01金融サービス提供法とは
正式には「金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律」。2001年に施行された金融商品販売法が、2021年に改組されたものです。投資家が損害賠償を求めるときの、いちばん使いやすい根拠です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 金融商品の販売等を行う業者 |
| 業者の義務 | 重要事項の説明義務 |
| 違反したときの効果 | 損害賠償責任(無過失責任) |
| 立証の負担 | 損害額の推定が働く |
| 投資型CFとの関係 | 匿名組合出資も対象になる |
| 時効 | 損害と加害者を知った時から3年、行為の時から20年 |
3行目と4行目が、この法律の実務上の価値です。通常の不法行為(民法709条)で損害賠償を求めるより、投資家の立証の負担が軽くなります。
| 民法709条(不法行為) | 金融サービス提供法 | |
|---|---|---|
| 業者の過失 | 投資家が立証する | 不要(無過失責任) |
| 説明義務違反 | 投資家が立証する | 投資家が立証する |
| 損害額 | 投資家が立証する | 推定が働く |
| 因果関係 | 投資家が立証する | 推定が働く |
02「重要事項」とは何を指すのか
説明すべき重要事項は、法律で定められています。説明されていなければ、損害賠償の根拠になります。
| 重要事項 | 中身 | 投資型CFでの具体例 |
|---|---|---|
| 元本欠損のおそれ | 元本を割り込む可能性があること | 物件の価値が下がる、貸付先が返済できない |
| その原因となる指標・事由 | 何によって元本が欠損するか | 不動産市況、金利、空室、借り手の信用 |
| 当初元本を上回る損失のおそれ | 出資額を超える損失が生じる可能性 | 投資型CFでは通常ない(出資額まで) |
| 権利行使期間の制限 | いつまでに権利を行使する必要があるか | 運用期間、解約の申出期限 |
| 解約期間の制限 | 解約できない期間があること | 運用期間中は原則として解約できない |
4行目と5行目が投資型クラウドファンディングで効きます。「運用期間中は解約できない」という説明がなかった場合、説明義務違反を主張できる余地があります。
ただし実務では、契約締結前交付書面にこれらが記載されているのが通例です。書面に書いてあり、同意して出資しているなら、損が出たこと自体を理由に賠償を求めることはできません。
03実際に請求が通りうる場面
どういう場合に主張が成り立つかを整理します。
| 場面 | 請求の見込み | 必要になる証拠 |
|---|---|---|
| 募集ページの説明と、資金の実際の使途が違った | 高い | 募集ページの記録、資金の流れを示す資料 |
| 元本欠損のおそれが書面に記載されていなかった | 高い | 契約締結前交付書面 |
| 解約できない旨の説明がなかった | 高い | 同上 |
| 優先劣後があると書いてあったが、実際は設定されていなかった | 高い | 書面、募集ページ、実際の契約 |
| 担保があると書いてあったが、設定されていなかった | 高い | 同上、登記 |
| 虚偽の実績を掲げていた | 高い | 当時の表示の記録 |
| 想定利回りに届かなかった | 低い | — |
| 物件の価値が下がって元本が減った | 低い | — |
| 運用期間が延長された | 低い(書面に条項がある) | — |
| 事業者が破綻した | 破綻の原因による | — |
上の6つに共通するのは、説明と事実が食い違っていたことです。下の4つに共通するのは、説明されていたリスクが現実になったことです。
この区別が、記録を残す理由になります。何が説明されていたかを示せなければ、食い違いも示せません。
04請求の手順
実際に損害賠償を求める場合の流れです。
- 証拠を集める。契約締結前交付書面、契約成立時書面、募集ページの記録、事業者とのやりとり、運用報告、損害の額が分かる資料。
- 事業者に書面で説明を求める。何が起きたのか、なぜ説明と違うのかを問い合わせます。回答を保存します。
- FINMACに相談する(金商業者の場合)。苦情の解決の支援、あっせんという段階があります。訴訟より軽い手続きです。
- 弁護士に相談する。法テラスの無料相談も使えます。金額と見込みを聞いてから決めます。
- 訴訟または集団訴訟。被害者が多数いる場合、弁護団が結成されることがあります。
3行目のFINMACは、金融商品取引業者が相手の場合に使えます。不動産特定共同事業者は対象外なので、国土交通省・都道府県、国民生活センター、または弁護士に相談することになります。
05この法律が守らないもの
最後に、範囲を明確にします。この法律は、投資の結果を保証しません。
| 守るもの | 守らないもの |
|---|---|
| 判断に必要な情報が提供されること | 提供された情報どおりに事業が進むこと |
| リスクが説明されること | リスクが現実にならないこと |
| 説明と事実が一致していること | 事業が成功すること |
| 説明義務違反があったときの賠償 | 説明が正しかった場合の損失 |
| 損害額の推定による立証の軽減 | 回収の実現 |
右列の最後が実務的に重要です。賠償が認められても、事業者に支払う資金がなければ回収できません。事業者が破綻している場合、判決を得ても配当を待つことになります。
つまり、この法律は事後の救済の道であって、損を防ぐ仕組みではありません。防ぐのは、出す前に書面を読むことと、1社に集中させないことだけです。
06よくある質問
登録や許可があれば安全ですか。
違います。登録・許可は最低限の体制と財産的基礎を確かめたもので、集めた資金が正しく使われることの保証ではありません。過去に事故を起こした事業者も、全社が登録業者でした。
登録番号はどこで確かめられますか。
金融商品取引業者は金融庁の「金融商品取引業者登録一覧」、不動産特定共同事業者は国土交通省の一覧で照合できます。どちらも無料で公開されています。
不動産型と融資型で、監督する役所は違いますか。
違います。不動産特定共同事業は国土交通省と都道府県、金融商品取引業と貸金業は金融庁(財務局)です。
元本を保証する商品はありますか。
ありません。出資を集めて元本を保証することは出資法で禁じられています。「元本保証」と書いてある業者には関わらないでください。
07この記事の数字は、どこから取ったか
会社名を挙げて処分や事故を書くにあたっては、照合を法人番号の完全一致に限りました。社名の部分一致で突き合わせると、似た社名の別会社の記録を拾ってしまいます。当サイトが実際に試したところ、82件が一致したように見えてそのほとんどが別会社でした。
できていないことも書きます。不動産特定共同事業者への監督処分は国土交通省・都道府県の所管で、この事例集には含まれていません。また償還後の実績は、事業型を除いてどの事業者も公表していないため、不動産型・融資型については「戻らなかった件数」を外から数えられません。
数字はいずれも元本を保証するものではなく、この記事は特定の商品の勧誘ではありません。

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