01相続の対象になるのは、出資持分そのもの
投資型クラウドファンディングの出資持分は相続の対象になる財産です。預金や株式と同じように、相続人に引き継がれます。
| 種別 | 相続の対象になるもの | 法的な性質 | 手続きの重さ |
|---|---|---|---|
| 不動産型(匿名組合) | 匿名組合出資持分 | 契約上の地位 | 事業者への届出と名義変更 |
| 不動産型(任意組合) | 不動産の共有持分 | 物権 | 登記が伴う場合がある。重い |
| 融資型 | 匿名組合出資持分 | 契約上の地位 | 事業者への届出 |
| 株式投資型 | 未上場株式 | 有価証券 | 発行会社の承認が必要な場合がある |
| 事業型 | 匿名組合出資持分 | 契約上の地位 | 事業者への届出 |
2行目と4行目が重い手続きになります。任意組合型は不動産の共有持分なので登記が絡み、未上場株式は譲渡制限があるため発行会社の承認が必要な場合があります。
02契約がどうなるかは、約款で決まる
相続が発生したとき、契約が続くのか終わるのかは約款の定めによります。事業者ごとに違うので、確かめる必要があります。
| 約款の定め方 | 何が起きるか | 相続人がすること |
|---|---|---|
| 相続人が地位を承継する | 契約が続く。運用は満了まで | 名義変更の手続き |
| 相続の発生により契約が終了する | その時点で精算される | 精算金を受け取る手続き |
| 事業者の承認により承継 | 承認されれば続く | 承認の申請と名義変更 |
| 定めがない | 民法の原則により承継されるのが通例 | 事業者に確認する |
2行目の場合、運用の途中で精算されるので、想定どおりの分配を受け取れないことがあります。これは相続人には選べません。
自分の契約がどうなるかは、契約締結前交付書面と約款の「相続」の項目を見れば分かります。出資する前に確かめておく価値があります。
03相続税の評価は、どう決まるか
相続税の計算では、相続財産を評価する必要があります。この商品の評価方法は、契約の形によって変わります。
| 種別 | 評価の考え方 | 評価が下がる可能性 | 難しさ |
|---|---|---|---|
| 匿名組合出資持分 | 相続開始時の出資持分の価額 | 原則としてない | 比較的わかりやすい |
| 任意組合型(不動産の共有持分) | 不動産としての評価(路線価・固定資産税評価額) | 時価より低く評価されることがある。小規模宅地等の特例の対象になる場合も | 評価に専門知識が要る |
| 未上場株式 | 財産評価基本通達による評価 | 会社の状況による | 評価が複雑。税理士に依頼するのが通例 |
2行目が、任意組合型の相続面での特徴です。不動産として評価されるので、現金で持っているより相続税の評価額が下がることがあります。
ただし、これを目的に任意組合型を選ぶのは慎重に判断してください。最低投資額が大きく、扱っている事業者も限られます。相続対策としての効果は個別の事情で大きく変わるので、税理士に相談したうえで決めるべきものです。
04納税資金の問題
相続税は現金で納めます。相続した財産が現金化できないものばかりだと、納税に困ります。
| 財産の種類 | 換金のしやすさ | 納税資金にできるか |
|---|---|---|
| 預金 | すぐ | できる(凍結解除後) |
| 上場株式・投資信託 | 数日 | できる |
| 投資型クラウドファンディングの出資持分 | 運用の満了まで待つ | 時期が合わなければできない |
| 未上場株式 | 売れない | できない |
| 不動産 | 数か月〜 | 時期が合えば |
| 生命保険金 | 数週間 | できる(非課税枠もある) |
3行目と4行目が問題です。相続税の納付期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内。運用期間が2年の案件なら、その間に期限が来ます。
| 対策 | 中身 |
|---|---|
| 他の資産で納税資金を用意しておく | 預金、生命保険 |
| 運用期間の長い案件を避ける | 満了が近いほうが換金しやすい |
| 社数と金額を抑える | 相続財産全体に占める割合を小さくする |
| 延納・物納を検討する | 要件が厳しく、この商品は物納に向かない |
| 生前に整理する | 高齢になったら、金額を減らしていく |
4行目の物納について。物納できる財産には順位と要件があり、匿名組合出資持分や未上場株式は実務上ほぼ認められません。当てにしないでください。
05生前にやっておくと、相続が軽くなること
本人ができる備えを、効果の大きい順に並べます。
| 備え | 効果 | 手間 |
|---|---|---|
| 出資先の一覧を作り、家族に場所を伝える | いちばん大きい。存在に気づかれる | 1時間 |
| 社数を3〜5社に抑える | 相続人の手続き先が減る | — |
| 約款の相続の項目を確認しておく | 契約が続くのか終わるのかが分かる | 10分×社数 |
| 登録した住所を最新にする | 通知が届く | 10分 |
| 納税資金を別に用意する | 売れない資産の問題を避ける | — |
| 高齢になったら金額を減らす | 相続時に運用中の額を小さくする | — |
| 任意組合型の評価を税理士に相談する | 相続対策として使えるかが分かる | 相談料 |
1行目が、費用ゼロで効果がいちばん大きい備えです。一覧がなければ、そもそも相続財産として認識されません。
認識されなければ、相続税の申告からも漏れます。あとから見つかれば修正申告と加算税の対象になります。家族のためというより、手続きを正しく終わらせるために必要な備えだと考えてください。
06よくある質問
いくらから始められますか。
最低投資額は事業者によって違い、中央値は1万円です。1万円から出せる事業者が多くあります。
途中でやめられますか。
運用期間中は原則としてやめられません。一部の事業者が譲渡や解約に対応していますが、手数料がかかり、応じてもらえない場合もあります。
確定申告は必要ですか。
給与所得者で、給与以外の所得の合計が年20万円以下なら所得税の申告は不要です。ただし住民税の申告は別に必要になることがあります。
何社に分けるのがよいですか。
4社から6社が、分散の効果と管理の手間の釣り合う範囲です。10社を超えると確定申告の書類集めが重くなります。
元本は保証されますか。
されません。どの種別にも公的な元本補償の仕組みはありません。
07この記事の数字は、どこから取ったか
会社名を挙げて処分や事故を書くにあたっては、照合を法人番号の完全一致に限りました。社名の部分一致で突き合わせると、似た社名の別会社の記録を拾ってしまいます。当サイトが実際に試したところ、82件が一致したように見えてそのほとんどが別会社でした。
できていないことも書きます。不動産特定共同事業者への監督処分は国土交通省・都道府県の所管で、この事例集には含まれていません。また償還後の実績は、事業型を除いてどの事業者も公表していないため、不動産型・融資型については「戻らなかった件数」を外から数えられません。
数字はいずれも元本を保証するものではなく、この記事は特定の商品の勧誘ではありません。

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