投資総研
データ記事

生活防衛資金との線引きをどう引くか

01生活防衛資金は、投資の前提であって投資の一部ではない

生活防衛資金は、収入が止まっても生活を続けられるだけの現金です。投資に回すお金とは、性質がまったく違います。

生活防衛資金投資に回す資金
目的収入が止まったときの生活の維持資産を増やす
置き場所普通預金投資商品
求めるものすぐ引き出せること利回り
元本減ってはいけない減る可能性を受け入れる
金額生活費の6か月〜1年分余ったぶん
利回りほぼゼロでよい—

3行目が決定的です。投資型クラウドファンディングは、運用期間中に引き出せません。だから生活防衛資金の置き場所として使うことはできません。

02いくら必要かを、自分の数字で出す

「生活費の6か月分」とよく言われますが、人によって必要な額は違います。自分の数字で計算します。

確かめる項目自分の数字を入れる考え方
月々の生活費—家賃・食費・光熱費・通信費・保険料の合計
収入が止まる可能性—会社員か自営業か。業種の安定性
次の収入までの期間—転職にかかる期間、失業給付の待機期間
家族の構成—扶養している人がいるか
固定費の削減余地—いざとなれば減らせるか
他に換金できる資産—すぐ売れるものがあるか

立場ごとの目安です。

立場必要な月数の目安月25万円の生活費なら
会社員・独身・実家暮らし3〜6か月75〜150万円
会社員・独身・一人暮らし6か月150万円
会社員・共働き・子なし3〜6か月75〜150万円
会社員・片働き・子あり12か月300万円
自営業・フリーランス12か月以上300万円以上
退職後(年金のみ)3〜5年分900〜1,500万円
転職・独立を考えている準備期間+6か月—

最後から2行目が、とくに見落とされます。退職後は収入が固定されるので、突発的な支出に備える現金が現役のときより多く要ります。

03線引きを、口座で物理的に分ける

頭の中で分けるだけでは、気づかないうちに投資に回してしまいます。口座で物理的に分けるのが確実です。

口座役割置くもの動かす頻度
生活費の口座日々の支払い月々の生活費+2か月分毎日
生活防衛資金の口座触らない生活費の6か月〜1年分原則として動かさない
投資用の口座投資の出入り投資に回す資金月に数回
使う予定のある資金の口座3年以内に使う予定があるもの教育費、住宅の頭金など予定に合わせて
横にスクロールすると残りの列が見えます

2行目の口座は、キャッシュカードを持ち歩かない、ネットバンキングのブックマークを外すなど、動かしにくくしておくのが効きます。

そして、投資用の口座に移した時点で「投資に回す資金」になります。生活費が足りなくなったときに投資用の口座から戻すのは、線引きが機能していないということです。

04投資型クラウドファンディングの、資金拘束の実際

この商品がどれだけ資金を拘束するかを具体的に確かめます。実案件の運用期間の中央値は12ヶ月でした。

期間件数構成比この期間、引き出せない
3ヶ月以下46件8.9%3ヶ月以下
4〜6ヶ月127件24.7%4〜6ヶ月
7〜12ヶ月193件37.5%7〜12ヶ月
13〜24ヶ月124件24.1%13〜24ヶ月
25ヶ月以上24件4.7%25ヶ月以上
横にスクロールすると残りの列が見えます

そして延長されることがあります。契約締結前交付書面に「運用期間を延長することがある」という条項が必ず入っていて、延長に投資家の同意は要りません。

想定実際に起きうること
6ヶ月で戻ると思って出した延長されて9ヶ月になる
12ヶ月で戻ると思って出した遅延して18ヶ月になる
いつでも解約できると思っていた延長の原因が売却の遅れなら、解約の原資がない

だから、「この期間は使わない」ではなく「この期間の1.5倍は使わなくても困らない」という余裕で考えるのが現実的です。

05線引きを決めたあとの、金額の配分

生活防衛資金を確保したうえで、残りをどう配分するか。順番を示します。

順置き場所理由
0生活防衛資金(預金)投資の前提
13年以内に使う予定がある資金(預金・個人向け国債)元本が減ると困る
2NISAのつみたて投資枠非課税。いつでも引き出せる
3iDeCo(使える人)掛金が所得控除。ただし60歳まで拘束
4NISAの成長投資枠非課税
5課税口座での投資信託・株式損益通算と繰越が使える
6投資型クラウドファンディング値動きがなく、期間が決まっている
7株式投資型クラウドファンディング無くなっても困らない範囲で

この順番は税の有利さと流動性で並べたものです。上ほど税が有利で、いつでも現金にできます。

ただし、5と6の順序は人によって変わります。毎日の値動きを見たくない人、相場が下がったときに売ってしまう人にとっては、運用期間が決まっている商品のほうが結果的に続けやすいことがあります。

06よくある質問

いくらから始められますか。

最低投資額は事業者によって違い、中央値は1万円です。1万円から出せる事業者が多くあります。

途中でやめられますか。

運用期間中は原則としてやめられません。一部の事業者が譲渡や解約に対応していますが、手数料がかかり、応じてもらえない場合もあります。

確定申告は必要ですか。

給与所得者で、給与以外の所得の合計が年20万円以下なら所得税の申告は不要です。ただし住民税の申告は別に必要になることがあります。

何社に分けるのがよいですか。

4社から6社が、分散の効果と管理の手間の釣り合う範囲です。10社を超えると確定申告の書類集めが重くなります。

元本は保証されますか。

されません。どの種別にも公的な元本補償の仕組みはありません。

07この記事の数字は、どこから取ったか

会社名を挙げて処分や事故を書くにあたっては、照合を法人番号の完全一致に限りました。社名の部分一致で突き合わせると、似た社名の別会社の記録を拾ってしまいます。当サイトが実際に試したところ、82件が一致したように見えてそのほとんどが別会社でした。

できていないことも書きます。不動産特定共同事業者への監督処分は国土交通省・都道府県の所管で、この事例集には含まれていません。また償還後の実績は、事業型を除いてどの事業者も公表していないため、不動産型・融資型については「戻らなかった件数」を外から数えられません。

数字はいずれも元本を保証するものではなく、この記事は特定の商品の勧誘ではありません。

自分の数字で確かめる:分けて買うと安心?

はじめての人へ

1つの案件に全部入れず、いくつかに分けて買うと、1件で損が出たときの痛みが小さくなります。

分けて減るのは「1件の事故」の影響です。金利の上昇や不動産価格の下落のように、すべての案件に同時に効く損は、件数を増やしても減りません。同じ事業者の案件を何件買っても、事業者の倒産には備えられません。

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