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有事に米国債はどう動いたか|コロナで10年債1.56→0.54%

読む目安:「先に結論」だけなら1分/全部で約40分(22千字)

データの時点2026年10月16日まで米国財務省の米国債の利回り(9,204営業日)と、FRBのドル円・毎週月曜に自動で更新

−1.02%コロナの株安で10年債の利回りが

米国株が当時の最高値をつけた2020年2月19日に1.56%だった10年債の利回りは、2020年3月9日に0.54%まで下がりました。金融市場が大きく揺れた14の出来事のうち、20営業日以内に基準日より利回りが下がった日があったのは14件です。ただし20営業日後も下がったままだったのは9件でした。

BNP 0.36%0.36%BNP急落 0.40%0.40%急落LTCM 0.57%0.57%LTCMSVB 0.63%0.63%SVBロシア 0.64%0.64%ロシアコロナ 1.02%1.02%コロナ
基準日から20営業日以内に、10年債の利回りが最も下がった幅(大きい6つ)

01先に結論

「有事には米国債が買われる」とよく言われます。この記事では、金融市場が大きく揺れた14の出来事について、その直前の営業日を基準日にして、米国債の利回りがその後どう動いたかを米国財務省の日次の公表値で数えました。

これは過去の記録です。次に何かが起きたときに同じ動きをするかは分かりません。

02「有事に米国債が買われる」とは

  1. 不安が広がる株や会社の借金など、値下がりや返らないおそれのある資産が売られる
  2. 米国債にお金が移る国が約束どおりに払うと考えられている米国債や、すぐに現金にできる短期国債が買われる
  3. 価格が上がる買いたい人が増えて、すでにある米国債の値段が上がる
  4. 利回りが下がる値段が上がると、そこから買う人が受け取る利回りは下がる

市場が不安になると、投資家は値下がりしやすい資産を売り、安全と考えられている資産に移ります。これを「質への逃避(フライト・トゥ・クオリティ)」と呼びます。米国債はその代表とされてきました。発行額が大きく、毎日たくさん売り買いされていて、いつでも現金に替えやすいこと、そして米国政府が利払いを止めたことがないことが理由として挙げられます。

米国債の値段と利回りは反対に動きます。新しく買う人が増えて値段が上がると、満期に受け取る額面100ドルと利子は変わらないので、その値段で買った人の利回りは下がります。この記事の表で「利回りが下がった」と書いているところは、「すでに持っていた人の米国債の値段が上がった」と読み替えられます。値下がりする理由の側は米国債はなぜ下がるかで計算しています。

もうひとつの道があります。景気が悪くなると見込まれると、米国の中央銀行(FRB)が政策金利を下げると予想され、それに近い短い年限の利回りが先に下がります。「安全だから買われる」と「金利が下がりそうだから買われる」は同時に起きることが多く、データの上では分けられません。この記事では、両方を合わせた結果を数えています。

03取り上げた出来事と、基準にした日

選んだのは、金融市場が大きく揺れた出来事のうち、起きた日がはっきりしている14件です。基準日は、出来事の日の前の営業日(その日の終わりの利回りが、出来事の前の最後の値になる日)にしました。

出来事日付何が起きたか基準日基準日の10年債
アジア通貨危機の株安1997.10.27香港株の急落が広がり、米国株も大きく下げて、ニューヨーク証券取引所が取引を途中で止めた1997.10.246.01%
ロシア危機1998.08.17ロシアが通貨ルーブルの切り下げと、対外債務の支払いの一時停止を発表した1998.08.145.40%
LTCMの救済1998.09.23米国のヘッジファンドLTCMに、ニューヨーク連銀の呼びかけで金融機関が資金を出すことが決まった1998.09.224.73%
同時多発テロ2001.09.11米国で同時多発テロが起きた2001.09.104.84%
BNPパリバ・ショック2007.08.09フランスの銀行BNPパリバが、傘下のファンドの解約を止めると発表した2007.08.084.84%
ベア・スターンズの救済2008.03.14米国の投資銀行ベア・スターンズに、ニューヨーク連銀がJPモルガン・チェースを通して緊急の資金を出すと発表した(16日にJPモルガンが買収で合意)2008.03.133.56%
リーマン・ブラザーズの破綻2008.09.15米国の投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻した2008.09.123.74%
フラッシュ・クラッシュ2010.05.06米国株が取引時間中に数分で急落し、すぐに戻した2010.05.053.58%
中国発の世界的な株安2015.08.248月11日に中国が人民元の基準値を引き下げた後、世界で株安が続き、24日は米国株が取引の始まりに大きく下げた2015.08.212.05%
米国株の急落(2018年2月)2018.02.05ダウ平均株価の1日の下げ幅が、当時として最大になった2018.02.022.84%
新型コロナの株安2020.02.19米国株(S&P500)が当時の最高値をつけた日。この後、新型コロナの感染拡大で世界の株が急落した2020.02.19※1.56%
シリコンバレー銀行の破綻2023.03.10米国のシリコンバレー銀行が経営破綻した(州の当局が閉鎖)2023.03.093.93%
日本株の急落(2024年8月)2024.08.05日経平均株価の1日の下げ幅が過去最大になった2024.08.023.80%
米国の相互関税の発表2025.04.02米国が各国からの輸入品に新しい関税をかけると、米国の取引時間の終わった後に発表した2025.04.02※4.20%
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※の2件は、出来事の日そのものを基準日にしています。新型コロナは「この日に起きた」という一日が無いので、米国株が当時の最高値をつけた日を基準にしました。相互関税は、米国の取引時間が終わった後の発表なので、その日の利回りが発表前の最後の値です。

戦争・テロ・震災などの出来事で金の値段がどう動いたかは金は有事に上がったかで数えています。重なるのは同時多発テロ・リーマン破綻・新型コロナの3つで、この記事はそれ以外に、銀行やファンドの破綻、株の急落など、お金の流れが直接揺れた出来事を多く入れました。米国債そのものの信用が問われた格下げ・債務上限の局面は米国債の信用はどこまで高いかで扱っているので、ここには入れていません。

同時多発テロの日(2001年9月11日)と翌12日は、米国財務省の利回りの公表がありません。この記事の日数は営業日(公表のある日)で数えているので、テロの「1日後」は9月13日の値です。

0410年債の利回りは、どれだけ下がったか

基準日の10年債の利回りから、1日後・5日後・20日後(およそ1か月)の変化と、20営業日以内に最も低かった日の値です。マイナスは利回りが下がった(値段が上がった)ことを表します。

出来事基準日1日後5日後20日後20日以内の最も低い日最も低い日までの幅
アジア通貨危機の株安6.01%▲0.10%▲0.17%▲0.15%5.82%(1997.11.19)▲0.19%
ロシア危機5.40%±0.00%▲0.08%▲0.53%4.76%(1998.09.10)▲0.64%
LTCMの救済4.73%▲0.04%▲0.14%▲0.14%4.16%(1998.10.05)▲0.57%
同時多発テロ4.84%▲0.20%▲0.15%▲0.15%4.50%(2001.10.03)▲0.34%
BNPパリバ・ショック4.84%▲0.05%▲0.15%▲0.33%4.48%(2007.09.05)▲0.36%
ベア・スターンズの救済3.56%▲0.12%▲0.22%▲0.07%3.34%(2008.03.17)▲0.22%
リーマン・ブラザーズの破綻3.74%▲0.27%+0.04%+0.15%3.41%(2008.09.17)▲0.33%
フラッシュ・クラッシュ3.58%▲0.17%▲0.02%▲0.19%3.18%(2010.05.25)▲0.40%
中国発の世界的な株安2.05%▲0.04%+0.14%+0.15%2.01%(2015.08.24)▲0.04%
米国株の急落(2018年2月)2.84%▲0.07%▲0.01%+0.04%2.77%(2018.02.05)▲0.07%
新型コロナの株安1.56%▲0.04%▲0.23%▲0.38%0.54%(2020.03.09)▲1.02%
シリコンバレー銀行の破綻3.93%▲0.23%▲0.37%▲0.63%3.30%(2023.04.05)▲0.63%
日本株の急落(2024年8月)3.80%▲0.02%+0.14%+0.11%3.78%(2024.08.05)▲0.02%
米国の相互関税の発表4.20%▲0.14%+0.14%+0.05%4.01%(2025.04.04)▲0.19%
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どの出来事でも、20営業日以内に一度は基準日より低い日がありました。ただ、その幅は0.02%から1.02%まで大きく違います。20営業日後に下がったままだったのは9件で、残りの5件は基準日の水準を上回っていました。

最も大きく下がった新型コロナの株安では、最も低い日(2020年3月9日)までに1.02%下がりました。ロシア危機は1998年9月10日までに0.64%、シリコンバレー銀行の破綻は2023年4月5日までに0.63%です。コロナ(2020年3月)とロシア危機・LTCM(1998年秋)の後には、FRBが政策金利を引き下げました。一方、シリコンバレー銀行の破綻の後の2023年3月22日には、FRBは政策金利を引き上げています。利回りの低下は、利下げの見込みだけでなく、不安から短い国債に資金が集まった動きも含んでいたことになります。

コロナ(2020)ロシア(1998)SVB(2023)LTCM(1998)
−1%−0.75%−0.5%−0.25%0%0102030405060LTCM(1998) -0.15%SVB(2023) -0.24%ロシア(1998) -0.59%コロナ(2020) -0.93%

線は、下がり幅の大きかった4つの出来事について、基準日を0として60営業日の動きを重ねたものです。横軸は年ではなく、基準日からの営業日の数です。

05ふだんの1か月と比べると

米国債の利回りは、何もない月でも動きます。そこで、1990年1月2日からのすべての営業日を起点にした「5営業日」と「20営業日」の10年債の変化(9,199通り・9,184通り)の中で、出来事の後の変化が下から何%の位置にあったかを出しました。数字が小さいほど、ふだんより大きく下がったことを表します。

出来事5日後の変化ふだんの5日の中の位置(下から)20日後の変化ふだんの20日の中の位置(下から)
アジア通貨危機の株安▲0.17%8%▲0.15%28%
ロシア危機▲0.08%24%▲0.53%2%
LTCMの救済▲0.14%12%▲0.14%28%
同時多発テロ▲0.15%11%▲0.15%28%
BNPパリバ・ショック▲0.15%11%▲0.33%9%
ベア・スターンズの救済▲0.22%4%▲0.07%41%
リーマン・ブラザーズの破綻+0.04%63%+0.15%74%
フラッシュ・クラッシュ▲0.02%44%▲0.19%22%
中国発の世界的な株安+0.14%88%+0.15%75%
米国株の急落(2018年2月)▲0.01%48%+0.04%58%
新型コロナの株安▲0.23%3%▲0.38%6%
シリコンバレー銀行の破綻▲0.37%0%▲0.63%1%
日本株の急落(2024年8月)+0.14%88%+0.11%70%
米国の相互関税の発表+0.14%87%+0.05%60%
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20営業日の変化が、ふだんの下から10%以内に入ったのは14件中4件でした。ふだんの20営業日で10年債の利回りが0.5%以上下がるのは、全体の2.2%です。出来事の後の動きの中には、ふだんの月と区別がつかない大きさのものも多く含まれています。

反対に、利回りが大きく上がった(米国債が売られた)1か月は米国債が売られるとどうなるかで、同じ20営業日の物差しで数えています。

06年限によって、下がり方は違ったか

同じ20営業日に、3か月・2年・5年・10年・30年の利回りがどれだけ動いたかです。

出来事3か月2年5年10年30年
アジア通貨危機の株安+0.14%▲0.08%▲0.13%▲0.15%▲0.22%
ロシア危機▲0.20%▲0.62%▲0.69%▲0.53%▲0.32%
LTCMの救済▲0.81%▲0.54%▲0.40%▲0.14%▲0.08%
同時多発テロ▲0.99%▲0.65%▲0.38%▲0.15%▲0.02%
BNPパリバ・ショック▲0.66%▲0.56%▲0.49%▲0.33%▲0.22%
ベア・スターンズの救済▲0.16%+0.13%+0.04%▲0.07%▲0.17%
リーマン・ブラザーズの破綻▲1.24%▲0.61%▲0.20%+0.15%▲0.17%
フラッシュ・クラッシュ▲0.01%▲0.06%▲0.14%▲0.19%▲0.10%
中国発の世界的な株安▲0.02%+0.08%+0.07%+0.15%+0.28%
米国株の急落(2018年2月)+0.22%+0.09%+0.07%+0.04%+0.08%
新型コロナの株安▲1.56%▲0.88%▲0.62%▲0.38%▲0.24%
シリコンバレー銀行の破綻▲0.14%▲1.08%▲0.85%▲0.63%▲0.34%
日本株の急落(2024年8月)▲0.08%+0.03%+0.09%+0.11%+0.09%
米国の相互関税の発表▲0.01%▲0.21%▲0.14%+0.05%+0.20%
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14件中10件で、2年債は10年債より大きく下がりました。短い年限が先に大きく下がり、長い年限との差が開く形です。30年債の利回りが20営業日後に下がっていたのは10件でした。長い年限は、将来の物価や国の借金の多さにも左右されるので、不安が広がっても下がり方が小さいことがあります。

3か月物は、FRBの政策金利にいちばん近い年限です。FRBが定例の会合を待たずに政策金利を下げた2001年9月・2020年3月を含む同時多発テロと新型コロナの株安では、3か月物が20営業日で▲0.99%・▲1.56%動きました。

07値段に直すと、どれだけ上がったか

基準日にその年限の米国債を額面(100)で買い、20営業日後の利回りで値段を計算しました。受け取る利子の20日分を足しています。右端は、10年債を「20日以内で最も利回りが低かった日」に売れたとした場合です。

出来事2年5年10年30年10年(最も低い日)
アジア通貨危機の株安+0.6%+1.0%+1.6%+3.5%+1.4%
ロシア危機+1.6%+3.4%+4.6%+5.3%+5.0%
LTCMの救済+1.4%+2.1%+1.5%+1.6%+4.6%
同時多発テロ+1.5%+2.0%+1.6%+0.7%+2.7%
BNPパリバ・ショック+1.4%+2.5%+3.0%+3.9%+2.9%
ベア・スターンズの救済▲0.1%+0.0%+0.9%+3.2%+1.9%
リーマン・ブラザーズの破綻+1.3%+1.2%▲0.9%+3.2%+2.8%
フラッシュ・クラッシュ+0.2%+0.8%+1.9%+2.0%+3.4%
中国発の世界的な株安▲0.1%▲0.2%▲1.2%▲5.3%+0.4%
米国株の急落(2018年2月)+0.0%▲0.1%▲0.1%▲1.3%+0.6%
新型コロナの株安+1.8%+3.1%+3.7%+5.7%+9.9%
シリコンバレー銀行の破綻+2.4%+4.2%+5.6%+6.6%+5.3%
日本株の急落(2024年8月)+0.3%▲0.1%▲0.6%▲1.2%+0.2%
米国の相互関税の発表+0.7%+0.9%▲0.1%▲2.8%+1.6%
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同じ利回りの低下でも、年限が長いほど値段は大きく動きます。新型コロナの株安の20日間に10年債は+3.7%、30年債は+5.7%でした。一方、20営業日後に利回りが上がっていた出来事では、長い年限ほど値下がりも大きくなっています。20営業日後の利回りが最も上がっていた中国発の世界的な株安では、10年債が−1.2%、30年債が−5.3%です。

「有事に備えて米国債を持つ」という考え方は、こうした値上がりを当てにしたものです。値上がりが大きいのは長い年限ですが、何も起きない時期に金利が上がると、値下がりも長い年限ほど大きくなります。

08円で持っている人から見ると

日本の投資家が米国債を持つと、ドルでの値段の動きに、ドル円の動きが重なります。基準日と20営業日後のドル円(2020年11月12日より後はFRBの日次の値、それより前はFRBの月中平均)で、10年債の結果を円に直しました。

出来事ドル円ドル円の変化10年債(ドル)10年債(円)
アジア通貨危機の株安121.06→125.38円(月中平均)+3.6%+1.6%+5.2%
ロシア危機144.68→134.48円(月中平均)▲7.0%+4.6%▲2.8%
LTCMの救済134.48→121.05円(月中平均)▲10.0%+1.5%▲8.7%
同時多発テロ118.61→121.45円(月中平均)+2.4%+1.6%+4.0%
BNPパリバ・ショック116.73→115.04円(月中平均)▲1.4%+3.0%+1.5%
ベア・スターンズの救済100.76→102.68円(月中平均)+1.9%+0.9%+2.8%
リーマン・ブラザーズの破綻106.57→99.97円(月中平均)▲6.2%▲0.9%▲7.1%
フラッシュ・クラッシュ91.97→90.81円(月中平均)▲1.3%+1.9%+0.6%
中国発の世界的な株安123.00→120.15円(月中平均)▲2.3%▲1.2%▲3.5%
米国株の急落(2018年2月)107.97→106.05円(月中平均)▲1.8%▲0.1%▲1.9%
新型コロナの株安110.03→107.67円(月中平均)▲2.1%+3.7%+1.4%
シリコンバレー銀行の破綻136.41→131.67円(日次)▲3.5%+5.6%+1.9%
日本株の急落(2024年8月)146.98→145.95円(日次)▲0.7%▲0.6%▲1.3%
米国の相互関税の発表149.98→145.48円(日次)▲3.0%▲0.1%▲3.1%
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14件中11件で円高ドル安になり、円で見た結果がドルで見た結果より悪かったのは11件でした。ドルでは9件で値上がりしていたのに、円では7件で値下がりしています。市場が不安になると円が買われることが多く、ドルの資産の値上がりを打ち消す方向に働いてきました。

例として、新型コロナの株安で額面1万ドルの10年債を持っていた場合です。基準日のドル円110.03円で円に直すと1,100,295円、20営業日後は値段が+3.7%の10,367ドルを107.67円で直して1,116,211円です。円での変化は+1.4%でした。

月中平均で比べた出来事は、月の途中の動きが均されています。日次の値より、変化は小さく出ます。円とドルの長い期間の動きは円高でいくら損するかで計算しています。

09短期国債(3か月物)に逃げたお金

不安が強いとき、投資家は満期のごく短い国債に集まります。値動きがほとんど無く、すぐに現金に戻るからです。その結果、3か月物の利回りが0%近くまで下がることがあります。3か月物の利回りが1日で大きく下がった日を、下がり幅の大きい順に並べました。

日付前の日その日1日の変化
2008.09.170.84%0.03%▲0.81%
2007.08.203.76%3.12%▲0.64%
2001.09.133.26%2.74%▲0.52%
2008.01.222.86%2.35%▲0.51%
1998.10.164.15%3.65%▲0.50%
2008.09.231.28%0.80%▲0.48%
2008.09.151.49%1.02%▲0.47%
2000.12.215.82%5.38%▲0.44%
2007.08.154.64%4.21%▲0.43%
2007.08.294.40%3.98%▲0.42%
2007.08.164.21%3.79%▲0.42%
2008.10.100.60%0.25%▲0.35%
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上位12日のうち10日は、この記事の出来事の基準日から30営業日以内の日です。年月で見ると1998年10月・2000年12月・2001年9月・2007年8月・2008年1月・2008年9月・2008年10月に集まっています。3か月物の利回りが0.05%以下だった日は合わせて983日で、最も低かったのは2011年9月22日の0.00%でした。

年0.05%以下の日その年の公表日数その年の最も低い値
2008年19日248日0.01%
2009年23日250日0.02%
2010年6日251日0.04%
2011年164日250日0.00%
2012年23日250日0.01%
2013年131日250日0.00%
2014年235日250日0.01%
2015年186日251日0.00%
2020年8日251日0.00%
2021年188日251日0.01%
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2008年の終わりから2015年まで、そして2020年から2021年は、FRBが政策金利を0〜0.25%に下げていた時期で、3か月物もほぼ0%に張りついていました。0.05%以下の日がこの2つの時期に集中しているのは、不安だけでなく、政策金利そのものが0%近くだったためです。

出来事の前後で、2年債と3か月物の利回りの差がどう変わったかです。差が縮むほど、2年債が3か月物より大きく買われたことを表します。

出来事基準日の差(2年−3か月)20日後の差差の変化
アジア通貨危機の株安+0.64%+0.42%▲0.22%
ロシア危機+0.31%▲0.11%▲0.42%
LTCMの救済▲0.15%+0.12%+0.27%
同時多発テロ+0.27%+0.61%+0.34%
BNPパリバ・ショック▲0.31%▲0.21%+0.10%
ベア・スターンズの救済+0.28%+0.57%+0.29%
リーマン・ブラザーズの破綻+0.74%+1.37%+0.63%
フラッシュ・クラッシュ+0.73%+0.68%▲0.05%
中国発の世界的な株安+0.61%+0.71%+0.10%
米国株の急落(2018年2月)+0.67%+0.54%▲0.13%
新型コロナの株安▲0.16%+0.52%+0.68%
シリコンバレー銀行の破綻▲0.15%▲1.09%▲0.94%
日本株の急落(2024年8月)▲1.41%▲1.30%+0.11%
米国の相互関税の発表▲0.41%▲0.61%▲0.20%
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10コロナの株安を1日ずつ見る

2020年2月19日から30営業日の、年限ごとの利回りと、基準日に額面で買った10年債の値段(その日の10年の利回りで計算)です。

日付日数3か月2年10年30年10年の変化(基準日から)10年債の値段
2020.02.1901.58%1.42%1.56%2.01%±0.00%100.00
2020.02.2011.58%1.39%1.52%1.97%▲0.04%100.37
2020.02.2121.56%1.34%1.46%1.90%▲0.10%100.93
2020.02.2431.53%1.26%1.38%1.84%▲0.18%101.67
2020.02.2541.53%1.20%1.33%1.80%▲0.23%102.14
2020.02.2651.53%1.16%1.33%1.81%▲0.23%102.14
2020.02.2761.45%1.11%1.30%1.79%▲0.26%102.43
2020.02.2871.27%0.86%1.13%1.65%▲0.43%104.04
2020.03.0281.13%0.84%1.10%1.66%▲0.46%104.33
2020.03.0390.95%0.71%1.02%1.64%▲0.54%105.10
2020.03.04100.72%0.67%1.02%1.67%▲0.54%105.10
2020.03.05110.62%0.59%0.92%1.56%▲0.64%106.08
2020.03.06120.45%0.49%0.74%1.25%▲0.82%107.85
2020.03.09130.33%0.38%0.54%0.99%▲1.02%109.87
2020.03.10140.44%0.50%0.76%1.28%▲0.80%107.65
2020.03.11150.42%0.50%0.82%1.30%▲0.74%107.05
2020.03.12160.33%0.50%0.88%1.49%▲0.68%106.46
2020.03.13170.28%0.49%0.94%1.56%▲0.62%105.87
2020.03.16180.24%0.36%0.73%1.34%▲0.83%107.93
2020.03.17190.19%0.47%1.02%1.63%▲0.54%105.08
2020.03.18200.02%0.54%1.18%1.77%▲0.38%103.55
2020.03.19210.04%0.44%1.12%1.78%▲0.44%104.12
2020.03.20220.05%0.37%0.92%1.55%▲0.64%106.05
2020.03.23230.02%0.28%0.76%1.33%▲0.80%107.62
2020.03.24240.01%0.38%0.84%1.39%▲0.72%106.83
2020.03.25250.00%0.34%0.88%1.45%▲0.68%106.43
2020.03.26260.00%0.30%0.83%1.42%▲0.73%106.92
2020.03.27270.03%0.25%0.72%1.29%▲0.84%108.01
2020.03.30280.12%0.23%0.70%1.31%▲0.86%108.20
2020.03.31290.11%0.23%0.70%1.35%▲0.86%108.20
2020.04.01300.09%0.23%0.62%1.27%▲0.94%108.99
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10年債の利回りが最も低かったのは2020年3月9日の0.54%で、基準日に額面で買った10年債の値段は109.87になっていました。その後、3月中旬にかけて利回りは一時上がっています。株も米国債も売って現金を手元に置こうとする動きが重なり、米国債も一時売られたためと説明されています。「有事に米国債が買われる」流れが、数日だけ逆向きになった例です。

11リーマン破綻の前後を1日ずつ見る

2008年9月12日から74営業日(2008年の最後の営業日まで)の動きです。

日付日数3か月2年10年30年10年の変化(基準日から)10年債の値段
2008.09.1201.49%2.23%3.74%4.32%±0.00%100.00
2008.09.1511.02%1.78%3.47%4.12%▲0.27%102.26
2008.09.1620.84%1.89%3.48%4.08%▲0.26%102.18
2008.09.1730.03%1.64%3.41%4.08%▲0.33%102.77
2008.09.1840.23%1.78%3.54%4.14%▲0.20%101.67
2008.09.1950.99%2.16%3.78%4.36%+0.04%99.67
2008.09.2261.28%2.13%3.83%4.41%+0.09%99.26
2008.09.2370.80%2.11%3.85%4.43%+0.11%99.10
2008.09.2480.49%2.03%3.80%4.40%+0.06%99.51
2008.09.2590.76%2.16%3.88%4.40%+0.14%98.85
2008.09.26100.87%2.11%3.85%4.36%+0.11%99.10
2008.09.29110.94%1.70%3.61%4.13%▲0.13%101.08
2008.09.30120.92%2.00%3.85%4.31%+0.11%99.10
2008.10.01130.85%1.82%3.77%4.22%+0.03%99.75
2008.10.02140.63%1.62%3.66%4.16%▲0.08%100.66
2008.10.03150.51%1.60%3.63%4.11%▲0.11%100.91
2008.10.06160.54%1.43%3.48%3.99%▲0.26%102.17
2008.10.07170.82%1.47%3.50%4.01%▲0.24%102.00
2008.10.08180.68%1.65%3.72%4.09%▲0.02%100.16
2008.10.09190.60%1.65%3.84%4.14%+0.10%99.18
2008.10.10200.25%1.62%3.89%4.15%+0.15%98.78
2008.10.14210.34%1.82%4.08%4.27%+0.34%97.25
2008.10.15220.22%1.64%4.04%4.25%+0.30%97.57
2008.10.16230.46%1.61%3.99%4.25%+0.25%97.97
2008.10.17240.83%1.64%3.98%4.32%+0.24%98.05
2008.10.20251.24%1.71%3.91%4.26%+0.17%98.62
2008.10.21261.10%1.58%3.76%4.20%+0.02%99.84
2008.10.22271.05%1.53%3.65%4.07%▲0.09%100.74
2008.10.23280.98%1.54%3.63%3.99%▲0.11%100.91
2008.10.24290.89%1.57%3.76%4.11%+0.02%99.84
2008.10.27300.84%1.59%3.79%4.12%+0.05%99.59
2008.10.28310.77%1.65%3.89%4.19%+0.15%98.78
2008.10.29320.62%1.58%3.93%4.26%+0.19%98.46
2008.10.30330.41%1.59%4.00%4.30%+0.26%97.90
2008.10.31340.46%1.56%4.01%4.35%+0.27%97.82
2008.11.03350.49%1.45%3.96%4.33%+0.22%98.22
2008.11.04360.48%1.39%3.81%4.20%+0.07%99.43
2008.11.05370.40%1.36%3.73%4.13%▲0.01%100.08
2008.11.06380.32%1.28%3.75%4.19%+0.01%99.92
2008.11.07390.31%1.33%3.83%4.25%+0.09%99.27
2008.11.10400.29%1.27%3.82%4.21%+0.08%99.35
2008.11.12410.18%1.19%3.75%4.17%+0.01%99.92
2008.11.13420.22%1.24%3.84%4.34%+0.10%99.19
2008.11.14430.15%1.22%3.72%4.22%▲0.02%100.16
2008.11.17440.12%1.22%3.68%4.20%▲0.06%100.49
2008.11.18450.12%1.15%3.53%4.14%▲0.21%101.73
2008.11.19460.07%1.09%3.38%3.96%▲0.36%102.99
2008.11.20470.03%1.00%3.10%3.64%▲0.64%105.38
2008.11.21480.02%1.09%3.20%3.70%▲0.54%104.52
2008.11.24490.13%1.31%3.35%3.78%▲0.39%103.24
2008.11.25500.10%1.15%3.11%3.63%▲0.63%105.29
2008.11.26510.05%1.09%2.99%3.54%▲0.75%106.33
2008.11.28520.01%1.00%2.93%3.45%▲0.81%106.85
2008.12.01530.07%0.90%2.72%3.22%▲1.02%108.71
2008.12.02540.06%0.90%2.68%3.18%▲1.06%109.07
2008.12.03550.02%0.87%2.67%3.17%▲1.07%109.16
2008.12.04560.02%0.82%2.55%3.06%▲1.19%110.24
2008.12.05570.02%0.93%2.67%3.11%▲1.07%109.15
2008.12.08580.03%0.97%2.77%3.16%▲0.97%108.25
2008.12.09590.03%0.84%2.67%3.06%▲1.07%109.14
2008.12.1060—0.86%2.69%3.09%▲1.05%108.96
2008.12.11610.01%0.79%2.64%3.07%▲1.10%109.41
2008.12.12620.02%0.78%2.60%3.07%▲1.14%109.76
2008.12.15630.03%0.75%2.53%2.98%▲1.21%110.40
2008.12.16640.04%0.65%2.37%2.86%▲1.37%111.86
2008.12.17650.05%0.73%2.20%2.66%▲1.54%113.44
2008.12.1866—0.68%2.08%2.53%▲1.66%114.56
2008.12.19670.02%0.74%2.13%2.55%▲1.61%114.08
2008.12.22680.01%0.87%2.16%2.60%▲1.58%113.80
2008.12.23690.02%0.90%2.18%2.63%▲1.56%113.60
2008.12.2470—0.90%2.20%2.63%▲1.54%113.41
2008.12.26710.03%0.89%2.16%2.61%▲1.58%113.78
2008.12.29720.06%0.78%2.13%2.63%▲1.61%114.06
2008.12.30730.10%0.75%2.11%2.58%▲1.63%114.24
2008.12.31740.11%0.76%2.25%2.69%▲1.49%112.92
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破綻の直後には、3か月物の利回りが0%近くまで下がりました。10年債は20営業日後には+0.15%と、基準日より上がっていましたが、60営業日後は−1.05%です。年末(2008年12月31日)には2.25%まで下がりました。金融危機の初めの1か月と、景気の悪化がはっきりした後の数か月とで、10年債の動きが違ったことが分かります。

12同時多発テロの前後を1日ずつ見る

2001年9月10日から34営業日(10月末まで)の動きです。9月11日と12日は公表がありません。

日付日数3か月2年10年30年10年の変化(基準日から)10年債の値段
2001.09.1003.26%3.53%4.84%5.43%±0.00%100.00
2001.09.1312.74%2.99%4.64%5.39%▲0.20%101.59
2001.09.1422.64%2.87%4.57%5.35%▲0.27%102.15
2001.09.1732.59%2.96%4.63%5.41%▲0.21%101.66
2001.09.1842.48%2.96%4.72%5.55%▲0.12%100.95
2001.09.1952.19%2.81%4.69%5.56%▲0.15%101.18
2001.09.2062.22%2.91%4.75%5.62%▲0.09%100.71
2001.09.2172.25%2.91%4.70%5.59%▲0.14%101.10
2001.09.2482.38%2.94%4.73%5.58%▲0.11%100.87
2001.09.2592.40%2.88%4.72%5.58%▲0.12%100.95
2001.09.26102.38%2.82%4.65%5.50%▲0.19%101.50
2001.09.27112.38%2.78%4.58%5.45%▲0.26%102.06
2001.09.28122.40%2.86%4.60%5.42%▲0.24%101.90
2001.10.01132.37%2.82%4.55%5.38%▲0.29%102.30
2001.10.02142.26%2.77%4.53%5.34%▲0.31%102.46
2001.10.03152.23%2.77%4.50%5.32%▲0.34%102.70
2001.10.04162.21%2.75%4.53%5.31%▲0.31%102.46
2001.10.05172.19%2.71%4.52%5.31%▲0.32%102.54
2001.10.09182.22%2.74%4.62%5.39%▲0.22%101.74
2001.10.10192.22%2.78%4.61%5.36%▲0.23%101.82
2001.10.11202.27%2.88%4.69%5.41%▲0.15%101.18
2001.10.12212.25%2.81%4.68%5.42%▲0.16%101.26
2001.10.15222.25%2.78%4.62%5.38%▲0.22%101.73
2001.10.16232.22%2.77%4.59%5.35%▲0.25%101.97
2001.10.17242.22%2.80%4.59%5.32%▲0.25%101.97
2001.10.18252.19%2.77%4.58%5.32%▲0.26%102.05
2001.10.19262.19%2.77%4.63%5.36%▲0.21%101.65
2001.10.22272.22%2.79%4.63%5.36%▲0.21%101.65
2001.10.23282.20%2.81%4.66%5.38%▲0.18%101.41
2001.10.24292.17%2.72%4.61%5.32%▲0.23%101.81
2001.10.25302.14%2.63%4.56%5.28%▲0.28%102.21
2001.10.26312.14%2.63%4.53%5.27%▲0.31%102.45
2001.10.29322.09%2.55%4.50%5.25%▲0.34%102.69
2001.10.30332.05%2.48%4.44%5.22%▲0.40%103.17
2001.10.31342.05%2.44%4.30%4.89%▲0.54%104.30
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再開した9月13日は、3か月物が−0.52%、10年債が−0.20%でした。短い年限ほど大きく下がっています。10月末(2001年10月31日)には10年債が4.30%まで下がりました。

13有事なのに、利回りが上がった例

20営業日後に10年債の利回りが基準日より上がっていた出来事は5件ありました(リーマン・ブラザーズの破綻・中国発の世界的な株安・米国株の急落(2018年2月)・日本株の急落(2024年8月)・米国の相互関税の発表)。なかでも米国の相互関税の発表は、株が大きく下がった時期に米国債の利回りも上がった例です。基準日からの20営業日です。

日付日数3か月2年10年30年10年の変化(基準日から)10年債の値段
2025.04.0204.32%3.91%4.20%4.54%±0.00%100.00
2025.04.0314.31%3.71%4.06%4.49%▲0.14%101.14
2025.04.0424.28%3.68%4.01%4.41%▲0.19%101.55
2025.04.0734.29%3.73%4.15%4.58%▲0.05%100.41
2025.04.0844.31%3.71%4.26%4.71%+0.06%99.52
2025.04.0954.35%3.91%4.34%4.72%+0.14%98.88
2025.04.1064.34%3.84%4.40%4.86%+0.20%98.40
2025.04.1174.34%3.96%4.48%4.85%+0.28%97.77
2025.04.1484.33%3.84%4.38%4.80%+0.18%98.56
2025.04.1594.33%3.84%4.35%4.79%+0.15%98.80
2025.04.16104.33%3.77%4.29%4.74%+0.09%99.28
2025.04.17114.34%3.81%4.34%4.80%+0.14%98.88
2025.04.21124.34%3.75%4.42%4.91%+0.22%98.24
2025.04.22134.33%3.76%4.41%4.88%+0.21%98.32
2025.04.23144.33%3.81%4.40%4.83%+0.20%98.40
2025.04.24154.32%3.77%4.32%4.77%+0.12%99.04
2025.04.25164.32%3.74%4.29%4.74%+0.09%99.28
2025.04.28174.32%3.67%4.23%4.69%+0.03%99.76
2025.04.29184.31%3.65%4.19%4.64%▲0.01%100.08
2025.04.30194.31%3.60%4.17%4.66%▲0.03%100.24
2025.05.01204.31%3.70%4.25%4.74%+0.05%99.60
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発表の後、10年債の利回りは2025年4月4日に4.01%まで下がった後、2025年4月11日には4.48%まで上がりました。30年債も同じ20営業日で+0.20%です。発表の直後に下がった利回りが、数日で発表前より高くなりました。

不安の原因が米国そのものの政策にあるときや、物価が上がると見込まれるときは、米国債が「逃げ場所」にならないことがあります。2022年のように、景気への不安があっても物価の上昇とそれを抑えるための利上げが続いた年は、10年債の利回りが1.52%(2021年末)から3.88%(2022年末)まで上がりました。この記事のデータからは、ひとつひとつの動きの理由までは決められません。分かるのは、「有事に米国債が買われる」は多くの例で当てはまったが、毎回ではなかったということです。

14その後、利回りはどうなったか

基準日からさらに先の、60営業日後(およそ3か月)と250営業日後(およそ1年)の10年債の変化と、利回りが基準日の水準に戻る(基準日以上になる)までにかかった営業日の数です。

出来事基準日60日後250日後基準日の水準に戻るまで
アジア通貨危機の株安6.01%▲0.31%▲1.28%407営業日
ロシア危機5.40%▲0.59%+0.58%1営業日
LTCMの救済4.73%▲0.15%+1.21%13営業日
同時多発テロ4.84%+0.33%▲0.86%45営業日
BNPパリバ・ショック4.84%▲0.53%▲0.92%4051営業日
ベア・スターンズの救済3.56%+0.46%▲0.67%6営業日
リーマン・ブラザーズの破綻3.74%▲1.05%▲0.32%5営業日
フラッシュ・クラッシュ3.58%▲0.64%▲0.33%188営業日
中国発の世界的な株安2.05%+0.22%▲0.50%2営業日
米国株の急落(2018年2月)2.84%+0.13%▲0.13%3営業日
新型コロナの株安1.56%▲0.93%▲0.27%261営業日
シリコンバレー銀行の破綻3.93%▲0.24%+0.16%81営業日
日本株の急落(2024年8月)3.80%+0.48%+0.42%2営業日
米国の相互関税の発表4.20%+0.04%+0.15%4営業日
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60営業日以内に基準日の水準に戻った出来事は9件、戻るまでの日数の中央値は10営業日でした。250営業日後も下がっていたのは14件中9件です。基準日の水準に戻るまで250営業日(およそ1年)より長くかかったのは、アジア通貨危機の株安・BNPパリバ・ショック・新型コロナの株安でした。反対に、ロシア危機・リーマン・ブラザーズの破綻・中国発の世界的な株安・米国株の急落(2018年2月)・日本株の急落(2024年8月)・米国の相互関税の発表は5営業日以内に戻っています。

15景気後退の期間に、利回りはどう動いたか

全米経済研究所(NBER)が決めた米国の景気の山と谷の月を使い、景気後退の期間(山の月の初めから谷の月の終わりまで)に、年限ごとの利回りがどう動いたかを数えました。右端は、山の月の初めに額面で買った10年債を、谷の月の終わりに売った場合(利子を含む)です。

景気後退の期間営業日3か月2年10年10年の変化10年債の結果
1990年7月〜1991年3月184日8.00%→5.92%8.25%→7.02%8.43%→8.05%▲0.38%+8.7%
2001年3月〜2001年11月187日4.84%→1.78%4.41%→2.84%4.87%→4.78%▲0.09%+4.3%
2007年12月〜2009年6月394日3.06%→0.19%2.90%→1.11%3.89%→3.53%▲0.36%+8.7%
2020年2月〜2020年4月61日1.57%→0.09%1.36%→0.20%1.54%→0.64%▲0.90%+8.9%
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4回の景気後退のうち、10年債の利回りが期間中に下がったのは4回です。10年債の値上がりと利子を合わせた結果がプラスだったのは4回中4回でした。景気後退は、山と谷の月が後から決まります。期間の始まりの時点で「景気後退に入った」と分かっていたわけではありません。

景気後退の前に起きることの多い、長い年限と短い年限の利回りの逆転は逆イールドとはで数えています。

16「安全資産」「無リスク資産」とはどういう意味か

米国債は「安全資産」「無リスク資産」と呼ばれます。ただ、それは「どんなことでも損をしない」という意味ではありません。リスクを3つに分けると、何が小さくて何が残るかが分かります。

リスク米国債ではこの記事の数字との関係
約束どおり払われない(信用)米国政府は利払いと元本の返済を止めたことがない。格付けは最上位から1段下がったことがある出来事のとき、この点を理由に買われる
途中で売ると値段が変わる(金利)利回りが上がれば値段は下がる。長い年限ほど大きい有事でも、20日後に利回りが上がっていた例があった
円で見ると増減する(為替)ドルで受け取るので、円高になれば円での額は減る出来事の多くで円高が進み、ドルでの値上がりを打ち消した

「無リスク資産」という言葉は、主に1つ目の信用のリスクがとても小さいことを指して使われます。金融の計算では、米国の短期国債の利回りを「リスクのない利回り」として使うことが多くあります。日本の投資家にとっては、2つ目と3つ目が残ることを知っておく必要があります。

格付けが下がった局面は米国債の信用はどこまで高いか、途中で売るときの値段は満期まで持つと途中の値下がりは関係ないかで扱っています。

17この記事のデータで分からないこと

18この記事に出てくる言葉

質への逃避(フライト・トゥ・クオリティ)
市場が不安になったとき、値下がりしやすい資産から、安全と考えられている資産にお金が移ること。
利回り
今の値段で買って満期まで持ったときに、1年あたりに受け取る割合。値段が上がると下がり、値段が下がると上がる。
短期国債(T-Bill)
満期が1年以内の米国債。利子は無く、額面より安く買って満期に額面を受け取る。この記事の「3か月」は3か月物。
基準日
この記事で、出来事の前の最後の利回りとして使った日。
営業日
米国財務省が利回りを公表した日。土日・米国の祝日は入らない。
景気後退(リセッション)
経済の活動が広く落ち込む期間。米国では全米経済研究所(NBER)が山と谷の月を決める。
政策金利
中央銀行が決める短い期間の金利の目標。米国ではFRBが決める。

19よくある質問

有事には、必ず米国債が値上がりしますか。

必ずではありません。この記事の14件では、20営業日後に10年債の利回りが下がっていた(値段が上がっていた)のは9件でした。米国の相互関税の発表のように、利回りが上がった例もあります。

米国債と金は、どちらが有事に強いですか。

この記事は米国債だけを数えています。金の動きは同じ形で別の記事にまとめていますが、出来事も期間の取り方も違うので、直接の比べ方はしていません。どちらも、毎回同じ方向に動いたわけではありません。

日本の投資家が有事に備えて米国債を持つ意味はありますか。

ドルで見た値上がりは、多くの例で円高に打ち消されました(14件中11件で円での結果がドルより悪い)。有事の備えとして考えるなら、為替の動きを含めて見る必要があります。

どの年限が、有事に最も値上がりしましたか。

利回りの下がり幅は短い年限ほど大きいことが多いのですが、値段の動きは年限が長いほど大きくなります。20営業日の値段で見ると、利回りが下がった出来事では30年債や10年債の値上がりが大きくなっていました。

景気後退のときは、米国債の利回りは下がりますか。

1990年からの4回の景気後退では、10年債の利回りが期間中に下がったのは4回でした。景気後退の期間は後から決まるので、始まったときにそれが分かっていたわけではありません。

20この記事の数字は、どこから取ったか

この記事の数字は、次の公表データだけから当サイトが計算しました。

出来事の日付は、広く知られている発表・出来事の日です。基準日と、そこからの営業日の数は、米国財務省の公表日で数えました。値段は、年2回利払いの債券を利回りから計算した理論値(額面100)です。円での結果は、基準日と20営業日後のドル円の比で直しています。データは毎週更新しています。

計算は過去のデータの記録で、これから先の結果を示すものではありません。特定の商品や金融機関をすすめるものでもありません。当サイトは金融商品取引業者ではありません。

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