01REITと不動産クラウドファンディングは、別の商品
どちらも「少額から不動産に投資する」商品ですが、仕組みも税も流動性も違います。まず全体を並べます。
| REIT(不動産投資信託) | 不動産クラウドファンディング | |
|---|---|---|
| 根拠法 | 投資信託及び投資法人に関する法律 | 不動産特定共同事業法 |
| 買う場所 | 証券取引所 | 各事業者のサイト |
| 投資家が持つもの | 投資口(株式に近い) | 匿名組合出資持分または共有持分 |
| 最低投資額 | 数万円〜数十万円(銘柄による) | 1万円から |
| 投資対象 | 複数の物件をまとめたポートフォリオ | 個別の物件 |
| 値動き | 毎日動く | 運用期間中は価格が付かない |
| 途中で売れるか | いつでも売れる | 原則できない |
| 分配の頻度 | 年2回程度 | 運用終了時または定期 |
| 利回りの目安 | 分配金利回り3〜5% | 想定2〜26%(中央値8.0%) |
| 税 | NISAなら非課税。課税口座は20.315% | 雑所得・総合課税(20.42%の源泉徴収) |
| 損益通算 | 上場株式等の中でできる | できない(匿名組合型) |
| レバレッジ | REIT自体が借入をしている(LTV40〜50%程度) | 案件による |
| 情報開示 | 有価証券報告書、適時開示 | 募集ページと運用報告 |
| 運用者 | 資産運用会社(投資運用業) | 不特事業者 |
02どちらが「得」かを、税込みで計算する
利回りだけを比べても意味がありません。税の扱いが違うからです。100万円を1年運用した場合の手取りを出します。
| 商品 | 利回り | 税引前の利益 | 税 | 手取り | 実質利回り |
|---|---|---|---|---|---|
| REIT(NISA) | 4.0% | 40,000円 | 0円 | 40,000円 | 4.00% |
| REIT(課税口座) | 4.0% | 40,000円 | 8,126円 | 31,874円 | 3.19% |
| 不動産CF(課税所得400万円) | 5.0% | 50,000円 | 約15,200円 | 約34,800円 | 3.48% |
| 不動産CF(課税所得400万円) | 6.0% | 60,000円 | 約18,200円 | 約41,800円 | 4.18% |
| 不動産CF(課税所得1,000万円) | 5.0% | 50,000円 | 約21,900円 | 約28,100円 | 2.81% |
| 不動産CF(課税所得1,000万円) | 6.0% | 60,000円 | 約26,200円 | 約33,800円 | 3.38% |
| 不動産CF(課税所得1,000万円) | 8.0% | 80,000円 | 約35,000円 | 約45,000円 | 4.50% |
課税所得1,000万円の人が不動産クラウドファンディングでNISAのREIT(4%)に並ぶには、想定利回り7%以上が必要です。税の差がそれだけ大きい。
ただしこの計算には、REITの値動きが入っていません。REITは分配金を受け取っても、投資口の価格が下がれば損になります。実際、東証REIT指数は年によって20%以上動くことがあります。
03値動きがあることの、良い面と悪い面
ここが両者のいちばん本質的な違いです。
| REIT(値動きあり) | 不動産CF(値動きなし) | |
|---|---|---|
| 価格が下がったとき | 含み損が見える。売れば損が確定する | 見えない。運用終了時に結果が出る |
| 安く買う機会 | 下がったときに買える | ない |
| 利益確定 | いつでもできる | 運用終了を待つ |
| 精神的な負担 | 大きい。毎日見えてしまう | 小さい |
| 途中でやめる | できる | できない |
| 市場全体の下落 | 直接影響を受ける | 個別の物件の状況による |
| 金利の上昇 | REIT価格に直接効く | 案件の借入と出口に効く |
4行目が、実務では意外に大きい。値動きが見えることで、判断が感情に引っ張られます。下がったときに売ってしまう、上がったときに買い増してしまう。これは多くの投資家が経験することです。
不動産クラウドファンディングは運用期間中に価格が付かないので、その意味での動揺がありません。ただし、それは「損していない」ことを意味しません。見えていないだけです。
04両方を持つという選択
比べて一方を選ぶ必要はありません。役割が違うので、両方を持つ設計も成り立ちます。
| 資金の性格 | 向いている商品 | 理由 |
|---|---|---|
| NISAの枠がまだ余っている | REIT(NISA) | 非課税が最も効く |
| 長期で持ちたい | REIT | いつでも売れる。配当を再投資できる |
| 1年以内に使う予定がある | どちらも向かない | 預金 |
| 値動きを見たくない | 不動産CF | 運用期間中は価格が付かない |
| 個別の物件を選びたい | 不動産CF | 投資対象が具体的 |
| 少額から分散したい | 不動産CF | 1万円から |
| NISAを使い切っている | どちらも | 税の差が縮まる |
いちばん現実的な順番は、NISAの枠を埋めてから、余る資金で不動産クラウドファンディングを検討することです。税の効率がそうなっているからです。
ただし、値動きに耐えられるかどうかは人によって違います。REITが下がったときに売ってしまう人なら、税で不利でも運用期間の決まった商品のほうが結果的に成績がよくなることがあります。
05それぞれのリスクを、正確に並べる
最後に、両者のリスクを並べます。どちらも元本は保証されません。
| リスク | REIT | 不動産CF |
|---|---|---|
| 物件の価値の下落 | 投資口価格に反映される | 元本に反映される |
| 空室・賃料の下落 | 分配金が減る | 分配が減る |
| 金利の上昇 | 借入コストの増加と、価格の下落 | 案件の採算と出口に効く |
| 市場全体の下落 | 直接影響を受ける | 個別の状況による |
| 運用者の破綻 | 投資法人と資産運用会社は別。影響は限定的 | 事業者の破綻が直接効く |
| 流動性 | 低くなることがあるが、市場はある | 原則として売れない |
| 情報の非対称 | 開示が厚い | 開示は事業者による |
| 分散 | 1銘柄で複数物件 | 1案件は1物件のことが多い |
最後の2行が、不動産クラウドファンディング特有のリスクです。1案件=1物件なので、その物件で何かあれば直接効きます。分散したいなら、案件の数を増やすしかありません。
REITは1銘柄で数十から数百の物件を持っているので、1物件の問題が全体に効きにくい。この構造の差は、利回りの差より重要です。
06よくある質問
登録や許可があれば安全ですか。
違います。登録・許可は最低限の体制と財産的基礎を確かめたもので、集めた資金が正しく使われることの保証ではありません。過去に事故を起こした事業者も、全社が登録業者でした。
登録番号はどこで確かめられますか。
金融商品取引業者は金融庁の「金融商品取引業者登録一覧」、不動産特定共同事業者は国土交通省の一覧で照合できます。どちらも無料で公開されています。
不動産型と融資型で、監督する役所は違いますか。
違います。不動産特定共同事業は国土交通省と都道府県、金融商品取引業と貸金業は金融庁(財務局)です。
元本を保証する商品はありますか。
ありません。出資を集めて元本を保証することは出資法で禁じられています。「元本保証」と書いてある業者には関わらないでください。
07この記事の数字は、どこから取ったか
会社名を挙げて処分や事故を書くにあたっては、照合を法人番号の完全一致に限りました。社名の部分一致で突き合わせると、似た社名の別会社の記録を拾ってしまいます。当サイトが実際に試したところ、82件が一致したように見えてそのほとんどが別会社でした。
できていないことも書きます。不動産特定共同事業者への監督処分は国土交通省・都道府県の所管で、この事例集には含まれていません。また償還後の実績は、事業型を除いてどの事業者も公表していないため、不動産型・融資型については「戻らなかった件数」を外から数えられません。
数字はいずれも元本を保証するものではなく、この記事は特定の商品の勧誘ではありません。

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