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金投資は有事に上がったか|7つの有事、3か月後は3回下落

読む目安:「先に結論」だけなら1分/全部で約35分(21千字)

データの時点金は2026年8月まで財務省の金の輸入単価・FRBのドル円・財務省の国債金利・毎週月曜に自動で更新

7回中3回3か月後に下がっていた

湾岸危機・同時多発テロ・イラク戦争・リーマン破綻・東日本大震災・コロナ・ウクライナ侵攻の7つの出来事について、出来事の前の月の金の値段を基準に、3か月後を比べました。3回は下がっていました(湾岸危機(−7.3%)、イラク戦争(−3.9%)、リーマン破綻(−20.4%))。「有事には金が上がる」と言われますが、円建ての金の値段では、いつもそうだったわけではありません。

1か月後 57.1%57.1%1か月後3か月後 57.1%57.1%3か月後6か月後 57.1%57.1%6か月後12か月後 57.1%57.1%12か月後24か月後 85.7%85.7%24か月後
7つの出来事のうち、前の月より金が高かった割合(何か月後か)
この記事の内容33の見出し

01先に結論

金の値段は、財務省の貿易統計の輸入単価(1グラムあたりの円・月ごと)です。出来事の日付は、だれでも確かめられるよく知られた日付だけを使いました。過去の記録で、次の出来事のときに同じになるという意味ではありません。

02比べ方:出来事の前の月を基準にする

  1. 大きな出来事戦争・テロ・金融危機・災害・感染症
  2. ドル建ての金世界の金の値段が動く
  3. ドル円円高・円安が同時に動くことが多い
  4. 円建ての金2つの掛け算で、日本の金の値段が決まる

金の輸入単価は月ごとの値です。出来事が起きた月の値には、出来事の前の日と後の日がまざっています。そこで、出来事が起きた月の前の月を基準(100)にして、1・3・6・12・24か月後の値と比べました。

基準の月の値が、相場と合わないとして除いた月だったときは、その前の月を基準にします。比べる先の月が除いた月のときは、次の月の値を使い、表に※を付けました。

「有事」は決まった定義のある言葉ではありません。この記事では、戦争・大きなテロ・世界的な金融危機・大きな災害・世界的な感染症のうち、日付がはっきりしていて、金の話でよく例に挙がる7つを選びました。ほかの出来事を選べば、結果は変わります。参考として、後半にほかの4つの出来事も載せています。

037つの出来事と、前の月を基準にした値動き

出来事の日付と、基準にした月、基準の月の輸入単価、その後の変化です。

出来事日付基準の月基準の値(1g)1か月後3か月後6か月後12か月後24か月後
湾岸危機1990年8月2日1990年7月1,626円+4.2%−7.3%−18.0%−20.2%−16.9%
同時多発テロ2001年9月11日2001年8月1,076円+2.4%+0.9%+15.9%+9.9%+14.5%
イラク戦争2003年3月20日2003年2月1,392円−7.6%−3.9%−11.5%−0.7%+0.2%
リーマン破綻2008年9月15日2008年8月2,934円−4.5%−20.4%−9.2%−8.6%+10.6%
東日本大震災2011年3月11日2011年2月3,596円+5.7%+8.0%+16.5%+18.2%+38.4%
コロナ2020年3月11日2020年2月5,618円−3.7%+3.9%+17.8%+8.3%+22.2%
ウクライナ侵攻2022年2月24日2022年1月6,709円+2.3%+17.6%+13.8%+16.8%※+43.0%
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※は、比べる先の月が除いた月だったため、次の月の値を使ったものです。

出来事何が起きたか
湾岸危機イラクがクウェートに侵攻
同時多発テロ米国で同時多発テロ
イラク戦争米英軍などがイラクへの攻撃を開始
リーマン破綻米国の投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻
東日本大震災東北地方太平洋沖地震と津波、原発事故
コロナWHOが新型コロナウイルスの感染拡大をパンデミックと表明
ウクライナ侵攻ロシアがウクライナに侵攻
湾岸危機同時多発テロイラク戦争リーマン破綻東日本大震災コロナウクライナ侵攻
050100150-606121824ウクライナ侵攻 143東日本大震災 138コロナ 122同時多発テロ 114リーマン破綻 111イラク戦争 100湾岸危機 83

線は、前の月を100として、6か月前から24か月後までをたどったものです。横軸の0が基準の月、6・12・18・24は何か月後かを表します。

12か月後にいちばん低かったのは湾岸危機(−20.2%)、24か月後にいちばん高かったのはウクライナ侵攻(+43.0%)でした。同じ出来事でも、何か月後で見るかによって、上がったとも下がったとも言えてしまいます。

04ふだんの月と比べると

出来事のあとに金が上がったとしても、ふだんから同じくらい上がっていたなら、出来事のせいとは言えません。そこで、1988年1月以降のすべての月を基準にして、同じ月数の後にどうなっていたかを数えました。

何か月後7つの出来事で前の月より高かった回数出来事の中央値ふだんの月で高かった割合ふだんの月の中央値数えた月の数
1か月後4回/7回+2.3%55%+0.6%452か月
3か月後4回/7回+0.9%56%+1.4%450か月
6か月後4回/7回+13.8%61%+2.6%446か月
12か月後4回/7回+8.3%65%+5.6%438か月
24か月後6回/7回+14.5%67%+8.7%426か月
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3か月後に前の月より高かったのは、出来事のあとで4/7回、ふだんの月で56%でした。金の輸入単価はこの期間に大きく上がってきたので、ふだんの月でも、時間がたつほど「前より高い」割合は上がります。出来事のあとの割合は、そのふだんの割合と大きくは違いません。7回という少ない回数では、「有事のあとに特に上がりやすい」とも「下がりやすい」とも言えない、というのがこの表の読み方です。

05ふだんの真ん中との差

前の表のふだんの月の中央値を、それぞれの出来事の変化から引きました。プラスなら、ふだんの真ん中より上がった(下がり方が小さかった)ことを、マイナスならふだんの真ん中より下だったことを表します。

出来事1か月後3か月後6か月後12か月後24か月後
湾岸危機+3.6ポイント−8.6ポイント−20.6ポイント−25.9ポイント−25.5ポイント
同時多発テロ+1.8ポイント−0.5ポイント+13.3ポイント+4.3ポイント+5.8ポイント
イラク戦争−8.2ポイント−5.3ポイント−14.1ポイント−6.4ポイント−8.5ポイント
リーマン破綻−5.1ポイント−21.7ポイント−11.8ポイント−14.3ポイント+1.9ポイント
東日本大震災+5.1ポイント+6.6ポイント+13.9ポイント+12.6ポイント+29.7ポイント
コロナ−4.3ポイント+2.5ポイント+15.2ポイント+2.6ポイント+13.5ポイント
ウクライナ侵攻+1.7ポイント+16.2ポイント+11.2ポイント+11.2ポイント+34.3ポイント
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ふだんの中央値を上回ったのは、3か月後で7回中3回、12か月後で4回、24か月後で5回でした。1988年1月から2026年8月までの39年あまりで、金の輸入単価は年あたり平均6.5%のペースで上がってきました。長く持つほど「前より高い」回が増えるのは、出来事とは関係なく、この長い値上がりの分が入ってくるためです。24か月後に上がっていた回が多いことを、そのまま「有事の効果」と読まないよう注意が必要です。

06ドル建ての金と、ドル円に分ける

円建ての金の値段は、ドル建ての金の値段(1トロイオンスあたり)とドル円の掛け算です。3か月後と12か月後の変化を、この2つに分けました。ドル建ての金は、輸入単価×31.1034768÷その月のドル円(FRBの月平均)で当サイトが出した換算値です。

出来事3か月後:円3か月後:ドル建ての金3か月後:ドル円12か月後:円12か月後:ドル建ての金12か月後:ドル円
湾岸危機−7.3%+6.6%−13.0%−20.2%−13.8%−7.5%
同時多発テロ+0.9%+0.1%+0.9%+9.9%+12.1%−2.0%
イラク戦争−3.9%−2.3%−1.7%−0.7%+11.0%−10.6%
リーマン破綻−20.4%−10.2%−11.3%−8.6%+5.3%−13.2%
東日本大震災+8.0%+9.9%−1.7%+18.2%+24.3%−4.9%
コロナ+3.9%+6.6%−2.6%+8.3%+13.0%−4.2%
ウクライナ侵攻+17.6%+6.8%+10.1%+16.8%+0.8%+15.9%
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ドル建ての金は、3か月後に7回中5回、12か月後に6回上がっていました。世界の金の値段で見れば、「有事に金が上がる」に近い動きが多かったことになります。

それでも円建ての金が下がった回があるのは、同じ時期に円高が進んだからです。ドル建ての金は上がったのに、円建ての金がそれより小さく(または下がって)なった出来事は3回でした(湾岸危機・東日本大震災・コロナ)。日本で円で金を持つ人にとっては、世界の金の値段と同じくらい、為替の動きが結果を左右しました。

07有事のあとの円高

大きな出来事のあとには、円が買われて円高になることがある、と説明されることがあります。基準の月のドル円と、その後の変化です(+は円安、−は円高)。

出来事基準の月のドル円1か月後3か月後12か月後
湾岸危機149.04円−1.1%−13.0%−7.5%
同時多発テロ121.37円−2.3%+0.9%−2.0%
イラク戦争119.34円−0.5%−1.7%−10.6%
リーマン破綻109.36円−2.5%−11.3%−13.2%
東日本大震災82.54円−1.1%−1.7%−4.9%
コロナ110.03円−2.1%−2.6%−4.2%
ウクライナ侵攻114.83円+0.4%+10.1%+15.9%
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1か月後に円高になっていたのは7回中6回、3か月後は5回でした。円高になると、ドル建ての金が同じでも、円建ての金は下がります。「有事の金」と「有事の円高」が同時に起きると、円で金を持つ人にとっては、2つが打ち消し合うことになります。

どの出来事で円高が大きかったかは、そのときの日本と米国の金利の差や、景気の状況などにもよります。この表は、出来事のあとに実際にどちらへ動いたかの記録です。

08出来事の前に、金はもう動いていたか

戦争などは、起きる前から緊張が高まっていることがあります。基準の月までの6か月と3か月で、金がすでに動いていたかを見ました。

出来事6か月前から基準の月まで3か月前から基準の月まで基準の月から3か月後
湾岸危機−13.9%−8.6%−7.3%
同時多発テロ+9.9%+2.2%+0.9%
イラク戦争+17.6%+11.3%−3.9%
リーマン破綻−6.2%+1.4%−20.4%
東日本大震災+10.8%−15.1%+8.0%
コロナ+13.2%+10.8%+3.9%
ウクライナ侵攻+4.7%+1.8%+17.6%
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基準の月までの3か月で金が上がっていたのは7回中5回でした。出来事の前から上がっていた場合、出来事のあとに「さらに上がる」とは限らず、下がることもありました。前もって緊張が伝えられていた出来事と、突然起きた出来事(テロ・地震など)とでは、前の動きが違うことがあります。

0912か月のあいだの、いちばん高い月と低い月

3か月後・12か月後という1点だけでは、途中の動きが見えません。基準の月から12か月のあいだで、いちばん高かった月と低かった月を出しました(かっこ内は基準の月からの変化)。

出来事いちばん高かった月いちばん低かった月12か月後
湾岸危機1990年9月(+19.3%)1991年3月(−32.1%)−20.2%
同時多発テロ2002年5月(+19.9%)2001年11月(+0.9%)+9.9%
イラク戦争2003年9月(+2.4%)2003年4月(−19.3%)−0.7%
リーマン破綻2009年3月(−1.1%)2008年11月(−20.4%)−8.6%
東日本大震災2011年11月(+22.1%)2011年3月(+5.7%)+18.2%
コロナ2020年9月(+19.4%)2020年3月(−3.7%)+8.3%
ウクライナ侵攻2022年4月(+17.6%)2022年2月(+2.3%)+16.8%
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12か月のあいだ一度も基準の月を下回らなかったのは3回(同時多発テロ・東日本大震災・ウクライナ侵攻)でした。ほかの出来事では、途中で基準の月より安い月がありました。出来事の直後に買っていたら、しばらく買値を下回る期間があったことになります。

10下がった回は、いつ前の月の値に戻ったか

3か月後に下がっていた3回について、基準の月の値段にふたたび届いた月を数えました。

出来事基準の月基準の値12か月のうちの底基準の値に戻った月基準の月から
湾岸危機1990年7月1,626円1991年3月(−32.1%)2005年10月183か月
イラク戦争2003年2月1,392円2003年4月(−19.3%)2003年9月7か月
リーマン破綻2008年8月2,934円2008年11月(−20.4%)2009年9月13か月
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戻るまでの長さは、出来事ごとに大きく違います。基準の月の値に戻るまでの間、円建ての金は出来事の前より安いままでした。値段が戻るまでの期間の長さは、金価格の推移の記事の「大きく下がった局面」でも、出来事に限らず数えています。

111つの出来事で、計算をたどる

3か月後の変化が7つの真ん中だった同時多発テロで、表の数字の出し方をたどります。出来事の日付は2001年9月11日なので、基準の月はその前の月の2001年8月です。この月の輸入単価は1グラム1,076円でした。3か月後の2001年11月は1,086円なので、変化は1,086円÷1,076円−1=+0.9%です。

同じ2つの月のドル円(FRBの月平均)は121.37円と122.41円で、変化は+0.9%でした。ドル建ての金は、1グラムの円×31.1034768÷ドル円で、276ドルから276ドルへ、+0.1%です。円建ての変化は、おおよそ「ドル建ての金の変化」と「ドル円の変化」を合わせたものになります((1+0.1%)×(1+0.9%)−1)。

ほかの出来事も、同じ手順で計算しています。基準の月や比べる先の月が除いた月にあたるときだけ、前後の月の値に置きかえました。

12ふだんの3か月・12か月の中での位置

1988年1月以降のすべての月を基準にした3か月後の変化(450通り)と12か月後の変化(438通り)の中で、出来事のあとの変化が下から何%の位置にあるかを出しました。50%なら、ふだんの真ん中くらいの動きです。

出来事3か月後ふだんの中での位置12か月後ふだんの中での位置
湾岸危機−7.3%12%−20.2%3%
同時多発テロ+0.9%48%+9.9%60%
イラク戦争−3.9%23%−0.7%33%
リーマン破綻−20.4%1%−8.6%17%
東日本大震災+8.0%80%+18.2%77%
コロナ+3.9%64%+8.3%56%
ウクライナ侵攻+17.6%95%+16.8%75%
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ふだんの3か月後の変化は、下から1割の境目が−8.5%、上から1割の境目が+13.5%でした。出来事のあとの変化の多くは、この範囲の中に入っています。大きく外れたのは、下に外れた金融危機と、上に外れた回の一部だけです。「有事のあとの金の動き」の多くは、ふだんの値動きの幅の中に収まっていたことになります。

13ドル建ての金とドル円の組み合わせ

3か月後に、ドル建ての金が上がったか下がったか、ドル円が円安か円高かの組み合わせで、7つを分けました。

出来事ドル建ての金ドル円円建ての金
湾岸危機上がった円高−7.3%
同時多発テロ上がった円安+0.9%
イラク戦争下がった円高−3.9%
リーマン破綻下がった円高−20.4%
東日本大震災上がった円高+8.0%
コロナ上がった円高+3.9%
ウクライナ侵攻上がった円安+17.6%
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ドル建ての金とドル円が「円建ての金を同じ向きに動かす」組み合わせ(金が上がって円安、または金が下がって円高)だったのは7回中4回でした。同じ向きのときは円建ての金の動きが大きくなり、反対向きのときは打ち消し合って小さくなります。リーマン破綻は、金が下がって円高という組み合わせで、円建ての金の下がり方がいちばん大きくなりました。ウクライナ侵攻は、金が上がって円安という組み合わせで、上がり方がいちばん大きくなりました。

ウクライナ侵攻のあとの円安には、同じ2022年3月から米国の中央銀行が利上げを始め、日米の金利の差が広がった時期が重なっています。出来事そのものより、同じ時期の金利の動きが為替に効いていたと読めます。

14金が「有事」と結びつけて語られる理由

金が有事に買われると言われる理由として、よく挙げられるのは次のような点です。

一方で、金には利息や配当がなく、持っているだけでは増えません。値段は買う人と売る人の動きだけで決まり、大きく下がることもあります。この記事の数字は、こうした説明が「円建ての金の値段」で実際にどう表れたかを、出来事ごとに確かめたものです。説明どおりに上がった回もあれば、そうでない回もありました。

15出来事の前、金はすでに高かったか

出来事の前に金がすでに高い水準にあったかどうかも、その後の動きに関係しそうです。基準の月の値段が、その前の24か月の最高値と比べてどの位置にあったかを出しました。

出来事基準の値それまで24か月の最高値最高値との差12か月後
湾岸危機1,626円1,889円−13.9%−20.2%
同時多発テロ1,076円1,076円+0.0%+9.9%
イラク戦争1,392円1,392円+0.0%−0.7%
リーマン破綻2,934円3,282円−10.6%−8.6%
東日本大震災3,596円4,235円−15.1%+18.2%
コロナ5,618円5,618円+0.0%+8.3%
ウクライナ侵攻6,709円6,709円+0.0%+16.8%
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基準の月が24か月の最高値の近く(差が3%以内)にあったのは4回(同時多発テロ・イラク戦争・コロナ・ウクライナ侵攻)でした。最高値の近くで出来事を迎えた回と、下がっていたところで迎えた回とで、その後の結果ははっきり分かれてはいません。回数が少ないので、ここから決まった関係は読み取れません。

16上がった・下がったは、見る時点で入れ替わる

1・3・6・12・24か月後のそれぞれで、基準の月より高かった(上)か、低かった(下)かを並べました。右端は、隣どうしで上と下が入れ替わった回数です。

出来事1か月後3か月後6か月後12か月後24か月後入れ替わり
湾岸危機上下下下下1回
同時多発テロ上上上上上0回
イラク戦争下下下下上1回
リーマン破綻下下下下上1回
東日本大震災上上上上上0回
コロナ下上上上上1回
ウクライナ侵攻上上上上上0回
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7つのうち4つは、見る時点によって上と下が入れ替わっていました。「有事に金は上がったか」という問いは、何か月後を見るかを決めないと答えが1つに決まりません。この記事が3か月後を主に使ったのは、出来事のあとの動きがひととおり値に表れる長さとして選んだためで、ほかの長さを選べば数え方は変わります。

17有事のあとに、金の輸入は増えたか

財務省の貿易統計には、金の輸入の量も載っています。出来事の前の12か月の月平均と、出来事の月からの3か月の月平均を比べました(統計品目7108.12の輸入量)。

出来事前の12か月の月平均出来事からの3か月の月平均倍率
湾岸危機18,441kg43,288kg2.35倍
同時多発テロ3,982kg5,501kg1.38倍
イラク戦争4,648kg3,752kg0.81倍
リーマン破綻1,296kg4,665kg3.60倍
東日本大震災882kg643kg0.73倍
コロナ126kg73kg0.58倍
ウクライナ侵攻201kg212kg1.06倍
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7回のうち、出来事のあとの3か月の輸入量が、前の12か月の月平均を上回ったのは4回でした。輸入量は年代によって大きく違い、1990年ごろは月に何トンもあったのに対し、最近は数百キログラムの月もあります。輸入量は国内の業者が海外から仕入れた量で、個人がどれだけ買ったかとは違います。国内で回収された金の取引や、輸出の量は入っていません。

18基準の月から12か月、月ごとの道のり

7つの出来事それぞれについて、基準の月を100としたときの輸入単価を、12か月後まで月ごとに並べました。上の線のグラフを数字で読むための表です(値のない月は「—」)。

月湾岸危機同時多発テロイラク戦争リーマン破綻東日本大震災コロナウクライナ侵攻
基準の月100.0100.0100.0100.0100.0100.0100.0
1か月後104.2102.492.495.5105.796.3102.3
2か月後119.3102.180.785.7108.3108.0109.4
3か月後92.7100.996.179.6108.0103.9117.6
4か月後79.2102.396.282.7109.1106.9112.5
5か月後90.6110.394.383.7114.0113.4115.5
6か月後82.0115.988.590.8116.5117.8113.8
7か月後86.3116.1102.498.9121.5119.4114.6
8か月後67.9118.695.996.3118.0114.6115.6
9か月後88.2119.998.798.3122.1113.7114.1
10か月後82.0113.597.398.6112.6110.6116.0
11か月後88.4112.6101.596.1112.9110.6117.3
12か月後79.8109.999.391.4118.2108.3—
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同じ出来事でも、数か月のうちに100を上回ったり下回ったりしています。たとえば、ある月だけを切り取って「有事に上がった」「下がった」と言うと、選んだ月しだいで答えが変わってしまいます。

19出来事の種類で分けると

7つを、戦争・テロ、金融危機、災害・感染症の3つに分けて、中央値を比べました。それぞれの回数がとても少ないので、傾向というより、出来事ごとの違いを整理するための表です。

種類出来事回数3か月後(円)12か月後(円)3か月後(ドル建ての金)3か月後(ドル円)
戦争・テロ湾岸危機・同時多発テロ・イラク戦争・ウクライナ侵攻4回−1.5%+4.6%+3.4%−0.4%
金融危機リーマン破綻1回−20.4%−8.6%−10.2%−11.3%
災害・感染症東日本大震災・コロナ2回+5.9%+13.2%+8.2%−2.1%
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金融危機のリーマン破綻では、ドル建ての金そのものが下がりました。このときの金は、「有事に買われる」側にはなっていなかったことになります。災害・感染症の2回は、どちらも3か月後・12か月後ともに上がっていました。戦争・テロの4回は、上がった回と下がった回が分かれています。

20ニュースを見てから買っていたら

出来事を知ってから金を買う人は、出来事の前の月ではなく、出来事の翌月に買うことになります。翌月の値段から12か月後までの変化を、前の月を基準にした12か月後と並べました(翌月や12か月後が除いた月のときは、その次の月)。

出来事前の月→12か月後買った月(翌月)翌月→12か月後
湾岸危機−20.2%1990年9月−26.5%
同時多発テロ+9.9%2001年10月+11.7%
イラク戦争−0.7%2003年4月+24.1%
リーマン破綻−8.6%2008年10月+17.0%
東日本大震災+18.2%2011年4月+10.0%
コロナ+8.3%2020年4月+1.5%
ウクライナ侵攻+16.8%2022年3月+11.4%
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翌月に買った場合、12か月後に上がっていたのは7回中6回でした。前の月を基準にした場合より結果がよかったのは3回です。出来事のあとにすでに値段が動いていると、その後に買った人は、その動きを取れません。出来事の直後に下がった回では、逆に翌月のほうが安く買えたことになります。

21米国の国債の利回りは、どう動いたか

世界の金の値段は、米国の金利とあわせて語られることがよくあります。米国財務省が公表する10年国債の利回りが、同じ出来事の前後でどう動いたかを並べました(各月の最後の営業日)。右端は、前の節の日本の10年国債の3か月後の変化です。

出来事米国10年債(基準の月)3か月後の変化12か月後の変化日本10年債:3か月後の変化
湾岸危機8.36%+0.29ポイント−0.16ポイント+0.42ポイント
同時多発テロ4.85%−0.07ポイント−0.71ポイント+0.03ポイント
イラク戦争3.71%−0.34ポイント+0.28ポイント−0.25ポイント
リーマン破綻3.83%−0.90ポイント−0.43ポイント±0.00ポイント
東日本大震災3.42%−0.37ポイント−1.44ポイント−0.10ポイント
コロナ1.13%−0.48ポイント+0.31ポイント+0.16ポイント
ウクライナ侵攻1.79%+1.10ポイント+1.73ポイント+0.04ポイント
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3か月後に米国の10年国債の利回りが下がっていたのは7回中5回でした。米国の利回りが下がるとドルが売られやすく、ドル円では円高の向きに働くことがあります。このとき、ドル建ての金が上がっても、円高でその分が打ち消されます。前の節で見た「有事の円高」は、こうした金利の動きとも重なっていました。

米国の国債は、日本に住む人が買うと、利息も元本もドルで受け取ります。円で見た結果は、金と同じようにドル円で変わります。日米の金利の差とドル円の関係は日米の金利差の記事でまとめています。

22湾岸危機の前の値段に戻るまで

7つのうち、基準の月の値段に戻るまでがいちばん長かったのは湾岸危機です。基準の1990年7月は1グラム1,626円で、その値段にふたたび届いたのは2005年10月でした(183か月後)。

湾岸危機の直後、ドル建ての金は一度上がりました。しかし基準の月から1999年の平均までに、ドル建ての金は−17.0%、ドル円は−23.7%動き、円建ての金は−36.8%になりました。出来事の直後の値上がりは、その後の長い下落の中では小さな動きだったことになります。出来事のあとの数か月の動きと、その後の何年もの動きは、別のものとして見る必要があります。

23出来事の月の動きは、ふだんより大きかったか

出来事が起きた月の輸入単価は、前の月からどれだけ動いたか。1988年1月以降のすべての月の「前の月からの変化」(452か月)の中で、何%の位置にあるかを出しました。50%が真ん中で、90%なら上から1割、10%なら下から1割に入る大きな動きです。

出来事出来事の月前の月からの変化すべての月の中での位置
湾岸危機1990年8月+4.2%79%
同時多発テロ2001年9月+2.4%69%
イラク戦争2003年3月−7.6%6%
リーマン破綻2008年9月−4.5%16%
東日本大震災2011年3月+5.7%85%
コロナ2020年3月−3.7%19%
ウクライナ侵攻2022年2月+2.3%67%
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上下それぞれ1割に入る大きな動きだったのは、7回中1回でした。月の平均値なので、出来事の日の前後の動きは薄まります。それでも、出来事の月の多くは、ふだんの月と大きく違う動きにはなっていません。

24国債の利回りは、どう動いたか

このサイトは投資先を国債と比べています。同じ出来事の前後で、財務省の10年国債の利回りがどう動いたかを並べました(基準の月・3か月後・12か月後の各月の最後の営業日)。

出来事基準の月3か月後変化12か月後変化
湾岸危機7.023%7.441%+0.42ポイント6.516%−0.51ポイント
同時多発テロ1.328%1.355%+0.03ポイント1.144%−0.18ポイント
イラク戦争0.786%0.538%−0.25ポイント1.243%+0.46ポイント
リーマン破綻1.421%1.419%±0.00ポイント1.330%−0.09ポイント
東日本大震災1.266%1.169%−0.10ポイント0.977%−0.29ポイント
コロナ-0.153%0.009%+0.16ポイント0.168%+0.32ポイント
ウクライナ侵攻0.177%0.220%+0.04ポイント0.511%+0.33ポイント
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3か月後に10年国債の利回りが下がっていたのは7回中3回でした。利回りが下がると、すでに持っている国債の値段は上がります。金と国債はどちらも「有事に買われる」と言われることがありますが、円建ての金は下がり、国債の利回りも下がった(国債の値段は上がった)出来事もありました。

個人向け国債や、満期まで持つ国債では、途中の値段の動きは受け取る額に関係しません。満期まで持てば、額面と決まった利息が戻ります。金は満期がないので、売るときの値段がそのまま結果になります。国債の利回りの長い推移は金利が上がると個人向け国債はどうなるかでも扱っています。

25物価で直すと

12か月のあいだに物価も動いています。12か月後の変化を、消費者物価指数(総合)で直しました。

出来事12か月後(名目)その間の物価12か月後(物価で直す)
湾岸危機−20.2%+3.5%−22.9%
同時多発テロ+9.9%−0.9%+11.0%
イラク戦争−0.7%+0.0%−0.7%
リーマン破綻−8.6%−2.2%−6.6%
東日本大震災+18.2%+0.4%+17.8%
コロナ+8.3%−0.6%+8.9%
ウクライナ侵攻+16.8%+3.7%+12.7%
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多くの出来事では、12か月の物価の動きは小さく、名目と物価で直した値の差は小さくなっています。物価が大きく動いた2022年は、その差が少し開きます。金と物価の関係は金はインフレに強いかで、年ごとに詳しく比べています。

26参考:ほかの出来事

7つのほかに、金の話で挙がることのある出来事についても、同じ方法で比べました。

出来事日付基準の月1か月後3か月後6か月後12か月後24か月後
湾岸戦争の開戦1991年1月17日1990年12月−9.5%−25.0%−2.4%+0.4%−14.1%
アジア通貨危機1997年7月2日1997年6月−6.0%−2.6%−6.0%+2.0%−19.8%
英国のEU離脱の国民投票2016年6月23日2016年5月+3.1%+2.5%−0.4%+4.8%+5.4%
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出来事何が起きたか
湾岸戦争の開戦多国籍軍がイラクへの攻撃を開始
アジア通貨危機タイがバーツを変動相場制に移行
英国のEU離脱の国民投票英国の国民投票で離脱が多数
イスラエルとハマスハマスがイスラエルを攻撃

イスラエルとハマス(2023年10月7日)は、前の月の輸入単価が相場と合わないとして除いた月にあたり、同じ基準で比べられないため、表に入れていません。

湾岸戦争の開戦(1991年1月17日):基準の1990年12月は1グラム1,472円。3か月後−25.0%(ドル建ての金−26.9%・ドル円+2.6%)、12か月後+0.4%でした。

アジア通貨危機(1997年7月2日):基準の1997年6月は1グラム1,277円。3か月後−2.6%(ドル建ての金−7.9%・ドル円+5.8%)、12か月後+2.0%でした。

英国のEU離脱の国民投票(2016年6月23日):基準の2016年5月は1グラム4,299円。3か月後+2.5%(ドル建ての金+10.2%・ドル円−7.0%)、12か月後+4.8%でした。

7つに参考の出来事を加えた10回でまとめると、3か月後に上がっていたのは10回中5回、12か月後は10回中7回でした。数を増やしても、「上がった回」と「下がった回」の両方がある形は変わりません。

湾岸戦争の開戦は、前の年の湾岸危機から5か月ほど後の出来事です。基準の月がすでに湾岸危機のあとなので、2つの出来事の結果は重なって読む必要があります。

27出来事ごとに見る

7つの出来事を1つずつ、数字で振り返ります。

湾岸危機(1990年8月2日):基準の1990年7月は1グラム1,626円。1か月後+4.2%、3か月後−7.3%、12か月後−20.2%でした。3か月後のドル建ての金は+6.6%、ドル円は−13.0%で、世界の金の値段は上がったのに、円高で円の値段は下がりました。基準の月までの3か月では−8.6%動いていて、基準の月から12か月のうち最も高かったのは1990年9月(+19.3%)、最も低かったのは1991年3月(−32.1%)です。24か月後は−16.9%でした。同じ3か月で、日本の10年国債の利回りは7.023%から7.441%へ動いています。

同時多発テロ(2001年9月11日):基準の2001年8月は1グラム1,076円。1か月後+2.4%、3か月後+0.9%、12か月後+9.9%でした。3か月後のドル建ての金は+0.1%、ドル円は+0.9%で、ドル建ての金の値上がりに円安が重なりました。基準の月までの3か月では+2.2%動いていて、基準の月から12か月のうち最も高かったのは2002年5月(+19.9%)、最も低かったのは2001年11月(+0.9%)です。24か月後は+14.5%でした。同じ3か月で、日本の10年国債の利回りは1.328%から1.355%へ動いています。

イラク戦争(2003年3月20日):基準の2003年2月は1グラム1,392円。1か月後−7.6%、3か月後−3.9%、12か月後−0.7%でした。3か月後のドル建ての金は−2.3%、ドル円は−1.7%で、ドル建ての金の下落に円高が重なりました。基準の月までの3か月では+11.3%動いていて、基準の月から12か月のうち最も高かったのは2003年9月(+2.4%)、最も低かったのは2003年4月(−19.3%)です。24か月後は+0.2%でした。同じ3か月で、日本の10年国債の利回りは0.786%から0.538%へ動いています。

リーマン破綻(2008年9月15日):基準の2008年8月は1グラム2,934円。1か月後−4.5%、3か月後−20.4%、12か月後−8.6%でした。3か月後のドル建ての金は−10.2%、ドル円は−11.3%で、ドル建ての金の下落に円高が重なりました。基準の月までの3か月では+1.4%動いていて、基準の月から12か月のうち最も高かったのは2009年3月(−1.1%)、最も低かったのは2008年11月(−20.4%)です。24か月後は+10.6%でした。同じ3か月で、日本の10年国債の利回りは1.421%から1.419%へ動いています。

東日本大震災(2011年3月11日):基準の2011年2月は1グラム3,596円。1か月後+5.7%、3か月後+8.0%、12か月後+18.2%でした。3か月後のドル建ての金は+9.9%、ドル円は−1.7%で、円建ての金の値上がりは、主にドル建ての金の値上がりによるものでした。基準の月までの3か月では−15.1%動いていて、基準の月から12か月のうち最も高かったのは2011年11月(+22.1%)、最も低かったのは2011年3月(+5.7%)です。24か月後は+38.4%でした。同じ3か月で、日本の10年国債の利回りは1.266%から1.169%へ動いています。

コロナ(2020年3月11日):基準の2020年2月は1グラム5,618円。1か月後−3.7%、3か月後+3.9%、12か月後+8.3%でした。3か月後のドル建ての金は+6.6%、ドル円は−2.6%で、円建ての金の値上がりは、主にドル建ての金の値上がりによるものでした。基準の月までの3か月では+10.8%動いていて、基準の月から12か月のうち最も高かったのは2020年9月(+19.4%)、最も低かったのは2020年3月(−3.7%)です。24か月後は+22.2%でした。同じ3か月で、日本の10年国債の利回りは-0.153%から0.009%へ動いています。

ウクライナ侵攻(2022年2月24日):基準の2022年1月は1グラム6,709円。1か月後+2.3%、3か月後+17.6%、12か月後+16.8%でした。3か月後のドル建ての金は+6.8%、ドル円は+10.1%で、ドル建ての金の値上がりに円安が重なりました。基準の月までの3か月では+1.8%動いていて、基準の月から12か月のうち最も高かったのは2022年4月(+17.6%)、最も低かったのは2022年2月(+2.3%)です。24か月後は+43.0%でした。同じ3か月で、日本の10年国債の利回りは0.177%から0.220%へ動いています。

金融の危機(リーマン破綻)では、ドル建ての金が下がり、円高も重なって、円建ての金は大きく下がりました。一方、災害や感染症の広がり(東日本大震災・コロナ)では、数か月から1年のあいだに金は上がっています。出来事の種類によって、金の動き方は一様ではありませんでした。

28円建ての金を持つ人が、有事のときに見ておくこと

  1. ドル円も一緒に見る。この記事の7回では、ドル建ての金が上がっても、円高で円建ての値段が下がった回がありました。ニュースで「金が上がった」と聞いたときは、それがドル建ての話か、円建ての話かを確かめます。
  2. 何か月後の話かを決める。同じ出来事でも、1か月後と12か月後で上がったか下がったかが入れ替わりました。自分が持つつもりの期間で数字を見ます。
  3. 買値と売値の差を入れる。店頭で金を買うときは、売るときより高い値段になり、手数料がかかることもあります。数%の値動きは、この差で消えることがあります。
  4. ふだんの動きの幅を知っておく。この記事では、ふだんの3か月でも上下に10%以上動く時期がありました。出来事のあとの動きが、その幅の中か外かで受け止め方が変わります。

29この比べ方で分からないこと

30自分で確かめる手順

  1. 出来事の日付を決める。報道や公的機関の発表で、出来事が起きた日を確かめます。
  2. 基準の月を決める。月ごとの値を使うなら、出来事の月の前の月を基準にすると、出来事の前と後がまざりません。
  3. 金の値を取る。財務省の貿易統計で、統計品目7108.12(加工していない金)の輸入の数量と金額を取り、金額÷数量で1グラムあたりの値段を出します。相場と合わない月は除きます。
  4. ふだんの月と比べる。出来事のあとに上がっていても、ふだんの月でも同じくらい上がっていれば、出来事のせいとは言えません。すべての月で同じ計算をして比べます。
  5. ドル建ての金とドル円に分ける。FRBのドル円の月平均で割ると、世界の金の値段の動きと、為替の動きに分けられます。

31この記事に出てくる言葉

有事
戦争・テロ・大きな災害・金融危機など、社会や市場に大きな不安が広がる出来事。決まった定義はありません。
有事の金
大きな出来事のときに金が買われ、値段が上がりやすいという言い方。この記事は、それが円建ての金の値段で実際にどうだったかを確かめたものです。
有事の円高
大きな出来事のときに円が買われ、円高になりやすいという言い方。円高は、円建ての金の値段を下げる向きに働きます。
基準の月
この記事で100とした月。出来事が起きた月の前の月です。
パンデミック
感染症が世界中で同時に大きく広がること。WHOは2020年3月11日に、新型コロナウイルスの広がりをこう表しました。
円高・円安
1ドルと交換できる円が少なくなるのが円高、多くなるのが円安。ドル円の数字が下がれば円高です。
10年国債の利回り
財務省が公表する、残りの期間が10年の国債の利回り。利回りが下がると、すでにある国債の値段は上がります。

32よくある質問

有事には金が上がるのですか。

この記事の7つの出来事では、前の月を基準にした3か月後に、4回は上がり、3回は下がっていました。ドル建ての金は5回上がっていました。円建ての金が下がった3回のうち1回は円高が、2回はドル建ての金そのものの下落が主な理由です。

いちばん下がったのは、どの出来事ですか。

3か月後ではリーマン破綻の−20.4%でした。12か月後では湾岸危機の−20.2%です。

有事のあとに金を買うと、得をしたのですか。

出来事の前の月を基準にした12か月後は、7回中4回が上がっていました。ただし、12か月のあいだに一度も基準の月を下回らなかったのは3回で、多くの出来事では途中で値段が下がる時期がありました。過去の記録で、これからも同じとは言えません。

なぜ円建ての金とドル建ての金で結果が違うのですか。

円建ての金の値段は、ドル建ての金の値段とドル円の掛け算だからです。出来事のあとに円高が進むと、ドル建ての金が上がっても、円建ての金の値段は上がりにくくなります。

国債は有事にどうなりましたか。

この記事の7つの出来事では、3か月後に10年国債の利回りが下がっていたのが3回でした。利回りが下がると、すでにある国債の値段は上がります。満期まで持つ国債では、途中の値段にかかわらず、満期に額面が戻ります。

出来事のあとに買っても間に合いますか。

出来事の翌月に買って12か月後と比べると、7回中6回が上がっていました。前の月を基準にした場合より結果がよかったのは3回です。出来事の直後にどう動くかは回ごとに違い、過去の記録からは決まった答えは出ません。

戦争のときと金融危機のときで、違いはありましたか。

この記事の7回では、金融危機のリーマン破綻はドル建ての金も下がり、円高も重なって大きく下がりました。災害・感染症の2回は上がり、戦争・テロの4回は上がった回と下がった回に分かれました。回数が少ないので、種類ごとの決まった傾向とまでは言えません。

有事のあとの金の動きは、ふだんより大きかったのですか。

3か月後の変化を、1988年1月以降のすべての月の3か月後の変化と比べると、多くの出来事はふだんの値動きの幅(下から1割の−8.5%から上から1割の+13.5%まで)の中に入っていました。大きく外れたのは一部の出来事だけです。

有事に備えて金を持つ意味はありますか。

この記事は、金を持つべきかどうかを判断するものではありません。数字の上では、7つの出来事のあとに円建ての金が上がった回と下がった回の両方があり、為替の動きで結果が大きく変わりました。持つかどうかは、ほかの資産との組み合わせや、持つ期間で考えることになります。

コロナの日付に、WHOの表明の日を使ったのはなぜですか。

感染の広がりには、はっきりした1日がないためです。この記事では、WHOが新型コロナウイルスの広がりをパンデミックと表明した2020年3月11日を、だれでも確かめられる日付として使いました。別の日を選べば、基準の月が変わり、結果も変わります。

出来事の前の月を基準にすると、出来事の前の動きが入りませんか。

入ります。基準の月は出来事の前の月なので、そこまでの値動きは結果に入りません。そのぶん「出来事の前の3か月・6か月」の表で、基準の月までに金がすでに動いていたかを別に示しています。

なぜ1か月後ではなく、3か月後で数えたのですか。

月ごとの値なので、1か月後では出来事の前後の値がまざり、出来事のあとの動きがまだ十分に表れていないことがあるためです。表には1・6・12・24か月後も載せています。何か月後で見るかによって、上がった回と下がった回の数は変わります。

24か月後には、ほとんど上がっていたのはなぜですか。

金の輸入単価は1988年1月から年あたり平均6.5%のペースで上がってきたため、出来事に関係なく、長く持つほど「前より高い」回が増えます。ふだんの月でも、24か月後に高かった割合は67%でした。

有事のあと、国債と金のどちらが値上がりしましたか。

この記事は国債の値段そのものを計算していませんが、3か月後に日本の10年国債の利回りが下がった(すでにある国債の値段が上がった)のは7回中3回でした。円建ての金が3か月後に上がったのは4回です。国債を満期まで持つ場合は、途中の値段にかかわらず額面が戻ります。

有事のあとに、金を買う人は増えたのですか。

個人が買った量の統計は、この記事では使っていません。財務省の貿易統計の金の輸入量で見ると、出来事のあとの3か月の月平均が前の12か月の月平均を上回ったのは7回中4回でした。輸入量は業者の仕入れの量で、個人の買いとは違います。

日ごとの値段で見ると、結果は変わりますか。

変わる可能性があります。この記事は財務省の月ごとの輸入単価を使っているので、出来事の当日や数日の値動きは分かりません。日ごとの値段では、出来事の直後に大きく上がったり下がったりした動きが、もっとはっきり見えるはずです。

33この記事の数字は、どこから取ったか

出来事の日付は、次のよく知られた日付を使いました:湾岸危機=1990年8月2日、同時多発テロ=2001年9月11日、イラク戦争=2003年3月20日、リーマン破綻=2008年9月15日、東日本大震災=2011年3月11日、コロナ=2020年3月11日、ウクライナ侵攻=2022年2月24日、湾岸戦争の開戦=1991年1月17日、アジア通貨危機=1997年7月2日、英国のEU離脱の国民投票=2016年6月23日、イスラエルとハマス=2023年10月7日。

輸入単価は商社などが海外から仕入れた金の平均の値段で、店頭で個人が払う値段(手数料・消費税込み)とは違います。この記事は、金や国債の売り買い、特定の商品・業者をすすめるものではありません。過去の出来事のあとの値動きは、これからの値動きを示しません。

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