01なぜマイナンバーを求められるのか
口座を作るときにマイナンバーの提出を求められます。理由は法令です。事業者には支払調書を税務署に提出する義務があり、そこにマイナンバーを記載しなければならないと決まっているためです。
| 場面 | 根拠 | 事業者の義務 |
|---|---|---|
| 分配金の支払い | 所得税法(支払調書の提出) | 支払を受ける者のマイナンバーを記載して提出する |
| 口座の開設 | 犯罪収益移転防止法(取引時確認) | 本人特定事項の確認。マイナンバーそのものは必須ではない |
| 株式の取得 | 同上+支払調書 | 同上 |
1行目が直接の理由です。支払調書にマイナンバーを書く義務があるので、事業者は投資家から取得する必要があります。事業者が独自の判断で集めているわけではありません。
マイナンバーの提出を拒否した場合、事業者は「提供を求めた経過」を記録したうえで空欄で提出することになります。ただし多くの事業者は、マイナンバーの提出を口座開設の条件にしています。提出しなければ口座を作れません。
02マイナンバーで、税務署は何が分かるのか
投資家が気にするのはここでしょう。整理します。
| 分かること | 分からないこと |
|---|---|
| 誰が、どの事業者から、いくらの分配を受けたか | どの案件に投資したか(支払調書には記載されない) |
| 源泉徴収された税額 | 口座の残高 |
| 複数の事業者からの分配を名寄せできる | 投資した元本の額 |
| 申告された所得との差 | 他の資産の状況 |
いちばん実務的な意味は、複数の事業者からの分配を名寄せできることです。A社から15万円、B社から10万円の分配を受けていれば、合計25万円として把握されます。「1社あたり20万円以下だから申告不要」という誤解が通用しないのは、このためです。
逆に言えば、正しく申告していれば何も問題はありません。マイナンバーは、正しく申告している人に不利益をもたらす仕組みではありません。
03提出のしかたと、安全性
提出の方法は事業者によって違います。
| 方法 | 中身 | 注意 |
|---|---|---|
| マイナンバーカードの画像をアップロード | 表と裏の両面 | 最も一般的 |
| 通知カード+本人確認書類 | 通知カードは番号の確認、本人確認は別の書類 | 通知カードは2020年5月で新規発行を終了。記載事項が現住所と一致していれば番号確認に使える |
| マイナンバー記載の住民票の写し+本人確認書類 | 同上 | 取得に費用がかかる |
| eKYC(オンライン本人確認) | スマートフォンでカードを読み取る | 手続きが早い |
事業者は、マイナンバーの取扱いについて番号法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)の規制を受けます。
| 事業者に課される義務 | 中身 |
|---|---|
| 利用目的の制限 | 支払調書の作成など、法令で定められた目的にしか使えない |
| 安全管理措置 | 取扱いの体制、アクセス制限、廃棄の手順を定める |
| 提供の制限 | 法令で定められた場合を除き、第三者に提供できない |
| 保管の制限 | 必要がなくなったら廃棄する |
| 委託先の監督 | 外部に委託する場合、監督する義務がある |
違反には罰則があります。正当な理由なくマイナンバーを提供した場合、4年以下の懲役または200万円以下の罰金(またはその併科)です。通常の個人情報より重い規制がかかっています。
04提出しないとどうなるか
選択肢と結果を並べます。
| 選択 | 結果 |
|---|---|
| 提出する | 口座が開設できる。支払調書に記載される |
| 提出しない | 多くの事業者では口座を開設できない |
| 提出を後回しにする | 分配の前までに求められるのが通例。未提出だと分配が保留されることがある |
| 途中で削除を求める | 法定保存期間中は応じられない。期間経過後は廃棄される |
「マイナンバーを出したくないから投資型クラウドファンディングを使わない」という判断は、証券口座や銀行口座でも同じことを求められるので一貫していません。株式や投資信託を買うときも、特定口座を作るときもマイナンバーは必要です。
むしろ確認すべきは、その事業者がマイナンバーを適切に扱う体制を持っているかです。プライバシーポリシー、個人情報の取扱いに関する記載、セキュリティに関する説明を見てください。登録・許可を受けた事業者であれば、体制の整備は監督の対象になっています。
05家族の口座と、名義の問題
マイナンバーに関連して、名義の問題も書いておきます。
| やり方 | 問題があるか | 説明 |
|---|---|---|
| 自分の名義で投資する | 問題ない | — |
| 配偶者の名義で、自分のお金で投資する | 贈与とみなされる可能性がある | 年間110万円を超えると贈与税の対象。名義が誰かではなく、誰のお金かで判断される |
| 子どもの名義で投資する | 同上 | 未成年口座に対応している事業者は限られる |
| 家族の口座を自分が操作する | 規約違反になることが多い | 本人以外の操作を禁じている事業者が大半 |
| 家族それぞれが自分のお金で投資する | 問題ない | — |
2行目が実務でよくある誤解です。名義を分けても、原資が自分のお金なら実質的には自分の所得です。税務上は「誰の資金か」で判断されるので、名義を分けることで所得を分散させることはできません。
そして、年間110万円を超える資金を家族に渡せば贈与です。贈与税の申告が必要になります。家族それぞれが自分の収入から投資するなら問題ありませんが、原資を渡している場合は注意が必要です。
06どの場面で、どこまでの本人確認が求められるか
マイナンバーの提出と、本人確認は別の手続きです。根拠になる法律も違います。混ざりやすいので分けます。
| 手続き | 根拠 | 求められるもの | いつ |
|---|---|---|---|
| 取引時確認(本人確認) | 犯罪収益移転防止法 | 氏名・住所・生年月日の確認、本人確認書類 | 口座開設時 |
| マイナンバーの取得 | 所得税法(支払調書) | 番号の確認+身元の確認 | 口座開設時または初回の分配前 |
| 実質的支配者の確認(法人) | 犯罪収益移転防止法 | 議決権を持つ個人の情報 | 法人口座の開設時 |
| 適合性の確認 | 金商法・不特法 | 投資経験、資産の状況、投資の目的 | 口座開設時 |
| 継続的顧客管理 | 犯罪収益移転防止法 | 定期的な情報の更新 | 数年ごと |
2行目のマイナンバーだけが番号法の対象で、取扱いに特に厳しい規制がかかります。他の情報は個人情報保護法の範囲です。
| 番号確認に使える書類 | 身元確認に使える書類 |
|---|---|
| マイナンバーカード(1枚で両方) | マイナンバーカード |
| 通知カード(記載事項が現況と一致する場合) | 運転免許証 |
| マイナンバー記載の住民票の写し | パスポート |
| マイナンバー記載の住民票記載事項証明書 | 健康保険証+別の書類 |
| — | 在留カード・特別永住者証明書 |
07番号法が事業者に課している義務
マイナンバーは、通常の個人情報より厳しい規制がかかっています。事業者が守るべきことを並べます。
| 義務 | 中身 | 違反したときの罰則 |
|---|---|---|
| 利用目的の制限 | 法令で定められた事務(支払調書の作成など)にしか使えない | — |
| 提供の制限 | 法令で定められた場合を除き、第三者に提供してはならない | 4年以下の懲役または200万円以下の罰金(またはその併科) |
| 収集・保管の制限 | 必要がある場合を除き、収集・保管してはならない | — |
| 安全管理措置 | 組織的・人的・物理的・技術的な安全管理措置を講じる | — |
| 委託先の監督 | 外部に委託する場合、必要かつ適切な監督を行う | — |
| 本人確認 | 番号の確認と身元の確認を行う | — |
| 廃棄 | 保管の必要がなくなったら、速やかに廃棄する | — |
通常の個人情報保護法違反より罰則が重く設定されています。正当な理由なく提供した場合、刑事罰の対象になります。
これは事業者にとっても負担なので、必要以上に集めることはしません。口座開設と支払調書の作成に必要だから求めている、と理解して差し支えありません。
08提出の方法と、安全に出すための確認
提出の前に確かめることを並べます。
| 確かめること | 見るところ | 問題がある場合 |
|---|---|---|
| 通信が暗号化されているか | URLがhttpsで始まるか | httpなら絶対に送らない |
| 提出先が正しいサイトか | URLのドメインが公式のものか | メールのリンクではなく、自分でURLを入力する |
| プライバシーポリシーにマイナンバーの記載があるか | サイトのプライバシーポリシー | 記載がなければ問い合わせる |
| 登録・許可を受けた事業者か | 登録番号を一覧で照合 | 無登録なら関わらない |
| メールで送るよう求められていないか | — | メールでの送付を求める事業者は避ける |
| 画像の保存先 | スマートフォンのカメラロールに残っていないか | 送信後に削除する |
5行目が重要です。マイナンバーカードの画像をメールで送らせるのは安全管理措置として不適切です。通常は、暗号化されたアップロードの仕組みか、eKYCが使われます。
09家族の名義で投資した場合の、税の扱い
名義を分けても、原資が誰のお金かで判断されます。マイナンバーによって名寄せができるので、実態と異なる申告は把握されやすくなっています。
| やり方 | 税務上の扱い | リスク |
|---|---|---|
| 自分の口座で、自分のお金 | 問題なし | なし |
| 配偶者の口座で、配偶者のお金 | 問題なし | なし |
| 配偶者の口座で、自分のお金(年110万円以下) | 贈与だが基礎控除内 | 他に贈与がなければ問題なし |
| 配偶者の口座で、自分のお金(年110万円超) | 贈与税の対象 | 申告が必要 |
| 子の口座で、親のお金 | 同上 | 同上 |
| 家族の口座を自分が操作する | 規約違反。名義預金とみなされる可能性 | 相続のときに問題になる |
最後の行の「名義預金」は、相続のときに問題になります。名義は家族でも、実質的に本人の財産と判断されれば、相続財産に含めて申告する必要があります。含めずに申告すると、後から追徴されることがあります。
| 名義預金と判断される要素 | 判断のポイント |
|---|---|
| 原資が誰のものか | 誰の収入から出たお金か |
| 誰が管理していたか | 通帳、印鑑、パスワードを誰が持っていたか |
| 名義人が存在を知っていたか | 知らなければ名義預金の可能性が高い |
| 贈与の意思と受諾があったか | 贈与契約書、贈与税の申告の有無 |
| 利益を誰が使っていたか | 分配金を誰が使ったか |
10提出したあとの、情報の行き先
提出したマイナンバーがどこへ行くのかを整理します。不必要に不安になる必要はありませんが、知っておく価値があります。
| 行き先 | 何が渡るか | 根拠 |
|---|---|---|
| 事業者のシステム | マイナンバーと本人確認の情報 | 口座開設と支払調書の作成のため |
| 税務署 | 支払調書(氏名・住所・マイナンバー・支払金額・源泉徴収税額) | 所得税法 |
| 市区町村 | 税務署経由で、住民税の計算のために | 地方税法 |
| 事業者の委託先 | システムの運用会社など | 番号法。事業者に監督義務がある |
| それ以外 | 渡らない | 番号法が第三者への提供を禁じている |
最後の行が重要です。マイナンバーから、その人の預金残高や他の資産が自動的に把握されるわけではありません。税務署が把握するのは、法令に基づいて提出された調書の内容だけです。
逆に言えば、分配金の支払いは確実に把握されているということです。正しく申告していれば問題はありません。申告していなければ、把握されている情報と申告の内容が食い違うことになります。
11よくある質問
分配金は確定申告が必要ですか。
給与所得者で、給与以外の所得の合計が年間20万円以下なら、所得税の確定申告は不要です。ただし住民税の申告は別に必要になることがあります。
20.42%が引かれていました。これは何ですか。
所得税の源泉徴収です(所得税20%+復興特別所得税0.42%)。前払いなので、所得が低ければ確定申告で戻ることがあります。
損が出たら他の所得と相殺できますか。
雑所得の場合、他の所得とは相殺できません。同じ年の他の雑所得とだけ相殺できます。
損失を翌年に繰り越せますか。
雑所得の損失は繰り越せません。その年で切り捨てになります。
住民税はどうなりますか。
分配金にも住民税がかかります。税率は一律10%です。源泉徴収されているのは所得税だけで、住民税は別です。
12この記事の数字は、どこから取ったか
会社名を挙げて処分や事故を書くにあたっては、照合を法人番号の完全一致に限りました。社名の部分一致で突き合わせると、似た社名の別会社の記録を拾ってしまいます。当サイトが実際に試したところ、82件が一致したように見えてそのほとんどが別会社でした。
できていないことも書きます。不動産特定共同事業者への監督処分は国土交通省・都道府県の所管で、この事例集には含まれていません。また償還後の実績は、事業型を除いてどの事業者も公表していないため、不動産型・融資型については「戻らなかった件数」を外から数えられません。
数字はいずれも元本を保証するものではなく、この記事は特定の商品の勧誘ではありません。

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