01退職金は、投資に回してよいお金なのか
先に結論を書きます。退職金の大部分を投資に回すのは推奨されません。理由は3つあります。
| 理由 | 中身 |
|---|---|
| 取り返す時間がない | 現役なら損を給与で埋められるが、退職後はそれができない |
| まとまった金額を一度に動かすことになる | タイミングのリスクを一度に引き受ける |
| 生活費の原資になる | 運用期間中は引き出せない商品は、生活費には使えない |
そのうえで、一部を回すならどう考えるかを書きます。「一部」の目安を先に置きます。
| 資金の区分 | 金額の目安 | 置き場所 |
|---|---|---|
| 当面の生活費(3〜5年分) | 退職金の3〜5割 | 預金、個人向け国債 |
| 医療・介護の備え | 300〜500万円 | 預金 |
| 住宅の修繕・車の買い替え | 見積もりどおり | 預金 |
| 当面使わない資金 | 残り | ここから投資に回す |
最後の区分の中で、さらに投資先を分けます。投資型クラウドファンディングはその一部です。
02退職後の税金は、現役のときと違う
退職すると課税所得が下がるので、源泉徴収された20.42%が納めすぎになることが多くなります。
| 退職後の状況 | 課税所得の目安 | 分配20万円の源泉徴収 | 本来の所得税 | 還付の見込み |
|---|---|---|---|---|
| 収入が年金のみ(月15万円) | 約30万円 | 40,840円 | 約6,000円 | 約35,000円 |
| 年金+少しの働き(年収200万円) | 約80万円 | 40,840円 | 約8,000円 | 約33,000円 |
| 年金+再雇用(年収400万円) | 約200万円 | 40,840円 | 約20,000円 | 約21,000円 |
| 現役(年収800万円) | 約500万円 | 40,840円 | 約41,000円 | なし |
課税所得の目安は概算です。公的年金等控除、基礎控除、社会保険料控除などによって変わります。
退職後は確定申告をすると戻ることが多い。これは知っておく価値があります。
ただし注意点があります。分配金を申告すると、国民健康保険料や介護保険料の計算に入ります。住民税の所得割が増えれば、これらの保険料も増えることがあります。所得税の還付だけを見て判断しないでください。
03運用期間と、資金が必要になる時期を合わせる
退職後は、いつお金が要るかが読みにくくなります。医療、介護、家族の事情。予定していなかった支出が出ます。
| 想定される支出 | 時期 | 金額の目安 | 投資に回してよいか |
|---|---|---|---|
| 日々の生活費 | 毎月 | 月20〜30万円 | 回さない |
| 医療費(自己負担) | 突発 | 年数万〜数十万円 | 回さない |
| 介護(自分または配偶者) | 突発 | 月数万〜数十万円 | 回さない |
| 住宅の修繕 | 10〜20年ごと | 100〜300万円 | 時期が読めるなら、期間を合わせて回せる |
| 車の買い替え | 7〜10年ごと | 100〜300万円 | 同上 |
| 子・孫への援助 | 不定 | — | 回さない |
| 当面使う予定がない | — | — | 回せる |
投資型クラウドファンディングの運用期間は、実案件の中央値で12ヶ月です。この期間は引き出せないと考えてください。
- 3ヶ月以下46
- 4〜6ヶ月127
- 7〜12ヶ月193
- 13〜24ヶ月124
- 25ヶ月以上24
短い案件を選べば、資金の拘束は短くなります。退職金の一部を回すなら、3〜6ヶ月の案件から始めて感触を確かめるのが現実的です。
04金額を、段階的に増やす
まとまった金額を一度に動かさないための具体的な方法です。
| 段階 | 金額 | 期間 | 確かめること |
|---|---|---|---|
| 1. 試す | 1〜3万円 | 3〜6ヶ月 | 申し込みから償還までの流れ。サイトの使い勝手 |
| 2. 慣れる | 10〜30万円 | 6〜12ヶ月 | 分配の入金、報告の量、税の書類 |
| 3. 広げる | 50〜100万円を3社に | 1年 | 事業者ごとの違い。募集の頻度 |
| 4. 定める | 投資に回せる資金の範囲で | — | 1社あたりの上限を決める |
この4段階に、2年かけてもよいと考えてください。退職金は一度しか入りません。急いで動かす理由はありません。
そして、「まとめて出すと有利」ということはありません。利回りは金額で変わりませんし、大口優遇のような仕組みもありません。分けて出しても、条件は同じです。
05相続まで見ておく
退職後に始める場合、相続のときにどうなるかを最初から考えておく価値があります。
| 備えること | なぜ | やり方 |
|---|---|---|
| 出資先の一覧を残す | 家族が存在を知らないと、放置される | 事業者名・URL・登録メール・おおよその金額を1枚に |
| 登録した住所を最新にする | 通知が届かないと手続きに参加できない | 引っ越したら各社で変更する |
| 連絡先を家族と共有する | 同上 | 一覧に書いておく |
| 換金できない資産だと理解しておく | 相続税は現金で払う | 他の資産で払えるようにしておく |
| 社数を増やしすぎない | 相続人が手続きする先が増える | 3〜5社に抑える |
最後の行が、退職後に始める人には特に効きます。10社に分けると、相続人は10社と手続きすることになります。分散の効果と、家族の手間を天秤にかけてください。
そして、パスワードは一覧に書かないこと。どこに何があるかを伝えるのが目的で、アクセスさせるためではありません。相続の手続きは、事業者に連絡して所定の書類を出す形で進みます。
06よくある質問
いくらから始められますか。
最低投資額は事業者によって違い、中央値は1万円です。1万円から出せる事業者が多くあります。
途中でやめられますか。
運用期間中は原則としてやめられません。一部の事業者が譲渡や解約に対応していますが、手数料がかかり、応じてもらえない場合もあります。
確定申告は必要ですか。
給与所得者で、給与以外の所得の合計が年20万円以下なら所得税の申告は不要です。ただし住民税の申告は別に必要になることがあります。
何社に分けるのがよいですか。
4社から6社が、分散の効果と管理の手間の釣り合う範囲です。10社を超えると確定申告の書類集めが重くなります。
元本は保証されますか。
されません。どの種別にも公的な元本補償の仕組みはありません。
07この記事の数字は、どこから取ったか
会社名を挙げて処分や事故を書くにあたっては、照合を法人番号の完全一致に限りました。社名の部分一致で突き合わせると、似た社名の別会社の記録を拾ってしまいます。当サイトが実際に試したところ、82件が一致したように見えてそのほとんどが別会社でした。
できていないことも書きます。不動産特定共同事業者への監督処分は国土交通省・都道府県の所管で、この事例集には含まれていません。また償還後の実績は、事業型を除いてどの事業者も公表していないため、不動産型・融資型については「戻らなかった件数」を外から数えられません。
数字はいずれも元本を保証するものではなく、この記事は特定の商品の勧誘ではありません。

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