01クーリング・オフは、すべての契約に使えるわけではない
一定の期間内なら理由を問わず契約を解除できる制度です。ただし適用される契約は法令で限定されています。投資型クラウドファンディングで使えるかどうかは、種別と契約の形によります。
| 種別 | クーリング・オフ | 根拠 | 期間 |
|---|---|---|---|
| 不動産型(不動産特定共同事業契約) | 適用される | 不動産特定共同事業法 | 契約成立時書面を受け取った日から起算して8日間 |
| 融資型(匿名組合出資) | 原則として適用されない | 金商法のクーリング・オフは投資顧問契約が対象 | — |
| 事業型(匿名組合出資) | 同上 | 同上 | — |
| 株式投資型(株式の取得) | 同上 | 同上 | — |
| 投資顧問契約(参考) | 適用される | 金商法 | 10日間 |
1行目が重要です。不動産特定共同事業契約には、法律上のクーリング・オフがあります。契約成立時書面を受け取った日から8日以内なら、書面で解除できます。
一方、金商法の枠で行われる融資型・事業型・株式投資型には、この制度がありません。金商法のクーリング・オフは投資顧問契約を対象にしたもので、有価証券の売買には適用されないためです。
02不動産型のクーリング・オフを、実際に使うには
制度としてあるので、使い方を具体的に書きます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 起算日 | 契約成立時書面を受け取った日から起算して8日間 |
| 方法 | 書面(または電磁的方法)で行う。口頭では不可 |
| 効力の発生 | 発信した時点(到達ではない) |
| 返還 | 受け取った金銭は返還される |
| 違約金 | 請求されない |
| 投資家が負担する費用 | 原則としてなし |
| 特約 | 投資家に不利な特約は無効 |
3行目の「発信した時点」が重要です。8日目に発送すれば、相手に届くのが9日目でも有効です。記録が残る方法(書留、内容証明、または事業者が定める電磁的方法)で送ってください。
ただし実務上、この制度を使う場面は多くありません。オンラインで自分で調べて申し込む形では、「勧誘されて冷静さを失った」という状況が生じにくいためです。制度はもともと、対面での勧誘を想定して作られています。
03金商法の商品に、なぜクーリング・オフがないのか
制度の考え方を整理します。
| クーリング・オフがある契約の特徴 | 投資型CF(金商法)の場合 |
|---|---|
| 不意打ち的な勧誘を受ける | 自分で調べて申し込む形が中心 |
| 継続的な役務の提供 | 一度の出資で完結する |
| 価格が変動しない | 価格が変動する |
| 解除しても他者に影響しない | 他の投資家や発行会社に影響する |
3行目と4行目が理由です。価格が変動する商品にクーリング・オフを認めると、「値下がりしたら解除する」ことが可能になります。これは他の投資家との公平を欠きます。
不動産特定共同事業契約にクーリング・オフがあるのは、この商品がもともと対面での勧誘を想定していたためです。1995年の立法時にはインターネットでの募集はありませんでした。
04クーリング・オフが使えない場合に、できること
申し込んだあとに考え直した場合、取りうる手段を並べます。
| 段階 | できること | 実現の可能性 |
|---|---|---|
| 申込み後、募集期間中 | 事業者に申込みの取り消しを依頼する | 応じる事業者が多い。約款で定めている場合もある |
| 募集成立後、運用開始前 | 同上 | 事業者による。応じないことが多い |
| 運用開始後 | 途中解約または譲渡を申し出る | 原則できない。一部の事業者が対応 |
| 運用中(事業者が解約を認めている場合) | 所定の手数料を払って解約 | 手数料がかかる。応じない場合もある |
| 説明義務違反があった場合 | 金融サービス提供法に基づく損害賠償請求 | 説明と実態の食い違いを示せるかによる |
1行目が実務的には重要です。募集期間中なら、申込みの取り消しに応じる事業者が多い。約款やヘルプページに「募集期間中はマイページから取り消せます」と書かれていることがあります。
約款を確かめておくのが確実です。「申込みの撤回」「キャンセル」といった項目を探してください。
05契約の前に確かめておく、解除に関する条項
クーリング・オフの有無だけでなく、契約上どこまで解除できるかを事前に確かめておくべきです。
| 確かめること | どこに書いてあるか | 確かめる理由 |
|---|---|---|
| 申込みの撤回ができるか | 約款、ヘルプ | 気が変わったとき |
| 撤回できる期限 | 同上 | いつまでか |
| 運用開始後の途中解約 | 契約締結前交付書面、約款 | 資金が必要になったとき |
| 解約の手数料 | 同上 | いくら失うか |
| 解約に応じる条件 | 同上 | 「当社が認めた場合」だけかどうか |
| 持分の譲渡ができるか | 同上 | 第三者に譲れるか |
| 譲渡の手数料と手続き | 同上 | 実際に使えるか |
| 運用期間の延長中の解約 | 同上 | 延長の原因が売却の遅れなら、解約の原資がない |
最後の行が、実務でいちばん問題になります。「いつでも解約できます」という説明は、平常時の話です。物件が売れずに運用期間が延びているとき、事業者に解約に応じる現金はありません。
解約できるかどうかを重視するなら、運用期間そのものを短くするほうが確実です。3か月の案件なら、解約を考えるより待ったほうが早い。解約の条項は、長期の案件でこそ意味を持ちます。
06よくある質問
登録や許可があれば安全ですか。
違います。登録・許可は最低限の体制と財産的基礎を確かめたもので、集めた資金が正しく使われることの保証ではありません。過去に事故を起こした事業者も、全社が登録業者でした。
登録番号はどこで確かめられますか。
金融商品取引業者は金融庁の「金融商品取引業者登録一覧」、不動産特定共同事業者は国土交通省の一覧で照合できます。どちらも無料で公開されています。
不動産型と融資型で、監督する役所は違いますか。
違います。不動産特定共同事業は国土交通省と都道府県、金融商品取引業と貸金業は金融庁(財務局)です。
元本を保証する商品はありますか。
ありません。出資を集めて元本を保証することは出資法で禁じられています。「元本保証」と書いてある業者には関わらないでください。
07この記事の数字は、どこから取ったか
会社名を挙げて処分や事故を書くにあたっては、照合を法人番号の完全一致に限りました。社名の部分一致で突き合わせると、似た社名の別会社の記録を拾ってしまいます。当サイトが実際に試したところ、82件が一致したように見えてそのほとんどが別会社でした。
できていないことも書きます。不動産特定共同事業者への監督処分は国土交通省・都道府県の所管で、この事例集には含まれていません。また償還後の実績は、事業型を除いてどの事業者も公表していないため、不動産型・融資型については「戻らなかった件数」を外から数えられません。
数字はいずれも元本を保証するものではなく、この記事は特定の商品の勧誘ではありません。

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