01iDeCoと投資型クラウドファンディングは、性質が正反対
iDeCo(個人型確定拠出年金)と投資型クラウドファンディングは、目的も税の扱いも、引き出せる時期もまったく違います。併用を考えるなら、まず違いを並べます。
| iDeCo | 投資型クラウドファンディング | |
|---|---|---|
| 目的 | 老後の資産形成 | 運用期間内の分配 |
| 掛金の税 | 全額が所得控除 | 控除なし |
| 運用中の税 | 非課税 | 分配のたびに課税 |
| 受け取るときの税 | 退職所得控除・公的年金等控除が使える | 雑所得として総合課税 |
| 引き出せる時期 | 原則60歳以降 | 運用期間の満了時 |
| 途中で解約 | 原則できない | 原則できない(一部の事業者は対応) |
| 投資先 | 投資信託・定期預金・保険 | 不動産・貸付・事業・未上場株式 |
| 元本確保 | 定期預金・保険を選べば元本確保型 | 元本確保の商品はない |
| 掛金の上限 | 職業により月12,000〜68,000円 | 上限なし(株式投資型を除く) |
| 口座管理手数料 | 月171円〜(金融機関による) | 多くは無料 |
2行目が、iDeCoの最大の利点です。掛金が全額、所得控除になります。投資型クラウドファンディングにはこれに相当するものがありません(株式投資型のエンジェル税制が唯一近いものです)。
02iDeCoの所得控除が、いくらの価値になるか
掛金が所得控除になるということは、その年の税金がその分だけ減るということです。年間の掛金と所得税率から計算します。
| 年間の掛金 | 課税所得195万円以下(5%) | 195〜330万円(10%) | 330〜695万円(20%) | 695〜900万円(23%) | 900万円超(33%) |
|---|---|---|---|---|---|
| 144,000円 | 21,751円 | 29,102円 | 43,804円 | 48,215円 | 62,917円 |
| 276,000円 | 41,689円 | 55,779円 | 83,959円 | 92,413円 | 120,592円 |
| 816,000円 | 123,256円 | 164,913円 | 248,227円 | 273,221円 | 356,534円 |
(所得税+住民税10%の軽減額。掛金の上限は職業によって違い、144,000円は企業年金のある会社員(月12,000円)、276,000円は企業年金のない会社員(月23,000円)、816,000円は自営業者(月68,000円)の上限です。)
自営業者が上限まで拠出すれば、課税所得695万円超の人で年間25万円以上の節税になります。これは運用で得るリターンとは別に、確実に得られる効果です。投資型クラウドファンディングにはこれに対抗できる仕組みがありません。
03それでも両方を持つ理由
税だけで見ればiDeCoが圧倒的に有利です。それでも両方を持つ理由があるとすれば、引き出せる時期です。
| 資金の性格 | 向いている置き場所 | 理由 |
|---|---|---|
| 生活防衛資金(半年〜1年分) | 普通預金 | すぐ使える必要がある |
| 3年以内に使う予定がある | 預金・個人向け国債 | 元本が減ると困る |
| 5〜10年は使わないが、老後まで固定したくない | NISA、課税口座、投資型クラウドファンディング | 引き出せる |
| 老後まで使わない | iDeCo | 引き出せない代わりに税が有利 |
| 無くなっても困らない | 株式投資型クラウドファンディング | リターンの幅が大きい |
3行目が、投資型クラウドファンディングの居場所です。iDeCoほど固定したくないが、当面は使わない資金。運用期間が数か月から数年なので、その期間だけ動かせない、という形で合います。
iDeCoは60歳まで引き出せません。30代の人にとっては30年間です。住宅の購入、子どもの教育費、転職や独立といった場面で使えない資金をどこまで作るかは、人によって違います。
04併用するときの順番と配分
両方を使う場合の順番です。
- 生活防衛資金を預金で確保する。半年から1年分の生活費。ここができていなければ投資は早い。
- iDeCoを上限まで使う。掛金の所得控除は、運用の成績に関係なく確実に効きます。ただし60歳まで引き出せないことを納得したうえで。
- NISAのつみたて投資枠を使う。非課税で、いつでも引き出せます。
- NISAの成長投資枠を使う。
- それでも余る資金を、課税口座や投資型クラウドファンディングに向ける。
この順番を崩す理由があるとすれば、iDeCoの拘束が重すぎる場合です。収入が不安定な人、数年以内に大きな支出が見込まれる人は、iDeCoの掛金を上限より下げて、その分を引き出せる場所に置くのが合理的です。
05iDeCoの中で不動産に投資する方法
iDeCoでは投資信託を選べるので、REITを含む投資信託を通じて間接的に不動産に投資できます。不動産クラウドファンディングそのものは選べません。
| iDeCoで選べる不動産関連の商品 | 中身 | 注意 |
|---|---|---|
| 国内REITのインデックスファンド | 東証REIT指数に連動 | 値動きは株式並みに大きいことがある |
| 先進国REITのインデックスファンド | 海外のREITに投資 | 為替の影響を受ける |
| バランス型ファンド(REITを含むもの) | 株式・債券・REITを組み合わせたもの | REITの比率は数%から十数%程度 |
金融機関によって選べる商品が違うので、口座を作る前に商品のラインナップを確認してください。REITのファンドを置いていない金融機関もあります。
ただし、iDeCoの中でREITに集中させるのは推奨されません。iDeCoは老後の資産形成が目的で、数十年の運用を前提にしています。特定の資産に集中させるより、株式と債券を軸にした分散のほうが目的に合っています。REITを持ちたいなら、NISAや課税口座で持つほうが調整しやすくなります。
06掛金の所得控除を、職業と所得の組み合わせで出す
iDeCoの掛金は全額が所得控除になります。職業によって上限が違うので、上限まで拠出した場合の軽減額を並べます。
| 職業 | 月の上限 | 年の上限 |
|---|---|---|
| 自営業者・フリーランス(第1号被保険者) | 68,000円 | 816,000円 |
| 会社員(企業年金なし) | 23,000円 | 276,000円 |
| 会社員(企業型DCのみ) | 20,000円 | 240,000円 |
| 会社員(DB等あり) | 12,000円 | 144,000円 |
| 公務員 | 12,000円 | 144,000円 |
| 専業主婦・主夫(第3号被保険者) | 23,000円 | 276,000円 |
2024年12月以降、企業年金がある会社員・公務員の拠出限度額の算定方法が変わっています。実際の上限は勤務先に確認してください。
| 課税所得\年間の掛金 | 144,000円 | 240,000円 | 276,000円 | 816,000円 |
|---|---|---|---|---|
| 150万円 | 21,751円 | 36,252円 | 41,689円 | 123,256円 |
| 250万円 | 29,102円 | 48,504円 | 55,779円 | 164,913円 |
| 400万円 | 43,804円 | 73,008円 | 83,959円 | 248,227円 |
| 550万円 | 43,804円 | 73,008円 | 83,959円 | 248,227円 |
| 800万円 | 48,215円 | 80,359円 | 92,413円 | 273,221円 |
| 1,000万円 | 62,917円 | 104,863円 | 120,592円 | 356,534円 |
| 1,500万円 | 62,917円 | 104,863円 | 120,592円 | 356,534円 |
| 2,500万円 | 73,209円 | 122,015円 | 140,318円 | 414,854円 |
| 5,000万円 | 80,560円 | 134,268円 | 154,408円 | 456,511円 |
所得税と住民税の合計の軽減額です。運用の成績に関係なく、確実に得られます。課税所得1,000万円の自営業者が上限まで拠出すれば、年間約35万円の節税です。
0720年、30年で積み上げると
掛金の所得控除は毎年効きます。長期で積み上げた効果を見ます。(税率は変わらない前提です。)
| 年間の掛金 | 課税所得400万円の人の年間軽減 | 10年 | 20年 | 30年 |
|---|---|---|---|---|
| 144,000円 | 43,804円 | 438,040円 | 876,080円 | 1,314,120円 |
| 240,000円 | 73,008円 | 730,080円 | 1,460,160円 | 2,190,240円 |
| 276,000円 | 83,959円 | 839,590円 | 1,679,180円 | 2,518,770円 |
| 816,000円 | 248,227円 | 2,482,270円 | 4,964,540円 | 7,446,810円 |
| 年間の掛金 | 課税所得1,000万円の人の年間軽減 | 10年 | 20年 | 30年 |
|---|---|---|---|---|
| 144,000円 | 62,917円 | 629,170円 | 1,258,340円 | 1,887,510円 |
| 240,000円 | 104,863円 | 1,048,630円 | 2,097,260円 | 3,145,890円 |
| 276,000円 | 120,592円 | 1,205,920円 | 2,411,840円 | 3,617,760円 |
| 816,000円 | 356,534円 | 3,565,340円 | 7,130,680円 | 10,696,020円 |
投資型クラウドファンディングでこれに匹敵するリターンを得るには、相当の利回りと金額が必要です。掛金の所得控除は、リスクを取らずに得られるリターンだからです。
08受け取るときの税
iDeCoは、受け取るときにも税制の優遇があります。ただし完全に非課税ではありません。
| 受け取り方 | 所得区分 | 控除 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 一時金(一括) | 退職所得 | 退職所得控除(勤続年数×40万円、20年超は70万円) | 控除が大きい。会社の退職金と合算される |
| 年金(分割) | 雑所得(公的年金等) | 公的年金等控除 | 公的年金と合算される |
| 一時金と年金の併用 | 上の組み合わせ | — | 調整できる |
退職所得控除の計算です。
| 加入年数 | 退職所得控除の額 | この額までは非課税 |
|---|---|---|
| 10年 | 4,000,000円 | 4,000,000円 |
| 15年 | 6,000,000円 | 6,000,000円 |
| 20年 | 8,000,000円 | 8,000,000円 |
| 25年 | 11,500,000円 | 11,500,000円 |
| 30年 | 15,000,000円 | 15,000,000円 |
| 35年 | 18,500,000円 | 18,500,000円 |
| 40年 | 22,000,000円 | 22,000,000円 |
30年加入なら1,500万円まで非課税です。ただし会社の退職金と合算されます。退職金が多い人は、iDeCoの一時金が控除を超えて課税されることがあります。
受け取り方の設計は、退職金の額と受け取る時期によって変わります。60歳が近づいたら、税理士やファイナンシャルプランナーに相談する価値があります。
0960歳まで引き出せないことの重み
iDeCoの最大の制約です。年齢ごとに、拘束される期間を確認します。
| いまの年齢 | 60歳まで | その間に起こりうること |
|---|---|---|
| 25歳 | 35年 | 結婚、住宅購入、子の教育、転職、独立 |
| 30歳 | 30年 | 同上 |
| 35歳 | 25年 | 住宅購入、子の教育 |
| 40歳 | 20年 | 子の教育、親の介護 |
| 45歳 | 15年 | 同上 |
| 50歳 | 10年 | 親の介護、自身の健康 |
| 55歳 | 5年 | — |
若いほど税の効果が積み上がりますが、拘束される期間も長くなります。掛金は下げられる(月5,000円が下限)ので、上限まで出さないという選択もあります。
| 収入の状況 | iDeCoの掛金 | 残りをどこに |
|---|---|---|
| 安定していて、大きな支出の予定がない | 上限まで | NISA、課税口座 |
| 安定しているが、5年以内に住宅購入の予定 | 上限の半分程度 | NISA、預金 |
| 収入が不安定(自営業など) | 無理のない額 | 預金を厚めに |
| 数年以内に独立の予定 | 低めに | 預金、いつでも引き出せる場所 |
iDeCoは掛金を止めることもできます(運用指図者になる)。ただし止めている間も口座管理手数料がかかります。無理のない額で続けるほうが合理的です。
10投資型CFとiDeCoを、目的で分ける
両方を持つ場合、目的を分けておくと判断がぶれません。
| 目的 | 置き場所 | 理由 |
|---|---|---|
| 老後の生活費 | iDeCo、NISAのつみたて枠 | 60歳以降に使う。税の優遇が最も大きい |
| 10年後の住宅購入の頭金 | NISAの成長投資枠、課税口座 | 引き出せる必要がある |
| 3年後の車の買い替え | 預金、個人向け国債 | 元本が減ると困る |
| 1〜3年で運用して、その後は自由に使う | 不動産・融資型クラウドファンディング | 運用期間が決まっていて、値動きがない |
| 無くなっても困らない、大きく増える可能性に賭ける | 株式投資型クラウドファンディング | リターンの幅が大きい |
| 生活防衛資金 | 普通預金 | すぐ使える必要がある |
4行目が、不動産・融資型クラウドファンディングの居場所です。iDeCoほど固定したくないが、数年は使わない資金。そして毎日の値動きを見たくない資金。
NISAと比べると税で不利ですが、NISAの枠を使い切ってなお余る資金があるなら、選択肢として成り立ちます。順番としては、NISAとiDeCoのあとです。
11よくある質問
分配金は確定申告が必要ですか。
給与所得者で、給与以外の所得の合計が年間20万円以下なら、所得税の確定申告は不要です。ただし住民税の申告は別に必要になることがあります。
20.42%が引かれていました。これは何ですか。
所得税の源泉徴収です(所得税20%+復興特別所得税0.42%)。前払いなので、所得が低ければ確定申告で戻ることがあります。
損が出たら他の所得と相殺できますか。
雑所得の場合、他の所得とは相殺できません。同じ年の他の雑所得とだけ相殺できます。
損失を翌年に繰り越せますか。
雑所得の損失は繰り越せません。その年で切り捨てになります。
住民税はどうなりますか。
分配金にも住民税がかかります。税率は一律10%です。源泉徴収されているのは所得税だけで、住民税は別です。
12この記事の数字は、どこから取ったか
会社名を挙げて処分や事故を書くにあたっては、照合を法人番号の完全一致に限りました。社名の部分一致で突き合わせると、似た社名の別会社の記録を拾ってしまいます。当サイトが実際に試したところ、82件が一致したように見えてそのほとんどが別会社でした。
できていないことも書きます。不動産特定共同事業者への監督処分は国土交通省・都道府県の所管で、この事例集には含まれていません。また償還後の実績は、事業型を除いてどの事業者も公表していないため、不動産型・融資型については「戻らなかった件数」を外から数えられません。
数字はいずれも元本を保証するものではなく、この記事は特定の商品の勧誘ではありません。

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