01NISAで買えるものは、法令で決まっている
結論から書きます。NISAで不動産クラウドファンディングは買えません。NISAの対象になる商品は租税特別措置法で限定されていて、匿名組合出資持分はそこに含まれていないためです。
| NISAで買えるもの | 買えないもの |
|---|---|
| 上場株式(国内・海外) | 不動産クラウドファンディング(匿名組合出資) |
| ETF(上場投資信託) | 融資型クラウドファンディング |
| REIT(不動産投資信託) | 事業型クラウドファンディング |
| 公募株式投資信託(一定の要件を満たすもの) | 株式投資型クラウドファンディング(未上場株式) |
| ETN(上場投資証券) | 非上場の株式・債券 |
| — | 預金、保険、FX、暗号資産、金 |
理由は単純です。NISAは金融商品取引所に上場している商品と一定の要件を満たす公募投資信託を対象にしています。未上場株式や匿名組合出資持分は、流通市場がなく価格の評価が難しいので、制度の対象になっていません。
02NISAの枠でできる、いちばん近いもの
不動産に投資したい、という目的でNISAを使うならREITか不動産関連の投資信託が選択肢になります。同じ「不動産」でも、性質はかなり違います。
| 不動産クラウドファンディング | REIT(NISAで買える) | |
|---|---|---|
| 買えるNISA枠 | なし | 成長投資枠 |
| 値動き | 運用期間中は価格が付かない | 毎日価格が動く。株式並みに動くことがある |
| 利益の受け取り | 運用終了時に分配 | 年2回程度の分配金+売却益 |
| 利回りの目安 | 想定4〜8%程度 | 分配金利回り3〜5%程度(銘柄と時期による) |
| 途中で売れるか | 原則できない | いつでも売れる |
| 税金 | 雑所得・総合課税(20.42%の源泉徴収) | NISAなら非課税。課税口座なら20.315% |
| 最低投資額 | 1万円から | 銘柄による(数万円〜数十万円) |
| 投資先 | 個別の物件が分かる | 複数の物件をまとめたポートフォリオ |
| 元本割れ | 物件の価値と運用による | 市場価格の変動による |
税の観点だけで見れば、NISAのREITのほうが圧倒的に有利です。非課税だからです。不動産クラウドファンディングは雑所得として総合課税され、損益通算もできません。
それでも不動産クラウドファンディングに出す理由があるとすれば、値動きがないことと投資先の物件が分かることです。REITは毎日価格が動くので、下がっているときに見ると気になります。クラウドファンディングは運用期間中に価格が付かないので、その意味での落ち着きがあります。
03非課税の効果を、金額で比べる
100万円を投資して、年4%の利益が出た場合の5年間を比べます。
| NISA(REIT等) | 課税口座(REIT等) | 不動産CF(課税所得500万円) | 不動産CF(課税所得1,000万円) | |
|---|---|---|---|---|
| 年間の利益(税引前) | 40,000円 | 40,000円 | 40,000円 | 40,000円 |
| 税率 | 0% | 20.315% | 20%+住民税10%=約30.4% | 33%+住民税10%=約43.7% |
| 年間の税額 | 0円 | 8,126円 | 12,168円 | 17,477円 |
| 年間の手取り | 40,000円 | 31,874円 | 27,832円 | 22,523円 |
| 5年間の手取り | 200,000円 | 159,370円 | 139,160円 | 112,615円 |
同じ利回りなら、NISAとの差は大きい。課税所得が高い人ほど、不動産クラウドファンディングの実効利回りは下がります。
逆に言えば、NISAの枠を使い切っていない人が不動産クラウドファンディングを始めるのは、順番としては後回しでよいということです。まずNISAの非課税枠を埋めるほうが、税の観点では合理的です。
04NISAと併用するときの考え方
NISAを使い切ったうえで、さらに投資先を探す段階なら、不動産クラウドファンディングは選択肢になります。その場合の位置づけを整理します。
| 順番 | 投資先 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 生活防衛資金(預金) | 投資の前提。半年〜1年分 |
| 2 | NISAのつみたて投資枠 | 非課税。長期の資産形成の中心 |
| 3 | iDeCo(使える人) | 掛金が所得控除になる。ただし60歳まで引き出せない |
| 4 | NISAの成長投資枠 | 非課税。個別株やREIT |
| 5 | 課税口座での投資信託・株式 | 損益通算と繰越が使える |
| 6 | 不動産・融資型クラウドファンディング | 値動きがなく、期間が決まっている。税は不利 |
| 7 | 株式投資型クラウドファンディング | リスクが最も高い。無くなっても困らない範囲で |
この順番は、税の有利さと流動性で並べたものです。上ほど税が有利で、いつでも現金にできます。下に行くほど税が不利で、換金しにくくなります。
ただし、5番と6番の順序は人によって変わります。値動きを見たくない人、毎日の相場を追いたくない人にとっては、運用期間が決まっている商品のほうが続けやすいことがあります。税の有利さだけが判断基準ではありません。
05制度が変わる可能性
NISAの対象商品は法令で決まっているので、法改正があれば変わります。実際、2024年からの新しいNISAでは対象や枠が大きく変わりました。
| 変わりうること | 現状 | 可能性 |
|---|---|---|
| 対象商品の拡大 | 上場商品と公募投資信託に限る | 未上場商品が入る見込みは低い。価格評価の問題があるため |
| 非課税枠の拡大 | つみたて年120万円・成長年240万円 | 過去に拡大された実績がある |
| 不動産クラウドファンディングの税制 | 雑所得・総合課税・損益通算不可 | 業界団体から要望は出ているが、変更の見通しは立っていない |
| 源泉徴収の税率 | 20.42% | 復興特別所得税は2037年まで |
3行目について補足します。不動産クラウドファンディングの分配金を申告分離課税にしてほしい、損益通算を認めてほしい、という要望は業界から出ています。ただし実現の見通しは立っていません。
制度が変わることを前提に投資を決めるのは危険です。いまの制度でどうかで判断してください。いまの制度では、不動産クラウドファンディングの税はNISAやREITより明確に不利です。それを知ったうえで、値動きのなさや物件の見えやすさに価値を感じるなら、選ぶ理由になります。
0620年で比べる:NISAと課税口座と不動産CF
年4%の利益が出る商品を、100万円で20年持った場合の手取りを比べます。(利益はすべて受け取り、再投資しない前提です。)
| 年 | NISA(非課税) | 課税口座(20.315%) | 不動産CF(課税所得400万円) | 不動産CF(課税所得1,000万円) |
|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 40,000円 | 31,873円 | 27,832円 | 22,522円 |
| 3年目 | 120,000円 | 95,619円 | 83,496円 | 67,566円 |
| 5年目 | 200,000円 | 159,365円 | 139,160円 | 112,610円 |
| 10年目 | 400,000円 | 318,730円 | 278,320円 | 225,220円 |
| 15年目 | 600,000円 | 478,095円 | 417,480円 | 337,830円 |
| 20年目 | 800,000円 | 637,460円 | 556,640円 | 450,440円 |
20年で、NISAと課税所得1,000万円の人の不動産CFでは1,149,560円……ではなく、349,560円の差がつきます。同じ利回りでも、税の違いだけでこれだけ変わります。
逆に言えば、不動産CFの利回りがNISAの商品より十分に高くなければ、税負担で追いつかれます。
| NISAで年3% | 課税所得400万円の人が不動産CFで同じ手取りを得るには | 課税所得1,000万円の人なら |
|---|---|---|
| 年3%(非課税) | 年4.31%が必要 | 年5.33%が必要 |
| 年4%(非課税) | 年5.75%が必要 | 年7.10%が必要 |
| 年5%(非課税) | 年7.19%が必要 | 年8.88%が必要 |
07NISAの枠と、投資型CFの位置づけ
NISAの年間の枠を確認します。この枠を使い切っていない人が投資型クラウドファンディングを始めるのは、税の観点では順番が違います。
| 枠 | 年間の上限 | 生涯の上限 | 対象 |
|---|---|---|---|
| つみたて投資枠 | 120万円 | 1,800万円(成長投資枠と合わせて) | 長期・積立・分散に適した一定の投資信託 |
| 成長投資枠 | 240万円 | 1,200万円(内数) | 上場株式、ETF、REIT、一定の投資信託 |
| 合計 | 360万円 | 1,800万円 | — |
年間360万円、生涯1,800万円。これを使い切っている人は多くありません。使い切っていないなら、まずこちらを埋めるほうが税の効率がよい。
| 年間の投資可能額 | NISAで埋まるか | 投資型CFを検討する余地 |
|---|---|---|
| 月1万円(年12万円) | つみたて枠の10% | ない |
| 月3万円(年36万円) | つみたて枠の30% | ない |
| 月5万円(年60万円) | つみたて枠の50% | ない |
| 月10万円(年120万円) | つみたて枠がちょうど埋まる | 少しある |
| 月30万円(年360万円) | 両方の枠が埋まる | ある |
| それ以上 | 枠を超える | ある |
この表は税だけを見た判断です。値動きを見たくない、運用期間が決まっているほうが続けやすい、投資先の物件が見えるほうが納得できる。こうした理由は税とは別に成り立ちます。
08REITと不動産CFを、条件で並べる
NISAで買えるREITと、不動産クラウドファンディングを同じ物差しで並べます。
| 項目 | REIT(NISAの成長投資枠) | 不動産クラウドファンディング |
|---|---|---|
| 税 | 非課税 | 雑所得・総合課税(20.42%の源泉徴収) |
| 最低投資額 | 銘柄により数万円〜数十万円 | 1万円から |
| 分配の頻度 | 年2回程度 | 運用終了時または定期 |
| 利回りの目安 | 分配金利回り3〜5% | 想定4〜8% |
| 値動き | 毎日動く | 運用期間中は価格が付かない |
| 途中で売れるか | いつでも売れる | 原則できない |
| 元本割れ | 市場価格の変動による | 物件の価値と運用による |
| 投資先 | 複数物件のポートフォリオ | 個別の物件 |
| 情報開示 | 有価証券報告書、適時開示 | 募集ページと運用報告 |
| 運用者 | 資産運用会社(金商業者) | 不特事業者 |
| レバレッジ | REIT自体が借入をしている | 案件による |
| 損益通算 | 上場株式等の中でできる | できない(匿名組合型) |
| 繰越控除 | 3年 | できない |
税、流動性、損益通算の3点でREIT(NISA)が明確に有利です。不動産CFの利点は、値動きがないこと、少額から始められること、投資先が具体的に見えること。
どちらを選ぶかは、何を重視するかの問題です。税の有利さを重視するならREIT、値動きの落ち着きを重視するなら不動産CF。両方を持つという選択もあります。
09NISAで買える不動産関連の商品
NISAの枠で不動産に投資する方法を並べます。
| 商品 | NISAの枠 | 中身 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 国内REITの個別銘柄 | 成長投資枠 | 個別のREITを1銘柄ずつ買う | 銘柄を選べる。分散は自分でする |
| 国内REITのインデックスファンド | 成長投資枠(一部つみたて枠) | 東証REIT指数に連動 | 1本で国内REIT全体に分散 |
| 先進国REITのインデックスファンド | 成長投資枠 | 海外のREITに投資 | 為替の影響を受ける |
| REIT ETF | 成長投資枠 | 上場している投資信託 | 市場でいつでも売買できる |
| バランス型ファンド(REITを含む) | つみたて投資枠 | 株式・債券・REITの組み合わせ | REITの比率は数%〜十数% |
| 不動産関連株 | 成長投資枠 | デベロッパー、不動産管理会社の株式 | REITとは値動きが違う |
「不動産に投資したい」という目的なら、この6つのどれかがNISAの枠で使えます。不動産クラウドファンディングだけが選択肢ではありません。
ただし、REITの値動きは株式に近く、市場が下がるときには一緒に下がります。「不動産だから値動きが小さい」わけではありません。この点は、実物の不動産に近い性質を持つクラウドファンディングとの大きな違いです。
10制度の対象になっていない理由
なぜ匿名組合出資持分がNISAの対象外なのか。制度の作りから説明します。
| NISAの前提 | 匿名組合出資持分の場合 |
|---|---|
| 価格が客観的に決まること | 市場がなく、運用中の価格が付かない |
| 金融機関が保管・管理できること | 事業者ごとに契約が違い、証券口座で扱えない |
| 譲渡が可能であること | 原則として譲渡できない |
| 損益が明確に計算できること | 運用終了まで確定しない |
| 制度の趣旨(国民の資産形成の支援) | 商品としては該当しうるが、上の要件を満たさない |
技術的な問題が大きく、制度の趣旨として排除されているわけではありません。それでも、価格が付かない商品を非課税の枠に入れるのは制度の設計として難しい面があります。
業界団体からは「分配金を申告分離課税にしてほしい」「損益通算を認めてほしい」といった要望が出ています。ただし実現の見通しは立っていません。制度が変わることを前提に投資を決めるのは危険です。いまの制度でどうかで判断してください。
11よくある質問
分配金は確定申告が必要ですか。
給与所得者で、給与以外の所得の合計が年間20万円以下なら、所得税の確定申告は不要です。ただし住民税の申告は別に必要になることがあります。
20.42%が引かれていました。これは何ですか。
所得税の源泉徴収です(所得税20%+復興特別所得税0.42%)。前払いなので、所得が低ければ確定申告で戻ることがあります。
損が出たら他の所得と相殺できますか。
雑所得の場合、他の所得とは相殺できません。同じ年の他の雑所得とだけ相殺できます。
損失を翌年に繰り越せますか。
雑所得の損失は繰り越せません。その年で切り捨てになります。
住民税はどうなりますか。
分配金にも住民税がかかります。税率は一律10%です。源泉徴収されているのは所得税だけで、住民税は別です。
12この記事の数字は、どこから取ったか
会社名を挙げて処分や事故を書くにあたっては、照合を法人番号の完全一致に限りました。社名の部分一致で突き合わせると、似た社名の別会社の記録を拾ってしまいます。当サイトが実際に試したところ、82件が一致したように見えてそのほとんどが別会社でした。
できていないことも書きます。不動産特定共同事業者への監督処分は国土交通省・都道府県の所管で、この事例集には含まれていません。また償還後の実績は、事業型を除いてどの事業者も公表していないため、不動産型・融資型については「戻らなかった件数」を外から数えられません。
数字はいずれも元本を保証するものではなく、この記事は特定の商品の勧誘ではありません。

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