの用に供したものに当たるとはいえないとしています(10万円未満・20万円未満の特例から、主要な事業でない貸付けの用に供したものは除かれるため)。
平成5年12月15日の裁決(電話回線アダプター1,506台)は、1台ずつなら少額でも、取引の実質がないとして全体が否認された例です。単位の判定より前に、取引が実在するかが見られています。
10裁決の本文にある金額を読む
全文に金額が書かれている事例のうち2件について、本文の数字を並べ、差し引きを計算しました。
| 裁決 | 項目 | 金額 |
|---|---|---|
| 平成5年12月15日(アダプター1,506台) | 割賦での購入総額 | 121,437,816円 |
| 6年のリース料総額 | 112,805,424円 | |
| 購入総額−リース料総額 | 8,632,392円 | |
| 裁決で損金とされた請求人の支払額 | 8,632,392円 | |
| 1台あたりの購入価額(総額÷1,506) | 80,636円 | |
| 平成6年12月22日(医療機器のリース料・平成元年分) | 支払ったリース料/適正リース料/否認額 | 9,642,440円/5,775,848円/3,866,592円(支払額の40.1%) |
| 平成6年12月22日(医療機器のリース料・平成2年分) | 支払ったリース料/適正リース料/否認額 | 11,902,590円/7,107,413円/4,795,177円(支払額の40.3%) |
アダプターの事例では、購入総額とリース料総額の差がちょうど、損金と認められた請求人の支払額と一致しました。取引の全体は「なかったもの」とされ、実際に出ていったお金だけが損金として残った、という計算です。
医療機器の事例では、支払ったリース料から適正リース料を引いた額が、そのまま否認額になっています。否認されたのは支払額の40.1%〜40.3%で、相場を超えた部分だけが外されました。
11仮装とされた例、されなかった例
重加算税(35%)は、事実を隠蔽・仮装し、それに基づいて申告した場合に、過少申告加算税(10%・15%)に代えて課されます。期末の日付をめぐる事例で、判断が分かれた2件です。
平成18年5月22日裁決:仮装とされた(重加算税を維持)
自動旋盤の事例では、年末の日付の納品書・預り書をもとに期末取得として償却していましたが、販売会社の担当者の申述などから、事実と異なる立会議事録が作られていたと認定され、重加算税も維持されました(原文:「事実とは異なる立会議事録を作成し」)。
平成28年4月19日裁決:仮装とされなかった(重加算税の上乗せ分を取消し)
何をしたか:平成26年1月31日付で「工事完了は3月31日までとする。」と欄外に書いた請求書を自ら作成し、取得費を当期の課税仕入れに含めて申告。引渡しは翌課税期間の7月15日で、調査の指摘に従い修正申告。税務署は仮装として重加算税を課した。
審判所の判断:重加算税には、過少申告行為そのものとは別に隠ぺい・仮装と評価すべき行為が必要だとし、請求書は代金の請求書で引渡しの書面ではなく、欄外の記載は工事完了の予定日とみるほかないとして、引渡しの日を仮装したとは認めなかった。過少申告加算税は維持。(原文:「請求人が本件太陽光発電設備の引渡しを受けた日を仮装したとは到底認めることができない。」)
結論:一部取消し。過少申告加算税に相当する額を超える部分(重加算税の上乗せ分)が取り消された。 裁決事例集No.103
どちらも、期末に間に合わなかった資産を当期のものとして申告した点は同じで、本税と過少申告加算税はどちらでもかかっています。分かれたのは、申告とは別に、事実と異なる書類を作ったと言えるかどうかでした。否認されたときの加算税が10%で済むか35%になるかは、この点で決まります。
12高額な中古車は「減価する資産」か
中古の高級車は、短い耐用年数で償却できることを売り文句に勧められることがある資産です。逆向きの論点ですが、車両が減価償却資産(減価する資産)に当たるかを判断した裁決があります。
令和7年6月24日裁決:売却した車両
何をしたか:車両を売った譲渡所得の計算で、車両は美術品のように時の経過で価値が減らない資産だとして、取得費から減価の額を差し引かずに申告。
審判所の判断:減価しない資産かは、その資産の類型で社会通念上想定される本来的な目的・効用を前提に判断するとし、車両は所得税法38条2項の「使用又は期間の経過により減価する資産」に当たるとした。(原文:「本件車両は、所得税法第38条第2項に規定する「使用又は期間の経過により減価する資産」に該当する。」)
結論:棄却 裁決事例集No.139
この裁決は、減価しない資産に当たるかを、個々の資産の事情や持ち主の主観ではなく、その類型の本来の目的・効用(車なら移動の手段)から判断するとしています。償却で経費にした車を売れば、取得費は償却の累計だけ小さくなり、売った額との差が課税されます。値上がりを見込む車ほど、出口の税が大きくなる計算です。
13否認されたら、何がかかるか(法人の計算の例)
償却が否認されると、増えた本税のほかに、過少申告加算税と延滞税がかかります。条文の要点は次のとおりです。
- 過少申告加算税:修正申告・更正で納める税額の10%。その税額が期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分には、さらに5%(国税通則法65条1項・2項)。
- 重加算税:事実を隠蔽・仮装していた場合は、過少申告加算税に代えて35%(同68条1項)。
- 延滞税:法定納期限の翌日から納付の日まで、原則年14.6%(納期限の翌日から2月を経過する日までは年7.3%)(同60条2項)。ただし特例で、年7.3%の部分は「延滞税特例基準割合+1%」、年14.6%の部分は「延滞税特例基準割合+7.3%」に下がり(租税特別措置法94条1項)、国税庁によると令和4年〜7年は年2.4%・8.7%、令和8年は年2.8%・9.1%です。
- 期限内申告をしていて、法定申告期限から1年を経過する日後に更正された場合は、その1年を経過する日の翌日から更正通知書を発した日までは延滞税の計算期間に入りません(同61条1項1号。偽りその他不正の行為による場合を除く)。
2024年3月期(法定申告期限は2024年5月31日。法人税法74条1項)の償却が否認され、2026年6月15日に更正通知書が発せられた場合を計算しました。法人税率は計算の例として23.2%とし、期限内申告税額を3,000,000円と置いています。納期限は7月15日(更正通知書を発した日の翌日から1月。同35条2項2号)です。
| 否認された償却 | 増える法人税 | 過少申告加算税 | 重加算税(仮装の場合) | 延滞税(納期限に納付) | 延滞税(11月30日に納付) | 合計(過少申告・納期限に納付) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1,000,000円 | 232,000円 | 23,000円 | 80,500円 | 6,000円 | 11,500円 | 261,000円 |
| 3,000,000円 | 696,000円 | 69,000円 | 241,400円 | 18,100円 | 34,500円 | 783,100円 |
| 5,000,000円 | 1,160,000円 | 116,000円 | 406,000円 | 30,500円 | 58,000円 | 1,306,500円 |
| 10,000,000円 | 2,320,000円 | 232,000円 | 812,000円 | 61,000円 | 116,000円 | 2,613,000円 |
| 20,000,000円 | 4,640,000円 | 546,000円 | 1,624,000円 | 122,000円 | 232,000円 | 5,308,000円 |
| 30,000,000円 | 6,960,000円 | 894,000円 | 2,436,000円 | 183,000円 | 348,000円 | 8,037,000円 |
| 50,000,000円 | 11,600,000円 | 1,590,000円 | 4,059,900円 | 305,000円 | 580,000円 | 13,495,000円 |
1,000万円の例では、延滞税の計算期間は、2024年6月1日から1年間の365日と、更正通知の翌日から納付までの30日で、その間の380日は除かれます。納期限から2か月を過ぎる11月30日に納めると、76日分に年9.1%がかかり、延滞税は116,000円になります。
更正の時期によって、延滞税の計算期間がどう変わるかも計算しました(1,000万円の否認、納期限に納付)。法定申告期限から1年を経過する日(2025年5月31日)より後の更正では、その翌日から更正通知の日までが除かれるので、調査が長引いても延滞税は増え続けません。
| 更正通知書を発した日 | 納付の日(納期限) | 延滞税の計算期間 | 除かれた日数 | 延滞税 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年3月31日 | 2025年4月30日 | 334日 | 0日 | 50,900円 |
| 2025年5月30日 | 2025年6月30日 | 395日 | 0日 | 60,200円 |
| 2025年11月26日 | 2025年12月26日 | 395日 | 179日 | 60,200円 |
| 2026年6月15日 | 2026年7月15日 | 395日 | 380日 | 61,000円 |
| 2026年11月16日 | 2026年12月16日 | 395日 | 534日 | 61,000円 |
地方法人税、法人住民税、法人事業税も連動して増えますが、税率と延滞金の計算を確かめていないので、この表には入れていません。
14時期だけの否認でも、加算税と延滞税は残る
事業供用の時期がずれただけの否認では、否認された償却は翌期以降に損金になります(ただし、平成30年3月27日の裁決のとおり、その期に損金経理をしていることが前提)。本税は時期がずれるだけですが、加算税と延滞税は戻りません。
| 否認された償却 | 当期に増える法人税 | 翌期以降に減る法人税 | 過少申告加算税 | 延滞税(納期限に納付) | 戻らない負担 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1,000,000円 | 232,000円 | 232,000円 | 23,000円 | 6,000円 | 29,000円 |
| 5,000,000円 | 1,160,000円 | 1,160,000円 | 116,000円 | 30,500円 | 146,500円 |
| 10,000,000円 | 2,320,000円 | 2,320,000円 | 232,000円 | 61,000円 | 293,000円 |
| 30,000,000円 | 6,960,000円 | 6,960,000円 | 894,000円 | 183,000円 | 1,077,000円 |
| 50,000,000円 | 11,600,000円 | 11,600,000円 | 1,590,000円 | 305,000円 | 1,895,000円 |
「どうせ翌期に経費になる」という判断で期末ぎりぎりの取得を計上すると、この差額が確定した負担として残ります。
15自分で直した場合
過少申告加算税は、修正申告が調査による更正を予知してされたものでなければ5%で(国税通則法65条1項かっこ書き)、さらに調査の事前通知(調査通知)より前に行われたものなら課されません(同条6項)。
| 否認される償却 | 増える法人税 | 調査通知の前に修正 | 通知後・更正の予知の前に修正 | 調査による更正 | 仮装がある場合(重加算税) |
|---|---|---|---|---|---|
| 5,000,000円 | 1,160,000円 | 0円 | 58,000円 | 116,000円 | 406,000円 |
| 10,000,000円 | 2,320,000円 | 0円 | 116,000円 | 232,000円 | 812,000円 |
| 30,000,000円 | 6,960,000円 | 0円 | 348,000円 | 894,000円 | 2,436,000円 |
間違いに気づいた時点で直すかどうかで、加算税は0円から35%まで変わります。延滞税は、どの場合も本税に対してかかります。
16個人で損益通算が否認された場合
組合や副業の損失を給与などと損益通算していて、不動産所得や事業所得に当たらないとされた場合(平成16年・平成20年・平成25年・令和4年の各裁決)の例です。所得税は課税総所得金額(控除後)に所得税法89条の税率を掛け、復興特別所得税(所得税額の2.1%)を足しました。住民税は損失の額の10%として別に示しています(住民税の延滞金は入れていません)。
| 否認後の課税総所得金額(控除後) | 否認された損失 | 増える所得税・復興特別所得税 | 過少申告加算税 | 延滞税 | 増える住民税(10%) | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 800万円 | 2,000,000円 | 440,562円 | 44,000円 | 11,500円 | 200,000円 | 696,062円 |
| 5,000,000円 | 1,022,532円 | 128,000円 | 26,800円 | 500,000円 | 1,677,332円 | |
| 1,200万円 | 2,000,000円 | 673,861円 | 67,000円 | 17,600円 | 200,000円 | 958,461円 |
| 5,000,000円 | 1,480,451円 | 172,000円 | 38,900円 | 500,000円 | 2,191,351円 | |
| 2,000万円 | 2,000,000円 | 816,799円 | 81,000円 | 21,300円 | 200,000円 | 1,119,099円 |
| 5,000,000円 | 1,827,590円 | 182,000円 | 47,800円 | 500,000円 | 2,557,390円 |
延滞税は、2023年分(法定納期限は第三期の末日の2024年3月15日。所得税法128条・120条)を2026年6月15日に更正され、納期限の7月15日に納めた場合で、法人の例と同じく1年を超える期間を除いて計算しました。損失の額が同じでも、所得の区分の境目をまたぐかどうかで、増える所得税は変わります。
17更正される期間
税務署が更正できるのは、原則として法定申告期限から5年です(国税通則法70条1項1号)。法人税の純損失等の金額に係る更正は10年(同条2項)、偽りその他不正の行為で税を免れた場合は7年です(同条5項1号)。
| 場合 | 期間 | 2024年3月期の分を更正できるのは(まで) | 条文 |
|---|---|---|---|
| 原則 | 5年 | 2029年5月31日 | 国税通則法70条1項1号 |
| 法人税の純損失等の金額に係る更正 | 10年 | 2034年5月31日 | 同条2項 |
| 偽りその他不正の行為で税を免れた場合 | 7年 | 2031年5月31日 | 同条5項1号 |
減価償却は何年にもわたって続くので、初年度の取得の事実や価額の配分が、5年を超えて後の年の償却額に影響し続けます。取得した年の書類(引渡しの記録、使用開始の記録、価額の根拠)は、償却が続く限り手元に置いてください。
18裁決から読める、確かめておく書類
| 論点 | 争いになった事実 | 手元に置く書類の例 |
|---|---|---|
| 事業供用 | 引渡しの日・使い始めた日(納品書だけでは足りない) | 出荷・搬入・検収の記録、試運転や系統連系の日付の分かる書類 |
| 事業供用 | 対象の事業に使っているか | 使用場所・使用状況の記録 |
| 実態 | 売主への貸し戻し、組合のリスクの範囲 | 物の所在と管理の記録、借入の責任の範囲が分かる契約書 |
| 実態 | 新品か(展示・実演で使われていないか) | 製造日・販売者での使用の有無が分かる書類 |
| 中古の年数 | 最初の事業年度に見積法・簡便法を使ったか | 取得年度の償却の計算書 |
| 時価・価額 | 土地と建物の価額の配分 | 固定資産税評価額、鑑定評価書、建築費の資料 |
| 時価・価額 | 関係者への対価の水準 | 一般の業者の料金・倍率など、相場の資料 |
| 少額資産 | 通常1単位として取引される単位 | 品目ごとの見積書・請求書 |
減価償却の節税商品そのものの損得は繰り延べ計算機で、飛行機・船の違いは航空機リースと船舶リースの比較で扱っています。
19よくある質問
期末に納品書をもらえば、その期に償却できますか。
平成18年5月22日の裁決では、年末の日付の納品書・預り書があっても、実際の出荷が翌期だった旋盤について、期末までに引き渡されていないとして償却が否認されました。
太陽光発電設備は、引渡しを受けた日に事業の用に供したことになりますか。
平成30年6月19日の裁決では、系統連系の前の発電設備本体は事業の用に供していないとされました。フェンス・門扉等は別の資産として、引渡しの日から使われていると認められました。
中古資産の短い年数は、後の年から使い始められますか。
使えません。耐用年数通達1-5-1は、事業の用に供した事業年度に算定しなかったときは、その後の事業年度では算定できないとしていて、平成25年12月17日の裁決も同じ判断です。
土地と建物の価額の配分は、契約書どおりでよいですか。
令和4年9月9日の裁決では、契約書の内訳が過剰に建物へ配分されたものとされ、固定資産税評価額の比で按分し直されました。合理的な基準かどうかが見られます。
展示品やデモ機を安く買った場合、即時償却は使えますか。
平成29年10月31日の裁決では、販売者の展示場で1年以上展示・実演に使われた機械は新品に当たらないとして、特別償却が否認されました。販売者が固定資産として扱っていたかどうかは要件ではないとされています。
相続した賃貸建物に、中古の短い耐用年数を使えますか。
平成24年3月1日の裁決では、相続では耐用年数も引き継ぐことが前提だとして、中古資産の簡便法は使えないとされました。
税務署は何年前までさかのぼれますか。
更正は原則として法定申告期限から5年、偽りその他不正の行為がある場合は7年、法人税の純損失等の金額に係る更正は10年です(国税通則法70条)。
審査請求で争えば、否認は取り消されますか。
この記事の25件では、否認がそのまま維持された棄却が13件で、納税者の主張の中身が認められたものは6件でした。公表された裁決の例で、全体の統計ではありません。
調査が長引くと、延滞税は増え続けますか。
期限内申告をしていれば、法定申告期限から1年を経過する日の翌日から更正通知書を発した日までは、延滞税の計算期間に入りません(国税通則法61条1項1号)。偽りその他不正の行為がある場合を除きます。
個人で太陽光発電設備を持つと、事業所得の赤字にできますか。
令和4年12月14日の裁決では、客観的に業務が営まれていない年があり、利益も生じていないとして、所得税法27条1項の「事業」に当たらないとされました。売電収入は減価償却費にも満たない額と認定されています。
期末に取得した設備について、何を残しておけばよいですか。
裁決で争われたのは引渡しと使用開始の事実です。出荷・搬入・検収の記録、試運転や系統連系の日付の分かる書類を、償却が続く限り保存してください。
書類の日付を期末に合わせると、どうなりますか。
平成18年5月22日の裁決では、事実と異なる書類が作られていたとして重加算税(35%)も維持されました。平成28年4月19日の裁決では、請求書の記載は工事完了の予定日とみるほかないとして仮装とはされず、重加算税の上乗せ分が取り消されました。
延滞税は何%ですか。
国税庁によると、令和8年は納期限の翌日から2月を経過する日までが年2.8%、その後が年9.1%です(令和4年〜7年は年2.4%・8.7%)。
間違いに自分で気づいたら、加算税はかかりますか。
調査通知の前に修正申告をすれば過少申告加算税は課されず、通知の後でも更正を予知する前なら5%です(国税通則法65条1項・6項)。
20この記事の数字は、どこから取ったか
法令は e-Gov 法令検索の現行の条文で、国税庁の資料は公表されているページで、2026年9月30日に確かめました。税制は毎年改正されます。
- 国税不服審判所 公表裁決事例(全文・要旨):本文の25件と参考の2件(各事例の出典リンク)。判断の部分を言い換え、原文の短い引用を添えた
- 国税通則法(e-Gov):35条2項2号(更正の納期限)、60条2項(延滞税)、61条1項1号(1年を超える期間の除外)、65条1項・2項・6項(過少申告加算税)、68条1項(重加算税)、70条1項・2項・5項(更正の期間)、118条3項・119条4項(端数計算)
- 租税特別措置法(e-Gov):94条1項(延滞税の割合の特例)、42条の12の4第1項(中小企業者等の特別償却の要件)、41条の4の2、67条の12
- 法人税法(e-Gov):31条1項(損金経理額のうち償却限度額まで)、74条1項(申告期限)
- 法人税法施行令(e-Gov):13条(事業の用に供していないものを除く)
- 所得税法(e-Gov):89条(税率)、120条・128条(確定申告と第三期の納付)
- 国税庁 No.9205 延滞税について:令和4〜7年 年2.4%・8.7%、令和8年 年2.8%・9.1%、計算期間の特例
- 国税庁 法人税基本通達 第7章第1節:7-1-3(稼働休止資産)、7-1-4(建設中の資産)
- 国税庁 法人税基本通達 7-1-11・7-1-11の2:少額資産の判定の単位、一時的な貸付け
- 国税庁 耐用年数の適用等に関する取扱通達 1-5-1・1-5-2:中古資産の年数の算定時期、資本的支出が50%超の場合
法人税率23.2%・期限内申告税額・否認の額・日付は計算の例です。加算税・延滞税は、国税通則法の端数計算(計算の基礎は1万円未満切り捨て、確定金額は100円未満切り捨て)を当てて、日数を365で割って計算しました。
表の数字は、この記事の中で条文の式どおりに計算した「計算の例」で、実際の商品の条件ではありません(繰り延べ計算機の式を使った表は、/depreciation/ の計算機と同じ式です)。この記事は特定の商品の勧誘ではなく、個別の税務判断は税理士に確認してください。

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