011社に集中させた結果が、過去の事故で何を決めたか
投資型クラウドファンディングで過去に起きた事故を振り返ると、被害の大きさを決めたのは事業者の悪質さではなく、1人がその1社にいくら入れていたかでした。
| 同じ事故が起きたとき | 1社に100万円 | 5社に20万円ずつ | 10社に10万円ずつ |
|---|---|---|---|
| その1社が全損 | ▲100万円(100%) | ▲20万円(20%) | ▲10万円(10%) |
| 残った資金 | 0円 | 80万円 | 90万円 |
| 年6%で取り戻すのに要する期間 | — | 約4.2年 | 約1.9年 |
| 投資を続けられるか | 難しい | 続けられる | 続けられる |
4行目が実務では効きます。損の額より、「続けられるかどうか」が結果を分けます。1社で全額を失えば、多くの人はそこでやめます。
02集中が起きる理由
誰も最初から集中させようとは思いません。気づかないうちに集中しているのが普通です。起きる過程を並べます。
| 段階 | 起きること | そのときの気持ち |
|---|---|---|
| 1 | 1社で口座を作り、少額で試す | 様子見 |
| 2 | 問題なく償還される | 「ちゃんと戻った」 |
| 3 | 同じ事業者で金額を増やす | 「ここは大丈夫そう」 |
| 4 | 案件が出るたびに申し込む | 「機会を逃したくない」 |
| 5 | 償還された資金を同じ事業者に戻す | 「回転させたい」 |
| 6 | 気づくと総額の大半が1社に | 集中している自覚がない |
3行目と5行目が、集中を作る2つの動きです。実績があることと、将来がうまくいくことは別ですが、実績を見ると増やしたくなります。
そして「回転させたい」という気持ち。償還された資金を遊ばせたくないので、同じ事業者の次の案件に出す。これが一番自然な動きで、いちばん集中を作ります。
03集中しているかを、自分で確かめる
月に5分でできる確認です。管理表に総額と社数を書いておけば、見るだけで分かります。
| 確かめる数字 | 計算 | 注意が要る水準 |
|---|---|---|
| 1社あたりの割合 | その事業者の金額 ÷ 総額 | 30%を超えたら注意 |
| 上位1社の割合 | 最大の事業者 ÷ 総額 | 同上 |
| 上位2社の合計 | — | 60%を超えたら注意 |
| 社数 | — | 3社未満なら集中 |
| 種別の数 | — | 1種別だけなら、種別のリスクが残る |
| 同じ借り手・同じ用途の重複 | — | 案件を分けても、対象が同じなら分散にならない |
最後の行が見落とされます。融資型で同じ借り手に複数の案件で貸していれば、それは1社に集中しているのと同じです。不動産型でも、同じ地域の同じ用途の物件ばかりなら分散にはなりません。
| 見た目の分散 | 実際の集中 |
|---|---|
| 5件に分けた | 全部が同じ事業者 |
| 3社に分けた | 全部が不動産型 |
| 融資型で10件に分けた | 借り手が同じ企業グループ |
| 不動産型で8件に分けた | 全部が同じエリアの区分マンション |
| 種別を混ぜた | 融資型の借り手が不動産事業者 |
04集中を防ぐ、実務的な仕組み
気持ちで防ぐのは難しいので、仕組みで防ぎます。
| 仕組み | やり方 | 効き方 |
|---|---|---|
| 1社あたりの上限を先に決める | 総額の20〜25%を超えない | いちばん効く。案件を見る前に決める |
| 社数の下限を決める | 最低4社 | 1社の影響が25%以下になる |
| 種別の数を決める | 最低2種別 | 要因が分かれる |
| 上限に達したら申し込まない | — | 好調な事業者に寄せるのを防ぐ |
| 償還された資金を別の事業者に回す | — | 回転による集中を防ぐ |
| 月に一度、管理表で確かめる | — | 気づける |
1行目が決定的です。上限を先に決める。案件を見てから金額を決めると、「この案件は条件がいいから多めに」の積み重ねで必ず集中します。
上限は金額で決めるのが分かりやすい。「A社は最大30万円まで」と決めておけば、いい案件が出ても30万円を超えて出すことはありません。
05それでも集中させたくなったときに
特定の事業者が明らかに条件がよいと感じることはあります。そのときに確かめることを並べます。
| 自分に聞くこと | 答えが「いいえ」なら |
|---|---|
| その事業者の何を確かめたか | 実績以外に確かめていないなら、判断ではなく印象 |
| 過去の実績は、何件の償還に基づくか | 件数が少なければ、まだ試されていない |
| その事業者がいつから運営しているか | 短ければ、相場の1サイクルを経ていない |
| 同じ条件の他社を見たか | 比べていなければ、条件がよいかどうか分からない |
| この事業者が止まったら、いくら失うか | 答えられないなら、管理できていない |
| その額を失っても投資を続けられるか | 続けられないなら、金額が大きすぎる |
5行目と6行目が本質です。「この事業者が止まったらいくら失うか」を即答できない状態が、すでに危険です。
過去に事故を起こした事業者も、その直前まで「元本割れ実績なし」「償還率100%」と書いていました。実績は、将来を保証するものではありません。そして、投資家が完全にコントロールできるのは1社あたりの金額だけです。
06よくある質問
いくらから始められますか。
最低投資額は事業者によって違い、中央値は1万円です。1万円から出せる事業者が多くあります。
確定申告は必要ですか。
給与所得者で、給与以外の所得の合計が年20万円以下なら所得税の申告は不要です。ただし住民税の申告は別に必要になることがあります。
何社に分けるのがよいですか。
4社から6社が、分散の効果と管理の手間の釣り合う範囲です。10社を超えると確定申告の書類集めが重くなります。
元本は保証されますか。
されません。どの種別にも公的な元本補償の仕組みはありません。
07この記事の数字は、どこから取ったか
会社名を挙げて処分や事故を書くにあたっては、照合を法人番号の完全一致に限りました。社名の部分一致で突き合わせると、似た社名の別会社の記録を拾ってしまいます。当サイトが実際に試したところ、82件が一致したように見えてそのほとんどが別会社でした。
できていないことも書きます。不動産特定共同事業者への監督処分は国土交通省・都道府県の所管で、この事例集には含まれていません。また償還後の実績は、事業型を除いてどの事業者も公表していないため、不動産型・融資型については「戻らなかった件数」を外から数えられません。
数字はいずれも元本を保証するものではなく、この記事は特定の商品の勧誘ではありません。

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