011社に集中したときと、分けたときの違いを数字で出す
分散の効果を、「1社がゼロになったとき」で計算します。100万円を投資に回した場合です。
| 配分 | 1社あたり | 1社がゼロ | 2社がゼロ | 3社がゼロ |
|---|---|---|---|---|
| 1社に均等 | 1,000,000円 | ▲1,000,000円(100%) | — | — |
| 2社に均等 | 500,000円 | ▲500,000円(50%) | ▲1,000,000円(100%) | — |
| 3社に均等 | 333,333円 | ▲333,333円(33%) | ▲666,666円(66%) | ▲1,000,000円(100%) |
| 5社に均等 | 200,000円 | ▲200,000円(20%) | ▲400,000円(40%) | ▲600,000円(60%) |
| 10社に均等 | 100,000円 | ▲100,000円(10%) | ▲200,000円(20%) | ▲300,000円(30%) |
| 20社に均等 | 50,000円 | ▲50,000円(5%) | ▲100,000円(10%) | ▲150,000円(15%) |
ただし全損は、実際にはまれです。部分的な元本割れのほうが多くなります。そちらでも計算します。
| 配分 | 1件が30%の元本割れ | 3件が30%ずつ | 全件が10%ずつ |
|---|---|---|---|
| 1社に均等 | ▲300,000円 | ▲300,000円 | ▲100,000円 |
| 3社に均等 | ▲99,999円 | ▲300,000円 | ▲100,000円 |
| 5社に均等 | ▲60,000円 | ▲180,000円 | ▲100,000円 |
| 10社に均等 | ▲30,000円 | ▲90,000円 | ▲100,000円 |
最後の列が重要です。全件に同じ要因が効けば、分散しても損失は変わりません。これが分散の限界です。
02利回りの側でも計算する
分散は損を抑えますが、利益も平均化されます。両方を見ます。
| 配分 | 全件が想定どおり(年6%) | 1件が全損、残りは6% | 2件が全損、残りは6% |
|---|---|---|---|
| 1社に均等 | +60,000円 | -1,000,000円 | — |
| 2社に均等 | +60,000円 | -470,000円 | -1,000,000円 |
| 3社に均等 | +60,000円 | -293,333円 | -646,666円 |
| 5社に均等 | +60,000円 | -152,000円 | -364,000円 |
| 10社に均等 | +60,000円 | -46,000円 | -152,000円 |
| 20社に均等 | +60,000円 | +7,000円 | -46,000円 |
10社に分けて1社が全損すると、年間の収支は-46,000円。利回り6%では、1社の全損を埋められません。
| 何年で取り戻せるか | 1社全損(10社分散) | 1社全損(5社分散) | 1社全損(3社分散) |
|---|---|---|---|
| 年3%の利回りなら | 3.7年 | 8.3年 | 16.7年 |
| 年4%の利回りなら | 2.8年 | 6.2年 | 12.5年 |
| 年5%の利回りなら | 2.2年 | 5.0年 | 10.0年 |
| 年6%の利回りなら | 1.9年 | 4.2年 | 8.3年 |
| 年8%の利回りなら | 1.4年 | 3.1年 | 6.2年 |
| 年10%の利回りなら | 1.1年 | 2.5年 | 5.0年 |
この表が、分散がなぜ重要かをいちばんよく表しています。3社に分けて1社が全損すると、年6%でも取り戻すのに8年以上かかります。10社なら2年弱です。
03社数を増やすことの限界
分ければ分けるほどよいわけではありません。効果は頭打ちになり、負担は増え続けます。
| 社数 | 1社全損の影響 | 効果の増分 | 管理の負担 | 評価 |
|---|---|---|---|---|
| 1社 | 100% | — | 軽い | 危険 |
| 2社 | 50% | ▲50pt | 軽い | まだ集中 |
| 3社 | 33% | ▲17pt | 軽い | 最低限 |
| 5社 | 20% | ▲13pt | 中 | 推奨 |
| 10社 | 10% | ▲10pt | 重い | 管理できるなら |
| 20社 | 5% | ▲5pt | かなり重い | 負担が上回る |
| 30社 | 3.3% | ▲1.7pt | 非現実的 | 推奨しない |
3列目の「効果の増分」を見てください。5社から10社に増やしても、影響は20%から10%に下がるだけです。10社から20社なら、10%から5%。効果は急速に小さくなります。
| 社数が増えると増えるもの | 10社の場合 |
|---|---|
| 口座の数 | 10個 |
| ログイン情報 | 10通り |
| 年間取引報告書 | 10通を集める |
| 確定申告の入力 | 10社ぶんの内訳 |
| メールの通知 | 10社から |
| 相続のときの手続き先 | 10社 |
04分散の軸を、社数以外にも広げる
社数だけが分散ではありません。同じ要因で動かないものを組み合わせるのが分散です。
| 軸 | 分けると何が分かれるか | 効果の大きさ |
|---|---|---|
| 事業者 | 事業者の破綻のリスク | 大きい |
| 種別 | 元本が減る原因そのもの | 大きい |
| 物件・案件の型 | 空室、売却、返済など個別の要因 | 中くらい |
| 満了の時期 | 同じ時期に全部が償還されるのを防ぐ | 中くらい |
| 地域 | 地域の市況 | 小さい(不動産型どうしなら市況は共通) |
| 金額を時期で分ける | 出すタイミングの偏りを防ぐ | 中くらい |
5行目に注意してください。地域で分けても、不動産型どうしなら不動産市況の影響は共通です。分散の効果は、地域より種別のほうがずっと大きくなります。
4行目の「満了の時期」も見落とされます。同じ時期に全部が償還されると、そのタイミングで全額を次の案件に移す判断を迫られます。出す時期をずらしておくと、この集中を避けられます。
05実際の配分の決め方
金額と社数を決める手順です。
- 投資型クラウドファンディングに回す総額を決める。生活防衛資金とNISA・iDeCoのあと、余る資金の中から。
- 1社あたりの上限を決める。総額の20%を超えない、という形が分かりやすい。これを先に決めることが重要です。
- 4〜6社を選ぶ。種別を2つ以上混ぜる。
- 各社で最低投資額から始める。使い勝手と報告の量を確かめてから増やす。
- 満了の時期をずらす。同じ月に集中させない。
- 管理表で総額と社数を把握する。月に5分で足ります。
- 上限に達したら、それ以上出さない。好調な事業者に寄せたくなるのを防ぐ。
2行目と7行目が対になっています。上限を先に決めて、それを守る。案件を見てから金額を決めると、「この案件は良さそうだから多めに」の積み重ねで気づかないうちに集中します。
過去の事故で被害の大きさを決めたのは、事業者の悪質さではなく1人がその1社にいくら入れていたかでした。これは投資家の側で完全にコントロールできる部分です。
06よくある質問
いくらから始められますか。
最低投資額は事業者によって違い、中央値は1万円です。1万円から出せる事業者が多くあります。
確定申告は必要ですか。
給与所得者で、給与以外の所得の合計が年20万円以下なら所得税の申告は不要です。ただし住民税の申告は別に必要になることがあります。
何社に分けるのがよいですか。
4社から6社が、分散の効果と管理の手間の釣り合う範囲です。10社を超えると確定申告の書類集めが重くなります。
元本は保証されますか。
されません。どの種別にも公的な元本補償の仕組みはありません。
07この記事の数字は、どこから取ったか
会社名を挙げて処分や事故を書くにあたっては、照合を法人番号の完全一致に限りました。社名の部分一致で突き合わせると、似た社名の別会社の記録を拾ってしまいます。当サイトが実際に試したところ、82件が一致したように見えてそのほとんどが別会社でした。
できていないことも書きます。不動産特定共同事業者への監督処分は国土交通省・都道府県の所管で、この事例集には含まれていません。また償還後の実績は、事業型を除いてどの事業者も公表していないため、不動産型・融資型については「戻らなかった件数」を外から数えられません。
数字はいずれも元本を保証するものではなく、この記事は特定の商品の勧誘ではありません。

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