01源泉徴収は「前払い」であって「確定」ではない
分配金から引かれる20.42%は、所得税の前払いです。その人の最終的な税額を計算したものではありません。だから、実際の税額より多く払っていれば戻ります。
| 場面 | 源泉徴収(20.42%) | 本来の所得税 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 課税所得が195万円以下(税率5%) | 多い | 少ない | 還付 |
| 課税所得が195〜330万円(10%) | 多い | 少ない | 還付 |
| 課税所得が330〜695万円(20%) | ほぼ同じ | ほぼ同じ | わずかに還付 |
| 課税所得が695〜900万円(23%) | 少ない | 多い | 追納 |
| 課税所得が900万円超(33%以上) | 少ない | 多い | 追納 |
| 所得がない・少ない(控除内) | 多い | ゼロ | 全額還付 |
| その年に雑所得の損が出た | 多い | 少ない | 還付 |
いちばん大きく戻るのは6行目です。収入がほとんどない人(専業主婦、学生、退職した年金生活者など)は、基礎控除などで課税所得がゼロになることがあります。その場合、源泉徴収された分は全額戻ります。
02いくら戻るのか、金額で見る
分配金の額と課税所得の組み合わせで、還付額を計算します。所得税だけの計算です(住民税は別に課税されます)。
| 分配金 | 課税所得0円 | 課税所得150万円(5%) | 課税所得300万円(10%) | 課税所得500万円(20%) | 課税所得1,000万円(33%) |
|---|---|---|---|---|---|
| 50,000円 | +10,210円 | +7,657円 | +5,105円 | +0円 | -6,636円 |
| 100,000円 | +20,420円 | +15,315円 | +10,210円 | +0円 | -13,273円 |
| 200,000円 | +40,840円 | +30,630円 | +20,420円 | +0円 | -26,546円 |
| 300,000円 | +61,260円 | +45,945円 | +30,630円 | +0円 | -39,818円 |
| 500,000円 | +102,100円 | +76,575円 | +51,050円 | +0円 | -66,364円 |
| 1,000,000円 | +204,200円 | +153,150円 | +102,100円 | +0円 | -132,729円 |
プラスが還付、マイナスが追納です。課税所得が300万円以下の人は、ほぼ確実に戻ります。
ただし、確定申告をすると住民税の計算にもその所得が入ります。住民税は10%なので、所得税の還付から住民税の増加を引いた額が実際の差です。
| 分配金 | 課税所得0円の人 | 課税所得150万円の人 | 課税所得300万円の人 |
|---|---|---|---|
| 100,000円 | 所得税 +20,420円 / 住民税 ▲10,000円 = +10,420円 | 所得税 +15,315円 / 住民税 ▲10,000円 = +5,315円 | 所得税 +10,210円 / 住民税 ▲10,000円 = +210円 |
| 200,000円 | 所得税 +40,840円 / 住民税 ▲20,000円 = +20,840円 | 所得税 +30,630円 / 住民税 ▲20,000円 = +10,630円 | 所得税 +20,420円 / 住民税 ▲20,000円 = +420円 |
| 500,000円 | 所得税 +102,100円 / 住民税 ▲50,000円 = +52,100円 | 所得税 +76,575円 / 住民税 ▲50,000円 = +26,575円 | 所得税 +51,050円 / 住民税 ▲50,000円 = +1,050円 |
住民税は申告してもしなくても本来かかるものです。この表の「▲」は、本来払うべきものを払うという意味で、申告したから損をするわけではありません。
03還付を受けるための手続き
還付を受けるには確定申告が必要です。手順を書きます。
- 各社から年間取引報告書を取る。マイページからダウンロードします。1〜2月に出ます。
- 分配金の総額と、源泉徴収された額を集計する。複数社ある場合は全部足します。
- 確定申告書を作る。国税庁の確定申告書等作成コーナー(e-Tax)が簡単です。雑所得(その他)として入力します。
- 所得の内訳書に、支払者ごとに記入する。事業者名、収入金額、源泉徴収税額。
- 還付先の口座を指定する。本人名義の口座に限られます。
- 提出する。e-Taxならオンラインで完結します。還付は通常、提出から1〜2か月で振り込まれます。
還付だけを目的とする申告(還付申告)は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。3月15日の期限に縛られません。過去5年ぶんをさかのぼって申告することもできます。
04還付申告は、過去にさかのぼれる
前の節の最後を詳しく書きます。源泉徴収されていて、申告していなかった年があるなら、5年前までさかのぼって還付を受けられます。
| 年 | 還付申告ができる期限 | 備考 |
|---|---|---|
| 2021年分 | 2026年12月31日 | 今年が最後 |
| 2022年分 | 2027年12月31日 | — |
| 2023年分 | 2028年12月31日 | — |
| 2024年分 | 2029年12月31日 | — |
| 2025年分 | 2030年12月31日 | — |
| 2026年分 | 2031年12月31日 | 翌年1月1日から提出できる |
各年の年間取引報告書が必要です。サービスによっては過去のぶんがマイページに残っていないことがあるので、毎年ダウンロードして保存しておくのが安全です。
事業者が撤退・破綻した場合、書類を再発行してもらえないことがあります。この点は、サービス終了の告知が出た時点で過去全年分を落としておくべき理由になります。
05還付にならない場合
戻らない、あるいは逆に追納になる場合を整理します。申告する前に確かめてください。
| 場面 | 結果 | 理由 |
|---|---|---|
| 課税所得が695万円を超える | 追納 | 本来の税率が20.42%より高い |
| 源泉徴収されていない(任意組合型など) | 追納 | 前払いがないので、申告して納める |
| 他に雑所得の利益が大きい | 追納になりうる | 雑所得は合算されるので、全体の税率が上がる |
| 株式投資型の譲渡益のみ | 変わらない | 申告分離課税20.315%で完結 |
| 扶養に入っている人が申告する | 扶養から外れることがある | 所得の合計が一定額を超えると、配偶者控除・扶養控除に影響する |
最後の行に注意してください。扶養に入っている人が分配金を受け取ると、所得の合計によっては扶養から外れます。世帯全体で見ると、数万円の還付のために配偶者控除が受けられなくなるほうが損になることがあります。
| 扶養に関する目安 | 所得の基準 | 分配金だけの場合の目安 |
|---|---|---|
| 配偶者控除(満額) | 合計所得金額62万円以下(令和8年分) | 分配金62万円以下 |
| 配偶者特別控除 | 合計所得金額133万円以下 | 分配金133万円以下 |
| 扶養親族(16歳以上) | 合計所得金額62万円以下(令和8年分) | 分配金62万円以下 |
| 社会保険の被扶養者 | 収入130万円未満(運用は保険者による) | 分配金が収入に入るかは保険者に確認 |
最後の行は、税とは別の制度です。社会保険の被扶養者の判定は、税法上の所得とは基準が違います。分配金が「収入」に入るかどうかは加入している健康保険組合の運用によります。金額が大きくなりそうな場合は、事前に確認してください。
06還付額を、所得と分配金の組み合わせで出す
源泉徴収された20.42%と、本来の所得税額の差が還付額です。住民税は別に課税されるので、ここでは所得税だけを見ます。
| 分配金\課税所得 | 150万円 | 250万円 | 400万円 | 550万円 | 800万円 | 1,000万円 | 1,500万円 | 2,500万円 | 5,000万円 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 30,000円 | +4,594円 | +3,063円 | +0円 | +0円 | -918円 | -3,981円 | -3,981円 | -6,125円 | -7,657円 |
| 50,000円 | +7,657円 | +5,105円 | +0円 | +0円 | -1,531円 | -6,636円 | -6,636円 | -10,209円 | -12,762円 |
| 100,000円 | +15,315円 | +10,210円 | +0円 | +0円 | -3,062円 | -13,273円 | -13,273円 | -20,419円 | -25,524円 |
| 200,000円 | +30,630円 | +20,420円 | +0円 | +0円 | -6,125円 | -26,546円 | -26,546円 | -40,839円 | -51,049円 |
| 300,000円 | +45,945円 | +30,630円 | +0円 | +0円 | -9,189円 | -39,818円 | -39,818円 | -61,259円 | -76,575円 |
| 500,000円 | +76,575円 | +51,050円 | +0円 | +0円 | -15,314円 | -66,364円 | -66,364円 | -102,099円 | -127,624円 |
| 1,000,000円 | +153,150円 | +102,100円 | +0円 | +0円 | -30,629円 | -132,729円 | -132,729円 | -204,199円 | -255,249円 |
| 2,000,000円 | +306,300円 | +204,200円 | +0円 | +0円 | -61,259円 | -265,459円 | -265,459円 | -408,399円 | -510,499円 |
| 5,000,000円 | +765,750円 | +510,500円 | +0円 | +0円 | -153,150円 | -663,649円 | -663,649円 | -1,020,999円 | -1,276,250円 |
プラスが還付、マイナスが追納です。課税所得695万円(税率23%)を超えると追納になります。
住民税を含めた、最終的な差です。住民税は申告の有無にかかわらず本来かかるものなので、「損をする」わけではありません。
| 分配金\課税所得 | 150万円 | 250万円 | 400万円 | 550万円 | 800万円 | 1,000万円 | 1,500万円 | 2,500万円 | 5,000万円 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 30,000円 | +1,594円 | +63円 | -3,000円 | -3,000円 | -3,918円 | -6,981円 | -6,981円 | -9,125円 | -10,657円 |
| 50,000円 | +2,657円 | +105円 | -4,999円 | -4,999円 | -6,531円 | -11,636円 | -11,636円 | -15,209円 | -17,762円 |
| 100,000円 | +5,315円 | +210円 | -9,999円 | -9,999円 | -13,063円 | -23,273円 | -23,273円 | -30,419円 | -35,524円 |
| 200,000円 | +10,630円 | +420円 | -19,999円 | -19,999円 | -26,126円 | -46,546円 | -46,546円 | -60,839円 | -71,049円 |
| 300,000円 | +15,945円 | +630円 | -30,000円 | -30,000円 | -39,189円 | -69,819円 | -69,819円 | -91,260円 | -106,575円 |
| 500,000円 | +24,022円 | +1,050円 | -50,000円 | -50,000円 | -65,315円 | -116,364円 | -116,364円 | -152,099円 | -177,625円 |
| 1,000,000円 | +25,072円 | -18,320円 | -100,000円 | -100,000円 | -130,630円 | -232,729円 | -232,729円 | -304,199円 | -355,250円 |
| 2,000,000円 | +6,752円 | -118,320円 | -200,000円 | -216,846円 | -363,360円 | -465,459円 | -465,459円 | -608,399円 | -710,500円 |
| 5,000,000円 | -293,247円 | -435,166円 | -562,791円 | -761,886円 | -1,061,549円 | -1,163,650円 | -1,306,590円 | -1,521,000円 | -1,776,250円 |
07所得がほとんどない人の場合
収入がない、または少ない人は、源泉徴収された分が全額戻ります。基礎控除(令和8年分は62万円)などで課税所得がゼロになるためです。
| その人の状況 | 他の収入 | 分配金 | 課税所得 | 本来の所得税 | 源泉徴収された額 | 還付額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 収入なし | 0円 | 100,000円 | 0円 | 0円 | 20,420円 | +20,420円 |
| 収入なし | 0円 | 300,000円 | 0円 | 0円 | 61,260円 | +61,260円 |
| 収入なし | 0円 | 500,000円 | 0円 | 0円 | 102,100円 | +102,100円 |
| 収入なし | 0円 | 1,000,000円 | 380,000円 | 19,399円 | 204,200円 | +184,801円 |
| パート年収80万円 | 250,000円 | 100,000円 | 0円 | 0円 | 20,420円 | +20,420円 |
| パート年収100万円 | 450,000円 | 100,000円 | 0円 | 0円 | 20,420円 | +20,420円 |
| 年金のみ(公的年金等控除後100万円) | 1,000,000円 | 200,000円 | 580,000円 | 29,608円 | 40,840円 | +11,231円 |
専業主婦、学生、退職した年金生活者などが該当します。確定申告をしないと、戻るはずのお金が戻りません。
ただし、扶養に入っている場合は注意が必要です。分配金が合計所得金額62万円(令和8年分)を超えると、配偶者控除や扶養控除の対象から外れます。世帯全体で見ると、数万円の還付より控除がなくなる影響のほうが大きいことがあります。
08扶養への影響を、金額で確かめる
扶養している側(配偶者や親)の税負担がどれだけ増えるかを計算します。
| 扶養している人の課税所得 | 配偶者控除38万円がなくなる影響 | 扶養控除38万円がなくなる影響 |
|---|---|---|
| 195万円以下(5%) | 約57,399円の増税 | 約57,399円の増税 |
| 195〜330万円(10%) | 約76,798円の増税 | 約76,798円の増税 |
| 330〜695万円(20%) | 約115,596円の増税 | 約115,596円の増税 |
| 695〜900万円(23%) | 約127,235円の増税 | 約127,235円の増税 |
| 900万円超(33%) | 約166,033円の増税 | 約166,033円の増税 |
| 1,800万円超(40%) | 約193,192円の増税 | 約193,192円の増税 |
(住民税の控除額は33万円なので、実際の影響はこれより少し小さくなります。目安として見てください。)
| 場面 | 本人の還付 | 扶養している人の増税 | 世帯全体 |
|---|---|---|---|
| 分配金40万円・本人に他の収入なし | 約81,680円 | なし(62万円以下) | +約81,680円 |
| 分配金70万円・本人に他の収入なし | 約138,856円 | 配偶者控除が配偶者特別控除に。段階的に減る | 場合による |
| 分配金100万円・本人に他の収入なし | 約184,801円 | 配偶者特別控除が減る | 差し引きで減ることがある |
令和8年分では、合計所得金額62万円が最初の線です。分配金だけで62万円を超えないなら、扶養への影響はありません。超えそうな場合は、世帯全体で計算してから決めてください。
09還付申告の期限と、過去の年の扱い
還付だけを目的とする申告は、5年間さかのぼれます。期限は「その年の翌年1月1日から5年」です。
| 対象の年 | 提出できる期間 | いま出せるか |
|---|---|---|
| 2019年分 | 2020年1月1日〜2024年12月31日 | 期限切れ |
| 2020年分 | 2021年1月1日〜2025年12月31日 | 期限切れ |
| 2021年分 | 2022年1月1日〜2026年12月31日 | 出せる |
| 2022年分 | 2023年1月1日〜2027年12月31日 | 出せる |
| 2023年分 | 2024年1月1日〜2028年12月31日 | 出せる |
| 2024年分 | 2025年1月1日〜2029年12月31日 | 出せる |
| 2025年分 | 2026年1月1日〜2030年12月31日 | 出せる |
| 2026年分 | 2027年1月1日〜2031年12月31日 | 出せる |
過去に申告していなかった年があるなら、いまからでも還付を受けられます。各年の年間取引報告書が必要です。
| 必要なもの | 入手先 | 注意 |
|---|---|---|
| 各年の年間取引報告書 | 事業者のマイページ | 過去のぶんが残っていないことがある |
| 各年の源泉徴収票 | 勤務先 | 再発行を依頼できる |
| 各年の確定申告書(提出済みの場合) | 自分の控え、または税務署 | 既に申告している年は「更正の請求」になる |
| 還付先の口座 | 自分 | — |
既に確定申告をしている年で、分配金を申告し忘れていた場合は、更正の請求(還付になる場合)または修正申告(追納になる場合)になります。手続きが違うので、税務署に確認してください。
10還付を受ける人が、毎年やること
1年の流れを書きます。慣れれば年に1時間ほどで終わります。
| 時期 | やること | 所要時間 |
|---|---|---|
| 通年 | 管理表に出資と分配を記録する | 月に5分 |
| 1月中旬 | 各社から年間取引報告書をダウンロードする | 事業者数×5分 |
| 1月下旬 | 源泉徴収票を受け取る(給与所得者) | — |
| 2月 | 確定申告書等作成コーナーで入力する | 30分〜1時間 |
| 2月16日〜3月15日 | 提出する(還付申告なら1月から可能) | 10分 |
| 3〜4月 | 還付金が振り込まれる | — |
| 5〜6月 | 住民税の通知を確認する | 5分 |
還付申告(納める税金がなく、還付だけの場合)は1月1日から提出できます。2月16日を待つ必要はありません。早く出せば、早く戻ります。
2年目からは、前年のデータを読み込んで金額を変えるだけなので15分ほどで終わります。最初の1回だけが手間です。
11よくある質問
分配金は確定申告が必要ですか。
給与所得者で、給与以外の所得の合計が年間20万円以下なら、所得税の確定申告は不要です。ただし住民税の申告は別に必要になることがあります。
20.42%が引かれていました。これは何ですか。
所得税の源泉徴収です(所得税20%+復興特別所得税0.42%)。前払いなので、所得が低ければ確定申告で戻ることがあります。
損が出たら他の所得と相殺できますか。
雑所得の場合、他の所得とは相殺できません。同じ年の他の雑所得とだけ相殺できます。
損失を翌年に繰り越せますか。
雑所得の損失は繰り越せません。その年で切り捨てになります。
住民税はどうなりますか。
分配金にも住民税がかかります。税率は一律10%です。源泉徴収されているのは所得税だけで、住民税は別です。
12この記事の数字は、どこから取ったか
会社名を挙げて処分や事故を書くにあたっては、照合を法人番号の完全一致に限りました。社名の部分一致で突き合わせると、似た社名の別会社の記録を拾ってしまいます。当サイトが実際に試したところ、82件が一致したように見えてそのほとんどが別会社でした。
できていないことも書きます。不動産特定共同事業者への監督処分は国土交通省・都道府県の所管で、この事例集には含まれていません。また償還後の実績は、事業型を除いてどの事業者も公表していないため、不動産型・融資型については「戻らなかった件数」を外から数えられません。
数字はいずれも元本を保証するものではなく、この記事は特定の商品の勧誘ではありません。

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