10 分で読める投資総研編集部

系統用蓄電池のビジネスモデルは、1つの設備で「約束・待機・値差」の3つを売り、運転費を引いた残りで建設費を返す形です。
直近の値段で組むと、収入の59%が容量市場から来ます。
発電所のように固定の価格で売る形ではありません。
容量市場835万円と需給調整592万円の合計です。
この記事をスライドで理解する(7枚)
1 / 7この記事の流れ
系統用蓄電池のビジネスモデル|3つの市場の収入
結論から聞きたい。どうなんだ?
系統用蓄電池のビジネスモデルは、1つの設備で「約束・待機・値差」の3つを売り、運転費を引いた残りで建設費を返す形です。
数字で見る
数字で見ると、こうなります
系統用蓄電池のビジネスモデルは、1つの設備で「約束・待機・値差」の3つを売り、運転費を引いた残りで建設費を返す形です。
直近の値段で組むと、収入の59%が容量市場から来ます。
発電所のように固定の価格で売る形ではありません。
売り先は市場で、値段は年・日・30分の単位で変わります。
単位を見ると違いが分かります。
容量市場円/kW・年何に払われるか4年後に電気を出せるという…
安く買って高く売る値差値段の決まり方30分ごとの市場価格この…
需給調整の収入は掛け算です。
電池が傷むと、この収入が毎年1%ずつ減る前提です。
横にスクロールすると残りの列が見えます値段が同じなら、20年…
POINT 3
1,000kWの設備の1年は、円にするといくらか
1,000kWの設備の1年は、円にするといくらか?
6.01円×3時間×1.5ブロック×落札率60%×365日で、1kWあたり5,922円です。
2026年3月14日以降の取引は30分単位なので、ここの「ブ…
1.5ブロックは4.5時間分で、60%落札すると、落札は1日…
横にスクロールすると残りの列が見えます落札した時間でも、指令…
系統用蓄電池のビジネスモデルは、1つの設備で「約束・待機・値差」の3つを売り、運転費を引いた残り…
直近の値段で組むと、収入の59%が容量市場から来ます。
発電所のように固定の価格で売る形ではありません。
まとめ
この記事のポイント
くわしい数字と出どころは、本文で確かめてください。
結論から聞きたい。どうなんだ?
系統用蓄電池のビジネスモデルは、1つの設備で「約束・待機・値差」の3つを売り、運転費を引いた残りで建設費を返す形です。
系統用蓄電池のビジネスモデルは、1つの設備で「約束・待機・値差」の3つを売り、運転費を引いた残りで建設費を返す形です。直近の値段で組むと、収入の59%が容量市場から来ます。
発電所のように固定の価格で売る形ではありません。売り先は市場で、値段は年・日・30分の単位で変わります。この記事では、1,000kW(3,000kWh)の設備を例に、お金の流れを円で追います。
収入の組み方で、1年の収入はどう変わるか(1,000kW)
運転維持費を引く前。卸の値差は充放電のロスと託送料金を引く前の粗い額(値差10.61円×放電量)。需給調整は2025年7月〜2026年6月の平均。
3つの市場で、それぞれ何を売っているのか?
同じ電池でも、市場ごとに売り物が違います。
同じ電池でも、市場ごとに売り物が違います。単位を見ると違いが分かります。
4年後に電気を出せるという約束
年1回のオークション
835万円(1,000kW)
指令があれば出力を動かせる余力(待機)
前日の入札
592万円(1,000kW)
電気そのもの。安く買って高く売る値差
30分ごとの市場価格
351万円〜1,383万円(1,000kW、粗い額)
金額は運転維持費を引く前。卸は充放電のロスと託送料金を引く前で、値差の大きい年と小さい年の幅です。
容量市場は、電池が空でも約束を守れれば払われるお金で、需給調整は待機に払われます。実際に放電した分の電気代は、国の試算では調整力のkWh市場で回収され、収支はゼロと置かれています。
卸の値差の幅が大きいのは、年度の差が大きいためです。値差は4.45円から17.54円まで開いています。
1,000kWの設備の1年は、円にするといくらか?
6.01円×3時間×1.5ブロック×落札率60%×365日で、1kWあたり5,922円です。
需給調整の収入は掛け算です。6.01円×3時間×1.5ブロック×落札率60%×365日で、1kWあたり5,922円です。電池が傷むと、この収入が毎年1%ずつ減る前提です。
| 時点 | 需給調整 | 容量 | 運転維持費 | 手残り |
|---|---|---|---|---|
| 1年目 | 592万円 | 835万円 | −500万円 | 927万円 |
| 5年目 | 569万円 | 835万円 | −500万円 | 903万円 |
| 10年目 | 539万円 | 835万円 | −500万円 | 874万円 |
| 15年目 | 509万円 | 835万円 | −500万円 | 844万円 |
| 20年目 | 480万円 | 835万円 | −500万円 | 814万円 |
値段が同じなら、20年目の手残りは1年目より113万円少なくなります。この表には撤去の費用が入っていません。20年目に建設費の5%、建設費6.2万円/kWh(2023年度の補助事業のシステム価格の平均、工事費を含まない)なら930万円がかかる前提です。
1日のうち、何時間働いているのか?
国の試算(2024年)は、1ブロック3時間、1日8ブロックを前提にしています。
国の試算(2024年)は、1ブロック3時間、1日8ブロックを前提にしています。2026年3月14日以降の取引は30分単位なので、ここの「ブロック」はいまの入札の単位ではなく、1日に何時間分を応札するかを表す試算の前提です。1.5ブロックは4.5時間分で、60%落札すると、落札は1日平均2.7時間です。
| 1日の応札(試算の前提) | 落札した時間 | 1日に占める割合 | 1,000kWの1年の収入 | 20年の利回り |
|---|---|---|---|---|
| 1ブロック(3.0時間分) | 1.8時間 | 8% | 395万円 | −3.5% |
| 1.5ブロック(4.5時間分) | 2.7時間 | 11% | 592万円 | −1.2% |
| 2ブロック(6.0時間分) | 3.6時間 | 15% | 790万円 | 0.8% |
落札した時間でも、指令がなければ放電しません。多くの時間は待っているだけで、残りの時間を卸の値差に使えば収入を足せる、という考え方もあります。三菱総合研究所も、両方の併用など事業者の応札戦略が重要だとしています。
ただ、単純に足せるわけではありません。待機中は電池に余力を残す必要があります。同じ資料は、応札ブロック数を増やすと商品によってはアセスメントで不適合になるリスクがあるとも書いています。売り手の試算で両方の収入が満額足されていたら、運用の前提を聞きます。
収入は、月でどれくらい動くのか?
国の資料の月平均の値段を、1.5ブロック・落札率60%で掛けています。
値段を円に直して月ごとに並べました。国の資料の月平均の値段を、1.5ブロック・落札率60%で掛けています。
需給調整の月の収入(1,000kW、9エリアの単純平均)
ある月の平均の値段で全部を落札した場合の計算で、線に触れると数字が出ます。
複合で運用すると、最も多い月は2025年7月の61万円、最も少ない月は2025年4月の35万円で、1.8倍の差です。三次②では105万円と9万円で、12倍の差があります。
| 年度 | 複合で運用 | 三次②で運用 |
|---|---|---|
| 2024年度 | 525万円 | 550万円 |
| 2025年度 | 578万円 | 170万円 |
2つの年度を並べると、商品で動きが反対になることがあります。どの商品に出すかは、運用の方針で決まります。どの商品に出す前提の試算かで、見える収入は変わります。
エリアが違うと、収入はいくら違うのか?
同じ1,000kWでも、置く場所で収入が変わります。
同じ1,000kWでも、置く場所で収入が変わります。需給調整は直近12か月のエリア平均、容量は2029年度向けのオークションの約定価格で計算しました。
エリア別の1年の収入(1,000kW、調整係数を掛ける前)
運転維持費を引く前。容量は約定価格そのままで、実際の受取額はこれより少なくなります。
| エリア | 需給調整 | 容量(約定価格そのまま) | 合計 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 1,041万円 | 1,497万円 | 2,538万円 |
| 東北 | 705万円 | 1,511万円 | 2,216万円 |
| 東京 | 623万円 | 1,511万円 | 2,134万円 |
| 中部 | 466万円 | 1,239万円 | 1,705万円 |
| 北陸 | 436万円 | 1,239万円 | 1,675万円 |
| 関西 | 648万円 | 1,239万円 | 1,887万円 |
| 中国 | 476万円 | 1,239万円 | 1,715万円 |
| 四国 | 391万円 | 1,239万円 | 1,630万円 |
| 九州 | 543万円 | 1,511万円 | 2,054万円 |
高いエリアと低いエリアで908万円の差があります。1年の話なので、値段が変われば順番も変わります。電池の接続はエリアを選べても、接続の空きや工事費は場所ごとに違うので、収入だけでは比べられません。
お金は、誰を通って持ち主に届くのか?
市場に直接入札するには、取引の資格と運用の仕組みが要ります。
市場に直接入札するには、取引の資格と運用の仕組みが要ります。多くの場合、アグリゲーターと呼ばれる会社が入札や運用を代わりに行います。
お金の流れ(一例)
契約の形は案件で違います。設備の持ち主が自ら入札する場合もあります。
持ち主に届くのは、市場の収入から手数料を引いた額です。国の試算の運転維持費は1万kW以上の案件の申請情報をもとにしたもので、代行の手数料が別にかかるなら、その分だけ手取りが減ります(手数料の見方はアグリゲーターの記事)。
固定額で収入を保証する「トーリング」に近い契約も、海外では例があると国の検討会の資料は触れています。国内の案件で提示されたら、保証の期間と、保証する会社が払えなくなったときの扱いを確かめます。
20年の固定収入を得る道はないのか?
もう1つ、長期脱炭素電源オークションという制度があり、落札すると、原則20年間、固定費の水準の容量収入を受け取れます。
もう1つ、長期脱炭素電源オークションという制度があり、落札すると、原則20年間、固定費の水準の容量収入を受け取れます。蓄電池の上限価格は、2025年度の応札で1kW・年あたり76,205〜80,657円です。通常の容量市場の前提8,348円の9倍以上です。
ただし、タダではありません。卸や需給調整など他の市場で得た収益の約9割を還付します。つまり、値上がりの分はほとんど持ち主に残りません。下振れに強く、上振れに弱い形です。
| 比べる点 | 通常の3市場 | 長期脱炭素電源オークション |
|---|---|---|
| 収入の期間 | 容量は1年ごと、他は市場 | 原則20年 |
| 他の市場の収益 | 全部が手元に残る(手数料を除く) | 約9割を還付 |
| 向いている設備 | 規模を問わず(参加の条件は市場ごと) | 新規投資。応札の条件は募集要綱による |
| 買う側が確かめること | 値段の前提 | 落札済みか、応札前か |
落札できる量には上限があり、毎回全部が受かるわけではありません。「長期で固定」とうたう案件があれば、すでに落札しているのか、これから応札するのかを聞きます。
このビジネスモデルは、どこで崩れやすいのか?
たとえば、直近の複合の値段6.0円が三次②の2.8円の水準になると、1,000kWの需給調整の収入は592万円から278万円に減ります。
たとえば、直近の複合の値段6.0円が三次②の2.8円の水準になると、1,000kWの需給調整の収入は592万円から278万円に減ります。リスク全体はリスクの記事にまとめました。
規模が違うと、収支の桁はどう変わるのか?
同じ単価で掛け算すると、1台の小さな設備から大きな蓄電所まで、桁がこれだけ違います。
同じ単価で掛け算すると、1台の小さな設備から大きな蓄電所まで、桁がこれだけ違います。1kWあたりの条件は同じと置いた、見た目の比較です。
| 出力 | 需給調整 | 容量 | 運転維持費 | 手残り(1年目) |
|---|---|---|---|---|
| 500kW | 296万円 | 417万円 | 250万円 | 463万円 |
| 1,000kW | 592万円 | 835万円 | 500万円 | 927万円 |
| 2,000kW | 1,184万円 | 1,670万円 | 1,000万円 | 1,854万円 |
| 10,000kW | 5,922万円 | 8,348万円 | 5,000万円 | 9,270万円 |
| 50,000kW | 29,610万円 | 41,740万円 | 25,000万円 | 46,350万円 |
実際は、規模で条件が変わります。1,000kW未満の設備は容量市場に単独で出られません。大きな設備は特別高圧の接続が必要で、工期も延びます。
収入の中で、読みやすいものと読みにくいものはどれか?
売り手の収支表を、この区分で色分けしてみると、確定に近い収入がどれだけあるかが見えてきます。
| 収入 | 金額が決まる時期 | 読みやすさ | 動く理由 |
|---|---|---|---|
| 容量(メインオークション) | 実需給の4年前 | 落札後は1年分が確定 | 電源の余裕、入札の量、調整係数 |
| 需給調整 | 前日 | 読みにくい | 募集量、競争相手、商品の見直し |
| 卸の値差 | 前日〜当日 | 読みにくい | 燃料の価格、太陽光の量、需要 |
| 長期脱炭素電源オークション | 応札時 | 落札すれば長期で固定 | 競争、物価の補正、還付 |
| kWh(調整力の精算) | 実動後 | 試算では差し引きゼロ | V1単価、託送料金 |
売り手の収支表を、この区分で色分けしてみると、確定に近い収入がどれだけあるかが見えてきます。
事業には、誰が関わっているのか?
1つの案件に多くの会社が関わります。
1つの案件に多くの会社が関わります。買う人から見ると、どこが抜けても収入が止まります。
| 役割 | 受け持つこと | 見ておく点 |
|---|---|---|
| 開発・販売の会社 | 用地、接続の手続き、案件の販売 | 接続の段階、販売後の責任 |
| メーカー | 電池、PCS、制御装置 | 保証の条件、導入の実績 |
| 施工会社(EPC) | 設計、調達、工事 | 工期、追加費用の扱い |
| 保守の会社(O&M) | 点検、遠隔監視、故障の対応 | 駆けつけの時間、費用 |
| アグリゲーター | 入札、運用、精算 | 手数料、運用の実績、撤退時の扱い |
| 一般送配電事業者 | 電線、接続、調整力の調達 | 工事費負担金、工期 |
| 広域機関 | 容量市場の運営 | 参加の条件、ペナルティ |
| 土地の持ち主 | 用地の賃貸や売却 | 権利の期間、撤去の義務 |
事業は、どんな順番で進むのか?
収入が始まるのは8番の後です。
高圧以上の場合の手続きの流れで、国の委託調査で整理された標準的な期間を並べました。
| 順番 | 手続き | 標準の期間 | お金 |
|---|---|---|---|
| 1 | 事前相談(無料) | 原則1か月以内 | なし |
| 2 | 接続検討の書類づくり | 2か月程度 | なし |
| 3 | 接続検討の申込みと回答 | 原則3か月(高圧は原則2か月)以内 | 検討料 22万円 |
| 4 | 契約申込み(連系予約) | 回答から1年以内 | 保証金 |
| 5 | 現地調査と技術検討、連系承諾 | 原則6か月か合意した期間 | なし |
| 6 | 工事費負担金の契約 | 承諾から1か月以内 | 工事費負担金 |
| 7 | 接続の工事 | 中央値で高圧18か月・特別高圧36か月 | なし |
| 8 | 連系、市場への参加 | 運転開始 | 収入の開始 |
収入が始まるのは8番の後です。案件を途中の段階で買うなら、何番まで済んでいるかで残りの期間とリスクが変わります。工事費や工期は接続検討の回答で確約されるものではなく、契約申込み後の調査で変わることがあります。
ほかに、よく聞かれることは?
よく聞かれることを、ここにまとめました。
電気をためて出す力を、容量市場・需給調整市場・卸電力市場に売り、運転費を引いた残りで建設費を回収する事業です。
容量と需給調整、容量と卸の組み合わせは国の試算でも使われています。需給調整と卸の併用は運用の工夫が要り、満額を足せるわけではありません。
この記事の計算では、59%が容量、残りが需給調整です。電気の値差を主にする運用もありますが、年度で値差が大きく変わります。
多くはアグリゲーターなどの会社が入札を代行します。その手数料は案件ごとに確かめます。
系統用蓄電池に太陽光のような固定価格買取はありません。20年の容量収入を得る制度はありますが、他の市場の収益の約9割を還付する条件があります。
卸の値差の額は「値差×3時間×深度80%×効率90%×365日」の粗い額です。国の試算にある充放電ロスの費用・託送料金・再エネ賦課金は引いていません。エリア別の容量は約定価格そのままで、調整係数を掛けていません。
月の収入は平均の値段で全量を落札した場合の計算で、実際の設備の収入ではありません。過去の値段による計算で、将来を予想したものではありません。特定の商品や会社をすすめるものでもありません。
「計算の例」は実際の商品の条件ではありません。出口(売却・契約終了)で戻る額は、帳簿の価値がほぼ0になっているので、そのまま利益として課税されるとしています。 法人は実効税率30%の例です。手数料・出口の額・出口の税率を変えた詳しい計算は減価償却の繰り延べ計算で。