- 01先に結論
- 02特定口座に入る「上場株式等」の範囲
- 03特定口座の外にあるもの
- 04投資先ごとに、税の扱いを1枚にする
- 053つの口座の違い
- 06源泉徴収ありの口座の1年を追う
- 07売る順番で、年の途中に差し引かれる額が変わる
- 08配当を口座に受け入れると、損失と自動で合わさる
- 09年間取引報告書に書かれること
- 10口座を開いてから閉じるまで
- 11口座から口座へ移すとき
- 12信用取引も特定口座で処理できる
- 13源泉徴収あり・なしで、税を払う時期が違う
- 14非上場株式を売ったときは、口座の外で申告する
- 15口座の組み合わせで、申告が要るか・税が戻るか
- 16損失の繰越控除は、申告を続けないと消える
- 17どの口座を申告に含めるかは、口座ごとに選べる
- 18損失と利益を合わせられる組み合わせ
- 19積立で買い続けたときの取得単価
- 20同じ銘柄を2つの口座で持つと、平均は別々になる
- 21繰り越した損失を3年で使いきれるか
- 223社の年間取引報告書を合計する
- 231年の手続の流れ
- 24一般口座の取得費は、自分で平均を計算する
- 25上場廃止になった株が価値を失ったとき
- 26債券も特定口座に入る。償還差損は通算できる
- 27社債の利率と、額面より高く買ったときの利回り
- 28投資先ごとに、置ける口座
- 29口座を選ぶときの順番
- 30よくある質問
- 31この記事の数字は、どこから取ったか
01先に結論
特定口座に入れられるのは「上場株式等」だけです(租税特別措置法37条の11の3第3項第2号)。上場株式等の範囲は同法37条の11第2項に列挙されていて、上場株式・ETF・J-REIT・公募投資信託に加え、国債・地方債・公募社債などの特定公社債も含まれます。
反対に、非上場株式、匿名組合出資(不動産型・融資型クラウドファンディングの多く)、任意組合出資、預貯金は、特定口座には入りません。これらは口座の種類を選ぶ余地がなく、所得の区分と課税の方法が商品の形で決まります。
源泉徴収ありの特定口座を使うと、口座の中の損益は自動で通算され、申告しないで終えることもできます。口座をまたいで通算する、損失を繰り越す、といったときだけ確定申告が要ります。この記事では、口座の組み合わせ7通り、1年の売買の流れ、繰越控除の5年、一般口座の取得費、公社債の償還差損を、それぞれ計算で確かめます。
02特定口座に入る「上場株式等」の範囲
措法37条の11第2項は、上場株式等を次の各号で定めています(2026年9月30日時点の条文。「—」は例を挙げていないもの)。
| 号 | 条文の中身(要約) | 身近な例 |
|---|---|---|
| 1号 | 金融商品取引所に上場されている株式等など | 上場株式、ETF(上場投資信託)、上場REIT・上場インフラファンドの投資口 |
| 2号 | 公募の投資信託の受益権(特定株式投資信託を除く) | 証券会社・銀行で買う公募投信(公募公社債投資信託を含む) |
| 3号 | 特定投資法人の投資口 | オープン・エンド型で公募の投資法人(措法8条の4第1項第3号の定義) |
| 3号の2 | 公募の特定受益証券発行信託の受益権 | — |
| 4号 | 公募の特定目的信託の社債的受益権 | — |
| 5号 | 国債・地方債 | 個人向け国債、新窓販国債 |
| 6号 | 外国(地方公共団体を含む)が発行・保証する債券 | 外国国債 |
| 7号 | 特別の法律で設立された法人が発行する債券 | 政府関係機関債など |
| 8号 | 公募で発行された公社債 | 個人向け社債などの公募社債 |
| 9号 | 有価証券報告書などを提出している法人が発行する社債 | — |
| 10号 | 取引所の公社債情報に基づいて発行される公社債 | — |
| 11号 | 国外で発行され、売出しに応じて取得し保管を続けている公社債など | — |
| 12号 | 外国法人が発行・保証する一定の債券 | — |
| 13号 | 銀行・第一種金融商品取引業者などとその完全子会社などが発行した社債(取得者が実質的に多数でないものを除く) | — |
| 14号 | 平成27年12月31日以前に発行された公社債(同族会社の発行を除く) | — |
15の号のうち、株式・投資信託・投資法人など「持分」にあたるものが1号〜4号、債券が5号〜14号です。債券は発行者や募集の方法ごとに号が分かれていて、同じ「社債」でも、公募かどうか、発行者が有価証券報告書を出しているかどうかで扱いが決まります。個人向け国債は5号、証券会社で募集される公募の個人向け社債は8号にあたります。
上場REITや上場インフラファンドは、投資口が取引所に上場しているので1号に入ります。3号の「特定投資法人」は措法8条の4第1項第3号で「投資主の請求により投資口の払戻しをする旨」が規約に定められ、公募で設立された投資法人と定義されていて、上場REITとは別のものです。
03特定口座の外にあるもの
上場株式等に入らない主なものは次のとおりです。いずれも特定口座に入れることはできず、源泉徴収ありの特定口座で完結させる、という選び方もありません。
- 非上場株式:措法37条の10の「一般株式等」で、上場株式等とは別のグループで申告分離課税になります。一般株式等の損失は上場株式等の利益と通算できません(国税庁 No.1465。特定中小会社の株式の特例を除く)。
- 匿名組合出資:措法37条の10第2項が列挙する「株式等」(株式、法人の出資者の持分、優先出資、投資信託の受益権、特定受益証券発行信託の受益権、社債的受益権、公社債)に、匿名組合契約の出資の持分は入っていません。分配は雑所得です(所得税基本通達36・37共-21)。
- 任意組合型の出資:組合の事業の損益が組合員に帰属し、不動産の賃貸なら不動産所得として総合課税になります。
- 預貯金の利子:措法3条の源泉分離課税で、他の所得と区分して15%(ほかに住民税の利子割5%)で課税が終わります。
口座を開く側の要件もあります。特定口座を開設できるのは、第一種金融商品取引業を行う金融商品取引業者、登録金融機関、投資信託委託会社です(措法37条の11の3第3項第1号)。当サイトが掲載しているクラウドファンディング事業者を種別で分け、扱う商品が特定口座に入るかどうかを並べました。
| 種別 | 掲載数 | 投資家が持つもの | 特定口座に |
|---|---|---|---|
| 不動産型 | 80社 | 匿名組合出資・任意組合出資 | 入らない |
| 融資型 | 20社 | 匿名組合出資 | 入らない |
| 株式投資型 | 5社 | 非上場株式(一般株式等) | 入らない |
| ファンド型 | 5社 | 匿名組合出資 | 入らない |
掲載110社の商品は、どの種別も上場株式等にあたらないので、特定口座の話にはなりません。クラウドファンディングの税の扱いは4種別の税金で扱っています。
04投資先ごとに、税の扱いを1枚にする
口座に入るかどうかと、所得の区分、申告不要を選べるか、損失を通算できるかを並べました。
| 投資先 | 特定口座に | 所得の区分 | 申告不要(源泉徴収で完結) | 他の口座の損失との通算 | 損益を合わせられる範囲 |
|---|---|---|---|---|---|
| 上場株式・ETF | 入る | 譲渡益:上場株式等の譲渡所得等/配当:配当所得 | 口座で選べる | できる | 上場株式等のグループ |
| J-REIT・上場インフラファンド | 入る | 同上(分配金は配当所得、配当控除なし) | 口座で選べる | できる | 上場株式等のグループ |
| 公募株式投資信託 | 入る | 同上(分配金は配当所得) | 口座で選べる | できる | 上場株式等のグループ |
| 個人向け国債・公募社債(特定公社債) | 入る | 利子:利子所得/売却・償還の差益:上場株式等の譲渡所得等 | 口座で選べる | できる | 上場株式等のグループ |
| 非上場株式(株式投資型クラウドファンディングで取得した株など) | 入らない | 一般株式等の譲渡所得等 | できない(申告分離課税) | できない | 一般株式等のグループ |
| 匿名組合出資(不動産型・融資型・ファンド型の多く) | 入らない | 分配:雑所得(総合課税) | できない | できない | 雑所得の中だけ |
| 任意組合型の不動産クラウドファンディング | 入らない | 不動産所得(総合課税) | できない | — | 不動産所得 |
| 預貯金 | 入らない | 利子所得(源泉分離課税15%+住民税5%) | 源泉徴収で完結 | — | — |
| NISA口座の上場株式等 | (非課税口座) | 非課税 | — | 損失はないものとみなす | — |
表の右端が大事です。損益を合わせられるのは同じグループの中だけです。上場株式等のグループ(上場株式・投信・REIT・特定公社債)の譲渡損失は、確定申告をすれば、同じ年の上場株式等の配当・利子(申告分離課税を選んだもの)と通算でき、残りは翌年以後3年間繰り越せます(国税庁 No.1474、措法37条の12の2)。一般株式等の損失は上場株式等と通算できず、雑所得の損失は給与などの他の所得とも通算できません(所得税法69条は損益通算できる所得を不動産・事業・山林・譲渡の4つに限っています)。
NISA口座で出た損失は、所得税に関する法令の適用上「ないものとみなす」とされ(措法37条の14第2項)、通算も繰越もできません(国税庁 No.1474 の注3)。
053つの口座の違い
| 特定口座・源泉徴収あり | 特定口座・源泉徴収なし(簡易申告口座) | 一般口座 | |
|---|---|---|---|
| 損益の計算 | 金融商品取引業者等が行う | 金融商品取引業者等が行う | 自分で行う(取得費の計算を含む) |
| 年間取引報告書 | 翌年1月31日までに交付 | 同じ | なし |
| 源泉徴収 | 売却のたびに譲渡益の20.315%(損が出れば還付) | なし | なし |
| 申告 | しないこともできる(口座ごとに選ぶ) | 必要(報告書で簡単にできる) | 必要 |
| 配当・利子の受け入れ | 届け出れば受け入れ、口座内の損失と自動で通算 | — | — |
| 開設の数 | 1つの金融商品取引業者等につき1口座 | 同じ | — |
根拠は、損益の区分計算が措法37条の11の3第1項、年間取引報告書が同条第7項、源泉徴収が37条の11の4第1項(所得税等15.315%)と地方税法71条の49(住民税の株式等譲渡所得割5%)、申告不要が37条の11の5、配当の受け入れと通算が37条の11の6です。1社1口座は国税庁 No.1476 の概要にあります。
源泉徴収ありを選ぶには、その年最初の売却の時までに「特定口座源泉徴収選択届出書」を出す必要があり、選択は年単位で、年の途中で変えることはできません(国税庁 No.1476)。源泉徴収なしの口座で利益が出た人が「今年は源泉徴収ありにしておけば申告が要らなかった」と気づいても、その年の分は変えられません。
06源泉徴収ありの口座の1年を追う
源泉徴収ありの特定口座では、売却のたびに、その年のそれまでの損益を通算した額に対して源泉徴収され、損が出て通算後の額が減れば、取りすぎた分がその場で戻されます(措法37条の11の4第1項・第3項)。ある年の売却の流れを例に、源泉徴収と還付の動きを計算しました。
| 月 | 取引 | その売却の損益 | 年初からの通算 | その時の源泉徴収・還付 | 源泉徴収の累計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2月 | 銘柄A売却 | +400,000円 | +400,000円 | 源泉徴収 81,260円 | 81,260円 |
| 4月 | 銘柄B売却 | −250,000円 | +150,000円 | 還付 50,788円 | 30,472円 |
| 6月 | 銘柄C売却 | +300,000円 | +450,000円 | 源泉徴収 60,945円 | 91,418円 |
| 9月 | 銘柄D売却 | −500,000円 | −50,000円 | 還付 91,418円 | 0円 |
| 11月 | 銘柄E売却 | −150,000円 | −200,000円 | なし | 0円 |
この年の譲渡損益の合計は−200,000円で、源泉徴収の累計は0円です。年の途中で源泉徴収された税は、損が出た4月・9月の売却で戻っています。
同じ口座に上場株式等の配当20万円を受け入れていた場合、配当の源泉徴収は、受け取るときに40,630円差し引かれますが、口座内の譲渡損失と通算して計算し直され、年末の計算では0円になります(措法37条の11の6第6項)。差の40,630円は、金融商品取引業者等が還付しなければならないと定められています(同条第7項)。配当を銀行振込などで受け取っていると、この自動の通算は効きません。
07売る順番で、年の途中に差し引かれる額が変わる
前の節の5つの売却(損益の合計−200,000円)は、どの順番で売っても年末の源泉徴収は0円で同じです。ただ、年の途中でいちばん多く差し引かれている額(山の高さ)は、順番で変わります。5つの売却の並べ方120通りをすべて計算しました。
| 年の途中の源泉徴収の最大額 | 並べ方の数 | 割合 |
|---|---|---|
| 0円以上50,000円未満 | 53通り | 44.2% |
| 50,000円以上100,000円未満 | 47通り | 39.2% |
| 100,000円以上150,000円未満 | 20通り | 16.7% |
| 150,000円以上200,000円未満 | 0通り | 0.0% |
| 200,000円以上 | 0通り | 0.0% |
山の高さは最小0円、中央値60,945円、最大142,205円でした。120通りのうち34通りは、山の高さが年末の額と同じ(途中で多めに差し引かれない)並べ方です。利益の出る売却が先に続くと、その分が先に差し引かれ、後の損失の売却で戻ってきます。年間の税は変わらないので、違いは「いったん口座から出ていくお金」の大きさとその期間だけです。
08配当を口座に受け入れると、損失と自動で合わさる
源泉徴収ありの口座で譲渡損失が出た年に、上場株式等の配当30万円を受け取った場合です。配当を口座に受け入れる届出をしていれば、口座の中で譲渡損失と通算して源泉徴収が計算し直されます(措法37条の11の6第6項)。受け入れていなければ、配当は受け取るときの20.315%で終わります。
| 口座の譲渡損失 | 受け入れない場合の配当の税 | 受け入れた場合の配当の税 | 差(受け入れで少なくなる額) | それでも残る損失 |
|---|---|---|---|---|
| 0万円 | 60,945円 | 60,945円 | 0円 | — |
| 10万円 | 60,945円 | 40,630円 | 20,315円 | — |
| 20万円 | 60,945円 | 20,315円 | 40,630円 | — |
| 30万円 | 60,945円 | 0円 | 60,945円 | — |
| 40万円 | 60,945円 | 0円 | 60,945円 | 10万円 |
| 60万円 | 60,945円 | 0円 | 60,945円 | 30万円 |
損失が配当より小さいうちは、損失の額×20.315%がそのまま少なくなります。損失が配当を超えると、配当の税は0円で止まり、超えた分は口座の中では使えません。残った損失は、確定申告をすれば他の口座の利益と通算したり、翌年以後に繰り越したりできます(国税庁 No.1474)。受け入れの届出をしていない配当と通算したい場合も、確定申告で行うことになります。
口座に受け入れられるのは、その金融商品取引業者等を通じて支払を受ける上場株式等の配当等(一定の大口株主等が受けるものを除く)です(国税庁 No.1476)。その金融商品取引業者等を通さずに受け取る配当は、この仕組みの外になります。
09年間取引報告書に書かれること
特定口座の年間取引報告書には、その年に口座で処理された次の事項が書かれます(措法37条の11の3第7項)。確定申告をするときは、この数字を申告書に移します。
| 報告書の項目 | 中身 | 申告での使い道 |
|---|---|---|
| 譲渡の対価の額 | その年に売った上場株式等の売却代金の合計 | 収入金額 |
| 取得費の額 | 売った上場株式等の取得費(口座の中で平均した額) | 収入から差し引く |
| 譲渡に要した費用の額 | 売買手数料など | 収入から差し引く |
| 譲渡に係る所得の金額又は差益の金額 | 上の3つから計算した損益 | 他の口座と通算する金額 |
| 受け入れた上場株式等の配当等の額 | 口座に受け入れた配当・分配金・利子 | 申告分離で通算する配当等の金額 |
同じ報告書が金融商品取引業者等から税務署長にも提出されます(同項)。一般口座には報告書がないので、売買の記録(約定の日付・株数・単価・手数料)を自分で残しておく必要があります。取得費の計算方法は後の節で扱います。
公募投資信託の解約や償還で受け取る金額も、上場株式等の譲渡の収入金額とみなされます(措法37条の11第4項第1号)。投資信託を解約したときの損益も、株式の売却と同じ欄で扱われます。
10口座を開いてから閉じるまで
| 場面 | 決まりごと | 条文 |
|---|---|---|
| 開設 | 特定口座開設届出書を出し、住民票の写しなどの提示や署名用電子証明書等の送信で、氏名・生年月日・住所・個人番号を告知して確認を受ける | 措法37条の11の3第3項第1号・第4項 |
| 重ねての開設 | 同じ金融商品取引業者等に特定口座がすでにある人の届出書は受理できない(課税未成年者口座の場合を除く) | 同条第5項 |
| 源泉徴収の選択 | その年最初の売却(または信用取引の差金決済)の時までに特定口座源泉徴収選択届出書を出す | 措法37条の11の4第1項 |
| 配当の受け入れ | 源泉徴収選択口座内配当等受入開始届出書を出すと、口座に上場株式等の配当等を受け入れ、口座内の譲渡損失と通算できる | 措法37条の11の6第1項・第2項 |
| 信用取引 | 上場株式等信用取引等契約に基づき、特定口座の中の特定信用取引等勘定で処理できる | 措法37条の11の3第2項・第3項第3号 |
| 年間取引報告書 | 翌年1月31日まで(年の途中で廃止したときは翌月末日まで)に2通作り、1通を税務署長へ、1通を本人へ | 措法37条の11の3第7項 |
| 取引のなかった年 | 売却も配当の受け入れもなかった年は、請求がなければ本人への報告書の交付は要らない | 同条第8項 |
| 電子での交付 | 本人の承諾を得て、報告書を電磁的方法で提供できる | 同条第9項 |
開設から毎年の報告書まで、手続の大半は金融商品取引業者等の側の義務として書かれています。投資家の側で期限があるのは、源泉徴収を選ぶ届出(その年最初の売却まで)と、配当を口座に受け入れる届出です。
11口座から口座へ移すとき
特定口座に入れられる経路は法令で決まっています。主なものを並べました。
| 移す元 | 移せるか | 条件 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 同じ人の、別の金融商品取引業者等の特定口座 | 移せる | 一部だけ移すときは、同じ銘柄は全部まとめて移す | 措法37条の11の3第3項第2号ロ |
| 同じ金融商品取引業者等のNISA口座 | 移せる | 移管依頼書を出す。一部だけ移すときは、その勘定の同じ銘柄を全部まとめて移す | 措令25条の10の2第14項第27号 |
| 亡くなった人・贈与した人の特定口座や一般口座 | 移せる | 相続・遺贈で取得した同じ銘柄は全部移すなど | 同項第3号・第4号 |
| 同じ口座の株式の分割・併合、無償割当て | 受け入れる | その特定口座に記録する方法で受け入れる | 同項第5号・第6号 |
| その金融商品取引業者等の募集・売出しで取得したもの | 受け入れる | — | 同項第1号 |
| 特定譲渡制限付株式(譲渡制限の解除時) | 受け入れる | 同じ金融商品取引業者等の特定口座以外の口座から、制限が解除されたもの全部 | 同項第25号 |
「同じ銘柄は全部まとめて」という条件が、他の特定口座からの移管、NISA口座からの移管、相続による移管のいずれにも付いています。同じ銘柄を2つの口座に分けて持ったまま一部だけを移す、ということはできない作りです。
12信用取引も特定口座で処理できる
信用取引(金融商品取引法156条の24第1項の信用取引)や発行日取引を行う人は、上場株式等信用取引等契約を結ぶと、特定口座の中の特定信用取引等勘定で処理できます(措法37条の11の3第2項・第3項第3号)。源泉徴収ありの口座なら、差金決済による差益にも売却と同じように源泉徴収され、損が出れば還付されます(措法37条の11の4第1項)。
特定信用取引等勘定で処理できるのは、特定口座開設届出書を出した後に始めた信用取引等に限られます(同条第3項第3号)。口座の中の現物の売買と信用取引の損益は、同じ特定口座の中で通算されます。
13源泉徴収あり・なしで、税を払う時期が違う
源泉徴収ありとなしで、1年の税の合計は同じです。違うのは払う時期です。源泉徴収ありは売るたびに口座で差し引かれ、なしは翌年の確定申告(3月15日まで。所得税法120条第1項の第三期)で払います。前の節の5つの売却について、源泉徴収ありの口座で差し引かれた額(マイナスは還付)と、翌年3月までの月数を並べました。
| 売却の月 | 源泉徴収(+)・還付(−) | 翌年3月までの月数 | 額×月数 |
|---|---|---|---|
| 2月 | +81,260円 | 13か月 | +105.6万円×月 |
| 4月 | −50,788円 | 11か月 | -55.9万円×月 |
| 6月 | +60,945円 | 9か月 | +54.9万円×月 |
| 9月 | −91,418円 | 6か月 | -54.9万円×月 |
| 11月 | ±0円 | 4か月 | +0.0万円×月 |
額×月数の合計は49.8万円×月です。源泉徴収ありは、源泉徴収なしで申告する場合と比べて、この分だけ早く税を払っている計算になります。利息がつくわけではないので金額としては小さな差ですが、源泉徴収なしを選んで利益が出た年は、翌年3月に申告と納付が必要になる、という手続の差の方が大きいと言えます。
14非上場株式を売ったときは、口座の外で申告する
株式投資型クラウドファンディングなどで取得した非上場株式を売った場合は、一般株式等の譲渡所得等として申告分離課税で申告します。税率は所得税等15.315%(措法37条の10第1項の15%と復興特別所得税)と住民税5%(地方税法附則35条の2)で、上場株式等と同じ20.315%ですが、特定口座には入らず、源泉徴収で終える仕組みもありません。
| 取得額 | 売却額 | 譲渡損益 | 税(20.315%) | 損失を上場株式等と通算 |
|---|---|---|---|---|
| 100,000円 | 500,000円 | +400,000円 | 81,260円 | — |
| 300,000円 | 300,000円 | ±0円 | 0円 | — |
| 500,000円 | 150,000円 | −350,000円 | 0円 | できない(一般株式等の中だけ) |
損失が出た場合、上場株式等の利益とは通算できません(国税庁 No.1465)。一般株式等の中で通算できる利益がなければ、その損失は使われないまま終わります(特定中小会社の株式の特例を受けられる場合を除く)。
15口座の組み合わせで、申告が要るか・税が戻るか
口座の組み合わせと損益の出方を変えて、口座の中で完結させた場合と、確定申告で全部を通算した場合の税(上場株式等の20.315%)を比べました。「繰り越せる損失」は、通算しても残って翌年へ繰り越せる額です。
| 口座と損益の組み合わせ | 口座で完結させた場合の税 | 確定申告で通算した場合の税 | 繰り越せる損失 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 源泉あり口座1つで、譲渡益だけ | 121,890円 | 121,890円 | — | 通算しても同じ |
| 源泉あり口座1つで、益と損が同じ口座 | 101,575円 | 101,575円 | — | 通算しても同じ |
| 源泉あり口座Aで益、源泉あり口座Bで損 | 162,520円 | 101,575円 | — | 通算で60,945円戻る |
| 源泉あり口座で損、配当を同じ口座で受け取り | 0円 | 0円 | 20万円 | 通算しても同じ |
| 源泉あり口座で損、配当は銀行で受け取り(申告不要のまま) | 40,630円 | 0円 | 20万円 | 通算で40,630円戻る |
| 源泉なし口座(簡易申告口座)で益 | 申告が必要 | 121,890円 | — | 申告は必須 |
| 一般口座で益、源泉あり口座で損 | 申告が必要 | 40,630円 | — | 申告は必須 |
7通りのうち、通算で税が戻るのは2通りでした。いずれも、損失と利益(または配当)が別々の口座・別々の受け取り方にあって、源泉徴収ありの口座の中だけでは通算されない組み合わせです。損益が1つの源泉徴収ありの口座の中で完結している場合は、通算しても税は変わりません。
源泉徴収なしの口座と一般口座は、利益が出れば申告が前提です。一般口座の利益を源泉徴収ありの口座の損失と通算するときも、源泉徴収ありの口座を申告に含める必要があります。
国民健康保険に入っている人は、申告に含めた利益が保険料の計算にも入ります。戻る税と増える保険料の比べ方は国民健康保険料と投資の利益で扱っています。
16損失の繰越控除は、申告を続けないと消える
上場株式等の譲渡損失は、確定申告をすれば翌年以後3年間繰り越して、その年の上場株式等の譲渡益や配当から差し引けます。繰り越すには、損失が出た年に申告し、その後の年も連続して申告する必要があります(国税庁 No.1474。取引がなかった年も申告が必要)。1年目に大きな損失が出て、2年目以降に利益が出た例で計算しました。
| 年 | その年の損益 | 繰越損失から差し引いた額 | 年末の繰越損失の残り | 税(申告を続けた場合) | 税(1年目に申告しなかった場合) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1年目 | −1,200,000円 | — | 120万円 | 0円 | 0円 |
| 2年目 | +300,000円 | 300,000円 | 90万円 | 0円 | 60,945円 |
| 3年目 | +400,000円 | 400,000円 | 50万円 | 0円 | 81,260円 |
| 4年目 | +350,000円 | 350,000円 | 15万円 | 0円 | 71,102円 |
| 5年目 | +500,000円 | — | 0万円 | 101,575円 | 101,575円 |
申告を続けた場合の5年間の税の合計は101,575円、1年目に申告しなかった場合は314,882円で、差は213,308円です。3年の期限内に損失を使いきれています。源泉徴収ありの口座で利益が出た年は、繰越控除を受けるために申告すると、源泉徴収された税が戻ります。
17どの口座を申告に含めるかは、口座ごとに選べる
源泉徴収ありの口座の損益は、口座ごとに確定申告に含めるかどうかを選べます(国税庁 No.1476)。3つの源泉徴収ありの口座があり、A口座で譲渡益50万円、B口座で譲渡損失80万円、C口座で譲渡益60万円が出た年を例に、通算に含める口座の組み合わせをすべて計算しました(配当はないものとします)。
| 通算に含める口座 | 含めた口座の損益の合計 | その口座で源泉徴収された税 | 通算後の税 | 戻る税 | 繰り越せる損失 | 通算後の利益(純額) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A | +500,000円 | 101,575円 | 101,575円 | 0円 | — | 50万円 |
| B | −800,000円 | 0円 | 0円 | 0円 | 80万円 | 0万円 |
| C | +600,000円 | 121,890円 | 121,890円 | 0円 | — | 60万円 |
| A+B | −300,000円 | 101,575円 | 0円 | 101,575円 | 30万円 | 0万円 |
| A+C | +1,100,000円 | 223,465円 | 223,465円 | 0円 | — | 110万円 |
| B+C | −200,000円 | 121,890円 | 0円 | 121,890円 | 20万円 | 0万円 |
| A+B+C | +300,000円 | 223,465円 | 60,945円 | 162,520円 | — | 30万円 |
戻る税が最も大きいのは「A+B+C」を含めた場合の162,520円です。損失のあるB口座を含めない組み合わせでは、税は戻りません。B口座とどちらか1つの利益の口座だけを含めると、残った損失を翌年に繰り越せます。すべてを含めると、その年の税は最も小さくなりますが、繰り越せる損失は残りません。国民健康保険に入っている人は、最後の列の純額が保険料の計算に入るので、戻る税と合わせて比べることになります。
18損失と利益を合わせられる組み合わせ
損失の出た所得と、利益の出た所得を合わせられるかどうかを、行(損失)×列(利益)で並べました。「○」は同じ年の中で差し引ける、「×」は差し引けない組み合わせです。
| 損失 \ 利益 | 上場株式等の譲渡益 | 上場株式等の配当・利子(申告分離) | 一般株式等の譲渡益 | 雑所得(匿名組合の分配など) | 給与・事業などの所得 |
|---|---|---|---|---|---|
| 上場株式等の譲渡損失 | ○ | ○(確定申告で) | × | × | × |
| 一般株式等(非上場株式)の譲渡損失 | ×(特定中小会社の株式の特例を除く) | × | ○ | × | × |
| 雑所得の損失 | × | × | × | ○(雑所得の中で) | × |
| 不動産所得・事業所得の損失 | × | × | × | ○ | ○(不動産所得の損失には措法41条の4・41条の4の2の制限あり) |
| NISA口座の損失 | × | × | × | × | × |
根拠は、上場株式等と一般株式等の区別と通算の制限が国税庁 No.1465、上場株式等の譲渡損失と配当等の通算が措法37条の12の2第1項、雑所得の金額が「総収入金額から必要経費を控除した金額」の合計として計算されること(雑所得の中で損益が合わさる)が所得税法35条第2項、他の所得と損益通算できるのが不動産・事業・山林・譲渡の4つであることが所得税法69条、NISAの損失が措法37条の14第2項です。不動産所得・事業所得の損失は、株式等の分離課税の所得とは通算できません(No.1465の(2))。
公募投資信託の分配金のうち、信託財産の元本の払戻しに相当する部分(特別分配金)は所得税がかかりません(所得税法9条第1項第11号、所得税法施行令27条)。口座の種類にかかわらず同じ扱いです。また、同族会社が発行した社債の利子で、その同族会社の株主などが受けるものは、特定公社債の利子であっても総合課税になる例外があります(国税庁 No.1310)。
19積立で買い続けたときの取得単価
特定口座で投資信託を毎月30,000円ずつ買い続けた場合、口座の中の取得単価は、買うたびに全体の平均として計算し直されます(総平均法に準ずる方法。措令25条の10の2第1項が所得税法施行令118条を適用すると定めています)。仮の基準価額で1年分を計算しました。
| 月 | 基準価額(1万口あたり・仮) | 買えた口数 | 保有口数 | 買付額の累計 | 平均取得単価(1万口あたり) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1月 | 10,000円 | 30,000口 | 30,000口 | 30,000円 | 10,000円 |
| 2月 | 9,600円 | 31,250口 | 61,250口 | 60,000円 | 9,796円 |
| 3月 | 9,200円 | 32,609口 | 93,859口 | 90,000円 | 9,589円 |
| 4月 | 9,800円 | 30,612口 | 124,471口 | 120,000円 | 9,641円 |
| 5月 | 10,400円 | 28,846口 | 153,317口 | 150,000円 | 9,784円 |
| 6月 | 10,100円 | 29,703口 | 183,020口 | 180,000円 | 9,835円 |
| 7月 | 9,700円 | 30,928口 | 213,948口 | 210,000円 | 9,815円 |
| 8月 | 10,300円 | 29,126口 | 243,074口 | 240,000円 | 9,874円 |
| 9月 | 10,800円 | 27,778口 | 270,852口 | 270,000円 | 9,969円 |
| 10月 | 11,000円 | 27,273口 | 298,125口 | 300,000円 | 10,063円 |
| 11月 | 10,600円 | 28,302口 | 326,427口 | 330,000円 | 10,109円 |
| 12月 | 11,200円 | 26,786口 | 353,212口 | 360,000円 | 10,192円 |
12月に保有口数の半分(176,606口)を基準価額11,200円で売ると、取得単価は1年分の平均10,192円で計算され、譲渡益は17,799円です。基準価額が安かった月に買った口から売ったと考えると26,379円になりますが、そのような選び方はできません。特定口座では、この平均の計算を金融商品取引業者等が行い、年間取引報告書の「取得費の額」に反映します。
20同じ銘柄を2つの口座で持つと、平均は別々になる
同じ銘柄を特定口座と一般口座の両方で持っている場合、取得費の平均は口座ごとに別々に計算します。条文は、特定口座の中の上場株式等とそれ以外の同じ銘柄の上場株式等を「それぞれその銘柄が異なるものとして」扱うと定めています(措令25条の10の2第1項第2号)。特定口座が複数ある場合も、特定口座ごとに計算します(同項の柱書き)。
特定口座で200株を1,000円、100株を1,300円で買い、一般口座に以前300株を700円で買ったものがある人が、150株を1,200円で売る場合です。
| どちらから売るか | 1株あたりの取得費 | 譲渡損益 | 税(20.315%) |
|---|---|---|---|
| 特定口座から売る | 1,100円(特定口座の中だけで平均) | +15,000円 | 3,047円 |
| 一般口座から売る | 700円(一般口座の中だけで平均) | +75,000円 | 15,236円 |
| (誤り)両方を合わせて平均した場合 | 900円 | +45,000円 | 9,142円 |
どちらの口座から売るかで、同じ150株の売却でも譲渡損益が60,000円違います。両方を合わせて平均する計算は、この規定があるので使えません。また、1つの特定口座で同じ日に同じ銘柄を2回以上売った場合は、その日の最後の売却の時にまとめて売ったものとみなして平均を計算します(同項第3号)。
21繰り越した損失を3年で使いきれるか
繰り越せるのは損失が出た年の翌年以後3年間です(国税庁 No.1474)。1年目の損失の大きさと、2年目以降に毎年出る利益(上場株式等の譲渡益・申告分離の配当)の組み合わせで、3年間に使える額と期限切れになる額を計算しました。
| 1年目の損失 | 2〜4年目の毎年の利益 | 3年間で差し引けた額 | 期限切れの額 | 少なくなった税(3年分) |
|---|---|---|---|---|
| 50万円 | 30万円 | 50万円 | 0万円 | 101,575円 |
| 50万円 | 60万円 | 50万円 | 0万円 | 101,575円 |
| 100万円 | 30万円 | 90万円 | 10万円 | 182,835円 |
| 100万円 | 60万円 | 100万円 | 0万円 | 203,150円 |
| 200万円 | 30万円 | 90万円 | 110万円 | 182,835円 |
| 200万円 | 60万円 | 180万円 | 20万円 | 365,670円 |
| 300万円 | 30万円 | 90万円 | 210万円 | 182,835円 |
| 300万円 | 60万円 | 180万円 | 120万円 | 365,670円 |
8通りのうち、期限切れの損失が残ったのは5通りでした。毎年の利益の3倍を超える損失は、3年では使いきれません。源泉徴収ありの口座で利益が出た年は、繰越損失を差し引くと、口座で差し引かれた税が確定申告で戻ります。
223社の年間取引報告書を合計する
複数の金融商品取引業者等に特定口座を持っている人が確定申告で通算するときは、各社の年間取引報告書の数字を足し合わせます。3社の例です(配当等は各社の口座に受け入れたもの)。
| 口座 | 譲渡の対価の額 | 取得費の額 | 譲渡に要した費用の額 | 差引の損益 | 受け入れた配当等 |
|---|---|---|---|---|---|
| X社(源泉徴収あり) | 4,200,000円 | 3,500,000円 | 12,000円 | +688,000円 | 150,000円 |
| Y社(源泉徴収あり) | 1,800,000円 | 2,300,000円 | 6,000円 | −506,000円 | 60,000円 |
| Z社(源泉徴収なし) | 900,000円 | 700,000円 | 3,000円 | +197,000円 | 0円 |
| 合計 | 6,900,000円 | 6,500,000円 | 21,000円 | +379,000円 | 210,000円 |
3社を合計した譲渡損益は+379,000円、配当等は210,000円です。通算した後の税は119,655円で、源泉徴収ありの2社で差し引かれていた170,240円との差が、確定申告で精算されます。Y社の口座では、受け入れた配当等が口座の中の損失と通算されて源泉徴収が0円になっています(措法37条の11の6)。源泉徴収なしのZ社の口座は、利益が出ていれば申告に含めることが前提です。Y社のように口座の中で損失が出ている場合、合計に含めることで他社の利益と通算されます。
231年の手続の流れ
| 時期 | やること | 根拠 |
|---|---|---|
| その年最初の売却の前 | 源泉徴収ありにするなら、特定口座源泉徴収選択届出書を出す(年単位。途中で変えられない) | 措法37条の11の4第1項、国税庁 No.1476 |
| 年の途中 | 源泉徴収ありの口座では、売却のたびに通算後の額で源泉徴収・還付 | 措法37条の11の4第1項・第3項 |
| 12月31日 | その年の損益が確定。口座に受け入れた配当の税は、口座内の損失と通算して計算し直される | 措法37条の11の6第6項・第7項 |
| 翌年1月31日まで | 金融商品取引業者等が年間取引報告書を本人と税務署長に出す | 措法37条の11の3第7項 |
| 翌年2月16日〜3月15日 | 口座をまたぐ通算・繰越控除・源泉徴収なしの口座の利益を、確定申告で申告する | 所得税法120条第1項(第三期) |
| 以後3年間 | 繰越損失がある間は、取引のない年も連続して申告する | 国税庁 No.1474 |
一般口座だけで取引している人は、年間取引報告書がないので、12月31日の時点で自分の売買の記録から損益を集計することになります。
24一般口座の取得費は、自分で平均を計算する
一般口座では、売った株の取得費を自分で計算します。同じ銘柄を何回かに分けて買った場合は「総平均法に準ずる方法」で1株あたりの取得価額を出し、1円未満の端数は切り上げます(国税庁 No.1466)。1年の中で3回買い、2回売った例です(手数料は省いています)。
| 月 | 取引 | 株数 | 単価 | 金額 | 取得費の計算 | 譲渡損益 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1月 | 購入 | 300株 | 1,200円 | 360,000円 | — | — |
| 3月 | 購入 | 200株 | 1,350円 | 270,000円 | — | — |
| 5月 | 売却 | 250株 | 1,500円 | 375,000円 | 1,260円×250株=315,000円 | +60,000円 |
| 8月 | 購入 | 400株 | 1,100円 | 440,000円 | — | — |
| 11月 | 売却 | 450株 | 1,300円 | 585,000円 | 1,162円×450株=522,900円 | +62,100円 |
2回の売却の譲渡損益の合計は+122,100円です。買った順に売ったとみなす(先入先出)と+110,000円になり、12,100円ずれます。一般口座で申告するときは、売るたびにそれまでの購入をまとめて平均する、という手順を守ってください。特定口座なら、この計算は金融商品取引業者等が行います。
25上場廃止になった株が価値を失ったとき
特定口座で持っていた株式が上場株式等に当たらなくなった(上場廃止になった)場合、その株式を同じ金融商品取引業者等の「特定管理口座」に移しておくと、発行会社の清算結了などで株式としての価値を失ったときに、その事実を譲渡とみなし、損失を上場株式等の譲渡損失とみなす特例があります(措法37条の11の2第1項)。特定口座で持っていた内国法人の社債(特定口座内公社債)が価値を失った場合も同じです。
取得費50万円の株式が価値を失い、同じ年に他の上場株式等の譲渡益80万円があった場合です。
| 持っていた場所 | 扱い | みなされる譲渡損失 | その年の譲渡益にかかる税 | 少なくなる税 |
|---|---|---|---|---|
| 特定口座から特定管理口座に移しておいた株式 | 清算結了などの事実が起きた時に譲渡損失とみなす | −500,000円 | 60,945円 | 101,575円 |
| 一般口座で持っていた株式 | この特例の対象外 | — | 162,520円 | 0円 |
この特例は、特定口座から特定管理口座に移されたものと、特定口座内の公社債だけが対象です。一般口座で持っていた株式には使えません。通算・繰越控除には確定申告が要ります(措法37条の12の2)。非上場株式(株式投資型クラウドファンディングで取得した株など)が価値を失った場合は別の制度(エンジェル税制の特例)があり、優遇措置AとBはどちらが得かで扱っています。
26債券も特定口座に入る。償還差損は通算できる
特定公社債は上場株式等に含まれるので、特定口座で持てます。利子は上場株式等の配当等として20.315%が源泉徴収され、売却や償還で出た差益・差損は上場株式等の譲渡所得等になります(公社債の元本の償還による金額は、措法37条の10第3項第8号・37条の11第3項で譲渡の収入金額とみなされます)。
額面100万円の社債を1,015,000円で買い、3年後に額面で償還を迎えた場合を計算しました。利率は、当サイトが集めた個人向け社債(2025-08-28〜2026-10-16に届け出があった固定金利94本)の中央値2.308%を使っています。
| 扱い | 利子の合計(税引前) | 償還差損 | 税の合計 | 差し引きの手取り |
|---|---|---|---|---|
| 償還差損を申告しない(口座外・通算しない) | 69,240円 | -15,000円 | 14,066円 | 40,174円 |
| 同じ源泉徴収口座で利子と通算 | 69,240円 | -15,000円 | 11,019円 | 43,221円 |
償還差損15,000円を同じ源泉徴収口座の利子と通算すると、税は3,047円少なくなります。額面より高く買った債券は、利子を受け取る一方で償還のときに差損が出ます。差損を利子と通算できるかどうかで、手取りが変わります。額面で買って額面で償還を迎える債券なら、償還差損は出ません。
27社債の利率と、額面より高く買ったときの利回り
特定口座で持てる債券のうち、個人向けに募集された固定金利の社債94本(2025-08-28〜2026-10-16)の利率を、年限ごとにまとめました。税引後は、利子に20.315%がかかった後の率です。
| 年限 | 本数 | 利率の中央値 | 最低 | 最高 | 税引後(中央値) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1年前後 | 22本 | 1.760% | 1.300% | 2.456% | 1.402% |
| 3年前後 | 10本 | 2.010% | 1.420% | 2.943% | 1.602% |
| 5年前後 | 25本 | 2.271% | 1.456% | 4.370% | 1.810% |
| 7年前後 | 8本 | 3.099% | 2.025% | 4.750% | 2.470% |
| 10年前後 | 27本 | 2.960% | 1.813% | 3.606% | 2.359% |
募集で買う社債は額面で買うので、償還差損は出ません。途中で売買される債券を額面より高い価格で買うと、償還のときに差損が出ます。年限ごとの中央値の利率の債券を、額面100円あたり100.5円〜102円で買った場合の、税引後の年あたりの利回りを計算しました(利子は再投資しない単純な計算です)。
| 年限 | 利率(中央値) | 買った価格 | 差損を通算しない場合 | 差損を利子と通算した場合 | 差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 3年 | 2.010% | 100.5円 | 1.428% | 1.462% | 0.034% |
| 3年 | 2.010% | 101.0円 | 1.256% | 1.323% | 0.067% |
| 3年 | 2.010% | 102.0円 | 0.917% | 1.049% | 0.133% |
| 5年 | 2.271% | 100.5円 | 1.701% | 1.721% | 0.020% |
| 5年 | 2.271% | 101.0円 | 1.594% | 1.634% | 0.040% |
| 5年 | 2.271% | 102.0円 | 1.382% | 1.462% | 0.080% |
| 10年 | 2.960% | 100.5円 | 2.297% | 2.307% | 0.010% |
| 10年 | 2.960% | 101.0円 | 2.236% | 2.256% | 0.020% |
| 10年 | 2.960% | 102.0円 | 2.116% | 2.156% | 0.040% |
差損を通算すると、差損×20.315%だけ税が少なくなります。通算しないと、利子には満額で税がかかり、差損は手取りから丸ごと引かれます。年限が短いほど、1年あたりの差は大きくなります。同じ源泉徴収ありの口座で利子を受け取っていれば、この通算は口座の中で行われます(措法37条の11の6)。
28投資先ごとに、置ける口座
| 投資先 | NISA口座 | 特定口座 | 一般口座 |
|---|---|---|---|
| 上場株式 | ○(成長投資枠) | ○ | ○ |
| ETF・J-REIT・上場インフラファンド | ○(成長投資枠。つみたて投資枠は一定の投資信託のみ) | ○ | ○ |
| 公募株式投資信託 | ○(つみたて投資枠・成長投資枠。要件あり) | ○ | ○ |
| 個人向け国債・公募社債 | ×(NISAの対象は株式等の1号〜5号で、公社債は入らない) | ○ | ○ |
| 非上場株式 | × | × | —(一般株式等として申告) |
| 匿名組合出資・任意組合出資 | × | × | ×(事業者との契約で持つ) |
NISA口座で持てるのは、措法37条の14第1項各号の上場株式等(株式、公募の株式投資信託、上場投資法人の投資口など)で、公社債は入っていません(同項第1号イが引く37条の10第2項第1号〜第5号に公社債(第7号)が含まれないため)。国債・社債を持つなら、特定口座か一般口座になります。NISAの枠を使い切った後にどこに何を置くかは、NISAの枠を使い切った後、どこに置くかで計算しています。
29口座を選ぶときの順番
| 確かめること | こうなら | 口座の選び方 |
|---|---|---|
| 持とうとしているのは上場株式等か | 非上場株式・匿名組合・任意組合・預貯金 | 特定口座は関係ない。商品ごとの所得区分で申告する |
| NISAの枠は残っているか | 残っている | NISA口座の損失は通算も繰越もできない点を知った上で使う |
| 確定申告をしたくないか | したくない | 源泉徴収あり。口座内の損益と配当は自動で通算される |
| 複数の証券会社を使うか | 使う | 口座をまたぐ通算は申告でしかできない |
| 国民健康保険に入っているか | 入っている | 申告に含めた利益は保険料の計算に入る。源泉徴収ありで申告しない選択肢を残す |
| その年の最初の売却の前か | 前 | 源泉徴収の有無はこの時までに選ぶ。年の途中では変えられない |
分配金を受け取る銀行口座を分けるかどうかは税とは関係のない話で、分配金を受け取る口座を分けるべきかで扱っています。
30よくある質問
特定口座と一般口座で、税率は違いますか。
違いません。上場株式等の譲渡益は、どの口座でも所得税等15.315%と住民税5%です。違うのは、損益の計算を誰がするかと、源泉徴収・申告の要否です。
クラウドファンディングの分配金を特定口座で受け取れますか。
受け取れません。匿名組合出資は上場株式等ではなく、分配は雑所得です。特定口座を開設できるのも第一種金融商品取引業者・登録金融機関・投資信託委託会社に限られます(措法37条の11の3第3項第1号)。
株式投資型クラウドファンディングで買った株は特定口座に入りますか。
非上場株式は上場株式等ではないので入りません。売却益は一般株式等の譲渡所得等として申告分離課税になり、上場株式等の損失とは通算できません(国税庁 No.1465)。
個人向け国債は特定口座で持てますか。
国債は上場株式等に含まれる(措法37条の11第2項第5号)ので、取扱いのある金融機関なら特定口座で持てます。利子は20.315%が源泉徴収され、申告不要を選べます。
源泉徴収ありの口座でも申告した方がいいのはどんな時ですか。
別の口座の損失と通算するとき、損失を翌年に繰り越すとき、配当を総合課税にして配当控除を受けるときです。申告した利益は合計所得金額に入るので、その点も合わせて確かめてください。
源泉徴収ありの口座を途中で源泉徴収なしに変えられますか。
年の途中では変えられません。源泉徴収の選択は年単位で、その年最初の売却の時までに届け出ます(国税庁 No.1476)。翌年から変えることはできます。
上場廃止になった株はどうなりますか。
特定口座から特定管理口座に移しておくと、その後に発行会社の清算結了などで価値を失ったとき、損失を上場株式等の譲渡損失とみなして通算・繰越ができます(措法37条の11の2)。
一般口座の株を特定口座に移せますか。
特定口座に受け入れられる上場株式等は、措法37条の11の3第3項第2号イ〜ハと措令25条の10の2第14項に列挙された経路(その金融商品取引業者等で買ったもの、他の特定口座からの移管、相続・贈与、株式の分割・併合など)に限られます。特定口座以外の口座からの受け入れが書かれているのは、相続・贈与で取得したもの(第3号・第4号)や特定譲渡制限付株式(第25号)など、特定の場合です。手元の株が当てはまるかは、口座のある金融商品取引業者等に確認してください。
31この記事の数字は、どこから取ったか
条文はe-Gov法令検索で、国税庁の資料は公開ページで、2026年9月30日に読んだものです。
- 租税特別措置法:3条(一般利子等の源泉分離課税)、37条の10第1項(一般株式等の譲渡所得等15%)、37条の11の2第1項(特定管理株式等・特定口座内公社債が価値を失った場合)、8条の4第1項第3号(特定投資法人の定義)、37条の10第2項(株式等の範囲)・第3項第8号(公社債の償還)、37条の11第1項・第2項(上場株式等の範囲1号〜14号)・第3項、37条の11の3(特定口座:1項 区分計算、3項第1号 開設できる金融商品取引業者等、2号 受け入れる上場株式等、7項 年間取引報告書)、37条の11の4(源泉徴収15%・還付)、37条の11の5(申告不要)、37条の11の6(配当等の受け入れと損失との通算)、37条の12の2(損益通算・繰越控除)、37条の14第2項(NISAの損失はないものとみなす)
- 租税特別措置法施行令:25条の10の2第14項(特定口座に受け入れられる上場株式等の追加の経路)
- 地方税法:71条の49(株式等譲渡所得割5%)、附則35条の2(一般株式等に係る譲渡所得等の住民税2%+3%)
- 所得税法:9条第1項第11号(元本払戻しにあたる分配の非課税)、35条第2項(雑所得の金額)、69条(損益通算できる所得)
- 国税庁 タックスアンサー No.1476 特定口座制度:1社1口座、源泉徴収の選択は最初の譲渡の時まで・年単位、口座ごとの申告の選択、配当等の受け入れと通算
- 国税庁 タックスアンサー No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除:翌年以後3年間の繰越、連続して申告が必要、NISAの損失は通算・繰越不可
- 国税庁 タックスアンサー No.1465 株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い:上場株式等と一般株式等は通算できない
- 国税庁 タックスアンサー No.1466 同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入している場合の取得費:総平均法に準ずる方法、1円未満切り上げ
- 国税庁 所得税基本通達36・37共-19・36・37共-21:任意組合の組合員の損益は分配割合に応じて帰属、匿名組合員の分配は雑所得
- 地方税法(利子割):71条の6(利子割の税率5%)
- 国税庁 タックスアンサー No.1310 特定公社債等の利子等の課税関係:同族会社の社債の利子を株主等が受ける場合の例外
- 所得税法施行令:27条(非課税となる特別分配金)
個人向け社債の利率は、EDINET に提出された発行登録追補書類などから当サイトが集めた94本(2025-08-28〜2026-10-16、固定金利・個人向け)の中央値です。掲載事業者数は当サイトの掲載一覧(110社)です。
口座の開設や移管の手続の細部は、金融商品取引業者等ごとに案内が違います。表の売買・損益は説明のための例です。当社は金融商品取引業者ではなく、特定の口座や商品をすすめるものではありません。

次に読む
同じテーマ
同じテーマ
同じテーマ
同じテーマ