01同じ種別の中で分けても、分散にならない部分がある
案件を10件に分けても、その10件がすべて不動産型なら、不動産市況が悪化したときにまとめて影響を受けます。分散の効果は、「何が起きたときに一緒に動くか」で決まります。
| 分ける軸 | 分散の効果 | 残る共通のリスク |
|---|---|---|
| 案件を分ける(同じ事業者) | 個別の物件・貸付先のリスクは分かれる | 事業者の破綻、種別のリスク |
| 事業者を分ける(同じ種別) | 事業者の破綻のリスクが分かれる | 種別のリスク(不動産市況など) |
| 種別を分ける | 要因そのものが分かれる | 景気全体、金利 |
| 資産クラスを分ける(預金・株式・債券も持つ) | さらに要因が分かれる | — |
3行目が、この記事の主題です。種別を分けると、元本が減る原因そのものが変わります。
| 何が起きたとき | 不動産型 | 融資型 | 株式投資型 | 事業型 |
|---|---|---|---|---|
| 不動産価格が下がる | 直接効く | 借り手が不動産事業者なら効く | ほぼ効かない | ほぼ効かない |
| 金利が上がる | 効く(借入と出口) | 効く(借り手の資金繰り) | 効く(評価額) | 効く |
| 特定の業種が不調 | その用途の物件に効く | その業種の借り手に効く | その分野の企業に効く | その事業に効く |
| 上場市場が下がる | ほぼ効かない | ほぼ効かない | 効く(EXITが遠のく) | ほぼ効かない |
| 景気全体が悪化 | 効く | 効く | 効く | 効く |
| 事業者が破綻 | その事業者の案件に効く | 同左 | 影響は小さい | 同左 |
最後から2行目を見てください。景気全体が悪化すれば、どの種別も効きます。種別の分散で消せるのは個別の要因だけで、全体に効く要因は残ります。
02分散の効果を、数字で確かめる
1社がゼロになったときの損失の割合を計算します。分散の効果は、ここでいちばん分かりやすく出ます。
| 配分 | 1社あたり | 1社がゼロになったときの損失 | 2社がゼロなら |
|---|---|---|---|
| 1社に均等 | 100% | 100% | 200% |
| 2社に均等 | 50% | 50% | 100% |
| 3社に均等 | 33% | 33% | 66% |
| 5社に均等 | 20% | 20% | 40% |
| 8社に均等 | 12% | 12% | 25% |
| 10社に均等 | 10% | 10% | 20% |
| 15社に均等 | 6% | 6% | 13% |
| 20社に均等 | 5% | 5% | 10% |
3社に分ければ、1社がゼロになっても損失は33%です。10社なら10%。ただし、これは「全損」の場合で、実際には部分的な元本割れのほうが多くなります。
| 配分 | 1社で30%の元本割れ | 3社で30%ずつ | 全社で10%ずつ |
|---|---|---|---|
| 1社に均等 | 30% | 30% | 10% |
| 3社に均等 | 10% | 30% | 10% |
| 5社に均等 | 6% | 18% | 10% |
| 10社に均等 | 3% | 9% | 10% |
最後の列が重要です。全社に同じ要因が効けば、分散しても損失の割合は変わりません。これが「同じ種別の中で分けても分散にならない部分がある」ということの意味です。
03種別ごとの条件を、1枚で見る
4種別の条件を並べます。分散するなら、性質が違うものを組み合わせることになります。
| 不動産型 | 融資型 | 株式投資型 | 事業型 | |
|---|---|---|---|---|
| 掲載社数 | 80社 | 20社 | 5社 | 5社 |
| 実案件の利回りの中央値 | 5.5% | 7.0% | 利回りの概念がない | — |
| 運用期間の中央値 | 10ヶ月 | 12ヶ月 | 期限がない | 長期 |
| 最低投資額の中央値 | 1万円 | 1万円 | 10万円 | 5万円 |
| 下落を先に受ける仕組み | 優先劣後 | 担保・保証(案件による) | なし | 原則なし |
| 投資の上限 | なし | なし | 1社年間50万円 | なし |
| 所得区分 | 雑所得(匿名組合) | 雑所得 | 譲渡所得 | 雑所得 |
| 元本が減る主な原因 | 物件の価値、空室、売却の遅れ | 貸付先の返済不能 | 会社の倒産、EXITがないこと | 事業の不振 |
04配分の型を、いくつか示す
正解はありませんが、考え方の型を並べます。金額は「投資に回せる資金」に対する割合です。
| 型 | 不動産型 | 融資型 | 事業型 | 株式投資型 | 向く人 |
|---|---|---|---|---|---|
| 安定重視 | 60% | 30% | 10% | 0% | 値動きを避けたい。期間が読めるほうがよい |
| バランス | 40% | 30% | 15% | 15% | 全体を経験したい |
| リターン重視 | 30% | 20% | 20% | 30% | 無くなってもよい資金がある |
| 不動産に寄せない | 25% | 35% | 25% | 15% | 他に不動産を持っている |
| まず試す | 70% | 30% | 0% | 0% | 最低投資額が低い種別から始める |
この表は、投資型クラウドファンディングに回す資金の中での配分です。資産全体の中でこの商品群が何%を占めるべきかは、別の話です。
| 資産全体での位置づけ | 考え方 |
|---|---|
| 生活防衛資金(半年〜1年分) | 預金。投資に回さない |
| NISAの枠 | 先に埋める。非課税が最も効く |
| iDeCo | 使える人は上限まで。ただし60歳まで引き出せない |
| 課税口座での投資信託・株式 | 損益通算と繰越が使える |
| 投資型クラウドファンディング | 上記のあと。値動きがなく、期間が決まっている性質に価値を感じるなら |
05分散しすぎることの問題
分ければ分けるほどよい、というわけではありません。管理できなくなると、分散の効果より負担が上回ります。
| 事業者の数 | 分散の効果 | 管理の負担 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 1社 | なし | 軽い | 危険 |
| 2〜3社 | 限定的 | 軽い | 最低限 |
| 4〜6社 | 十分 | 中くらい | 推奨 |
| 7〜10社 | ほぼ頭打ち | 重い | 管理できるなら |
| 11社以上 | ほとんど増えない | かなり重い | 確定申告の書類が11通 |
10社に出すと、確定申告のときに10社ぶんの年間取引報告書を集める必要があります。10か所のマイページにログインし、10通りのパスワードを管理することにもなります。
実務的な結論です。4社から6社に分け、そのうち2〜3種別を混ぜる。これが、効果と手間の釣り合う範囲です。
そして管理表を1枚作ること。事業者名、案件名、金額、満了予定日、状態。この5列があれば、全体がどうなっているかを月に5分で把握できます。
06よくある質問
4種別のうち、どれがいちばん安全ですか。
どれも元本は保証されません。守られ方が違うだけです。不動産型には優先劣後があり、融資型には担保がある案件があり、株式投資型には何もありません。
種別をまたいで分散する意味はありますか。
あります。同じ不動産型の中で案件を分けても、不動産市況という同じ要因の影響を受けます。種別が違えば要因が違います。
同じ利回りなら、どれを選べばよいですか。
下落を先に受ける人がいる設計(優先劣後や担保)のほうが、投資家には有利です。ただし利回りの意味も種別で違います。
初心者はどれから始めればよいですか。
決まった答えはありません。ただし株式投資型は資金が戻る時期が決まっておらず、ゼロになる確率も高いので、無くなっても困らない範囲で出すものです。
07この記事の数字は、どこから取ったか
会社名を挙げて処分や事故を書くにあたっては、照合を法人番号の完全一致に限りました。社名の部分一致で突き合わせると、似た社名の別会社の記録を拾ってしまいます。当サイトが実際に試したところ、82件が一致したように見えてそのほとんどが別会社でした。
できていないことも書きます。不動産特定共同事業者への監督処分は国土交通省・都道府県の所管で、この事例集には含まれていません。また償還後の実績は、事業型を除いてどの事業者も公表していないため、不動産型・融資型については「戻らなかった件数」を外から数えられません。
数字はいずれも元本を保証するものではなく、この記事は特定の商品の勧誘ではありません。

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