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現物不動産投資と比べたときの損益分岐

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01現物不動産投資と、何が違うのか

1棟のアパートや区分マンションを買う「現物不動産投資」と、クラウドファンディングを並べます。同じ不動産でも、投資として別物です。

現物不動産投資不動産クラウドファンディング
必要な資金頭金+諸費用(物件価格の1〜3割)1万円から
借入使える(レバレッジがかかる)使えない
所有権自分のもの出資持分(匿名組合型)
管理自分(または管理会社に委託)事業者
空室のリスク自分が負う案件のリスクとして分配に反映
修繕自分が負担事業者
所得区分不動産所得雑所得(匿名組合型)
損益通算できるできない(匿名組合型)
減価償却できるできない(匿名組合型)
出口自分で売る運用期間の満了
手間大きい小さい
失敗したとき借入が残る出資額まで

3行目と12行目が本質的な違いです。現物は借入が使えるぶん、成功したときの利益も、失敗したときの損も大きくなります。

02損益分岐を、金額で計算する

3,000万円の区分マンションを頭金300万円・借入2,700万円で買った場合と、300万円を不動産クラウドファンディングに出した場合を比べます。前提を置いた概算です。

項目現物(3,000万円の区分)不動産CF(300万円)
投じる自己資金300万円+諸費用200万円=500万円300万円
借入2,700万円(金利2%・35年)なし
年間の家賃収入144万円(月12万円)—
年間の返済▲107万円—
管理費・修繕積立金▲24万円—
固定資産税▲10万円—
管理委託料▲7万円—
空室・修繕の引当(年平均)▲14万円—
年間の手残り(税引前)▲18万円—
想定利回り5%の分配—15万円
税(課税所得400万円)減価償却で赤字なら還付の可能性▲約4.6万円
年間の手取り帳簿上の赤字を給与と通算して還付約10.4万円

数字は説明のための例で、物件・金利・空室率によって大きく変わります。

この例では、現物はキャッシュフローがマイナスです。それでも成り立つのは、ローンの元本が減っていくことと、減価償却で帳簿上の赤字を作って給与所得と損益通算することによります。

03現物が成り立つ条件と、崩れる条件

現物不動産投資は、前提が崩れると一気に苦しくなります。条件を並べます。

前提成り立つ場合崩れる場合
入居者がいる家賃が入る空室でも返済は続く
家賃が下がらない収支が維持される築年数とともに下がる
金利が上がらない返済額が一定変動金利なら返済が増える
大規模修繕の費用が想定内積立で賄える一時金の負担が出る
売却時に価格が維持される残債を返して手元に残る残債を下回れば持ち出し
損益通算が使える税で還付される減価償却が終われば使えなくなる
管理会社が機能する手間がかからない自分で対応することになる

6行目が見落とされがちです。減価償却は永久には続きません。建物の耐用年数が過ぎれば計上できなくなり、その時点で帳簿上の赤字が消えます。損益通算による還付もなくなります。

そして5行目。売却価格が残債を下回れば、差額を現金で用意しないと売れません。これが現物不動産投資でいちばん怖い場面です。クラウドファンディングにはこの形の損失はありません(出資額が上限)。

04どちらを選ぶかの判断

目的と状況で整理します。

状況向いている理由
自己資金が数百万円以下クラウドファンディング現物は頭金と諸費用で数百万円が要る
借入ができない(属性、年齢)クラウドファンディング現物はローンが前提
手間をかけたくないクラウドファンディング現物は管理と対応が必要
損益通算で節税したい現物(または任意組合型)匿名組合型では損益通算できない
レバレッジをかけたい現物クラウドファンディングは借入不可
物件を自分でコントロールしたい現物所有権がある
まず試してみたいクラウドファンディング1万円から。失敗しても出資額まで
相続対策を考えている現物または任意組合型不動産としての評価、特例の適用

7行目が、クラウドファンディングのいちばん現実的な使い道です。不動産投資という領域を、小さな金額で経験してみる。募集ページを読み、物件の情報を見て、運用の報告を受ける。この経験は、将来現物を検討するときにも役に立ちます。

05両方を組み合わせる場合

現物を持っている人がクラウドファンディングを使う場面もあります。

場面使い方注意
現物の頭金を貯めている間待機資金を短期の案件で運用する使う時期が決まっているなら、運用期間に注意
現物を売った資金の置き場所次の物件を探す間の運用同上
現物とは違う地域に分散したい別の地域の案件を選ぶ案件名に地域が出ているかを確認
現物とは違う用途に分散したいホテル、物流、保育など用途ごとのリスクを理解する
現物の管理に疲れた現物を売って、クラウドファンディングに移す利回りは下がる。レバレッジがなくなる

1行目と2行目は実務的です。物件を買うまでの待機資金を数か月の案件で運用する。ただし運用期間中は引き出せないので、物件が決まったときに資金が拘束されていると困ります。

3行目と4行目は分散の話です。現物を1件持っている人は、その地域・その用途に集中している状態です。クラウドファンディングで違う地域・違う用途の案件を持てば、不動産という資産クラスの中での分散になります。

06よくある質問

登録や許可があれば安全ですか。

違います。登録・許可は最低限の体制と財産的基礎を確かめたもので、集めた資金が正しく使われることの保証ではありません。過去に事故を起こした事業者も、全社が登録業者でした。

登録番号はどこで確かめられますか。

金融商品取引業者は金融庁の「金融商品取引業者登録一覧」、不動産特定共同事業者は国土交通省の一覧で照合できます。どちらも無料で公開されています。

不動産型と融資型で、監督する役所は違いますか。

違います。不動産特定共同事業は国土交通省と都道府県、金融商品取引業と貸金業は金融庁(財務局)です。

元本を保証する商品はありますか。

ありません。出資を集めて元本を保証することは出資法で禁じられています。「元本保証」と書いてある業者には関わらないでください。

07この記事の数字は、どこから取ったか

会社名を挙げて処分や事故を書くにあたっては、照合を法人番号の完全一致に限りました。社名の部分一致で突き合わせると、似た社名の別会社の記録を拾ってしまいます。当サイトが実際に試したところ、82件が一致したように見えてそのほとんどが別会社でした。

できていないことも書きます。不動産特定共同事業者への監督処分は国土交通省・都道府県の所管で、この事例集には含まれていません。また償還後の実績は、事業型を除いてどの事業者も公表していないため、不動産型・融資型については「戻らなかった件数」を外から数えられません。

数字はいずれも元本を保証するものではなく、この記事は特定の商品の勧誘ではありません。

自分の数字で確かめる:値下がりしたら、いくら戻る?

はじめての人へ

不動産型50社が公表している劣後割合(幅があるものは下限)の中央値は13%、10%以下は24社です。 単純化した計算です:物件の値段に対する割合とし、銀行からの借入・費用・分配の未払いは含みません。借入がある案件は、もっと早く元本が削られます。

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