01許可制と登録制の差を、要件の数字で比べる
4種別の根拠法が違うことはよく書かれますが、その差が具体的に何なのかはあまり書かれません。数字で並べます。
| 不動産型 | 融資型 | 株式投資型 | 事業型 | |
|---|---|---|---|---|
| 根拠法 | 不動産特定共同事業法 | 金商法+貸金業法 | 金商法 | 金商法 |
| 手続き | 許可制 | 登録制+登録制 | 登録制 | 登録制 |
| 最低資本金 | 1億円(第1号)/1,000万円(小規模) | 1,000万円+純資産5,000万円(貸金業) | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 純資産の要件 | 資本金の90%以上 | 貸金業は5,000万円以上 | — | — |
| 人的要件 | 業務管理者を事務所ごとに | 貸金業務取扱主任者を営業所ごとに | 体制整備 | 体制整備 |
| 更新 | なし(小規模は5年) | 貸金業は3年ごと | なし | なし |
| 協会への加入 | 制度上の要件ではない | 第二種金商業協会 | 日本証券業協会(必須) | 第二種金商業協会 |
| 監督 | 国土交通省・都道府県 | 金融庁(財務局) | 金融庁(財務局) | 金融庁(財務局) |
| 処分の公表 | 所管がばらばら | 行政処分事例集で一覧 | 同左 | 同左 |
| 掲載社数 | 80社 | 20社 | 5社 | 5社 |
3行目を見てください。参入の壁がいちばん高いのは不動産型(1億円)、次が融資型(純資産5,000万円)です。株式投資型と事業型は1,000万円です。
02許可制と登録制は、何が違うのか
言葉の違いではなく、行政の判断の性質が違います。
| 許可制 | 登録制 | |
|---|---|---|
| 行政の判断 | 許可するかどうかを判断する | 要件を満たせば登録する |
| 裁量 | ある | 原則としてない |
| 審査 | 事前に体制を確かめる | 書面審査が中心 |
| 拒否 | 公益上の理由で拒否できる場合がある | 要件を満たせば拒否できない |
| 取り消し | 許可の取消し | 登録の取消し |
| この業界での例 | 不動産特定共同事業 | 金融商品取引業、貸金業、小規模不特事業 |
ただし、許可制のほうが安全とは限りません。過去に事故を起こした事業者は、いずれも登録・許可を受けていました。
| 登録・許可が確かめていること | 確かめていないこと |
|---|---|
| 申請時点で法令上の要件を満たしていた | いま現在も満たしていること |
| 役員に欠格事由がなかった | 経営が健全であること |
| 業務管理の体制について書面で説明があった | 実際にそのとおり運用されていること |
| 行政が監督する対象になっている | 行政が個別の案件を審査していること |
| 違反があれば処分が出る仕組みの中にいる | 集めたお金が正しく使われること |
03処分が公表される仕組みの差
これが投資家にとって実務上いちばん大きな差です。
| 金商法の枠(融資型・株式投資型・事業型) | 不特法の枠(不動産型) | |
|---|---|---|
| 処分を出す役所 | 金融庁(財務局) | 国土交通省・都道府県 |
| 公表の形 | 行政処分事例集(Excelで一覧) | 各役所のサイト。形式はばらばら |
| 過去分の検索 | できる(全件がExcelに入っている) | 役所ごとに探す必要がある |
| 法人番号での照合 | できる | 難しい |
| 投資家が確かめる手間 | 5分 | 所管を特定してから探す |
つまり、不動産型の事業者について「処分歴がない」と確認するのは、金商法の枠の事業者より難しいということです。
「金融庁の行政処分事例集に名前がない」は、不動産型についてはほとんど何の情報にもなりません。許可を出した都道府県と国土交通省を別に見る必要があります。
04投資家が持つ権利の差
根拠法が違うと、投資家が持っているものの法的な性質も変わります。
| 種別 | 投資家が持つもの | 法的な性質 | 事業者が破綻したとき |
|---|---|---|---|
| 不動産型(匿名組合) | 出資持分 | 営業者への債権に近い | 分別管理の実効性が争点 |
| 不動産型(任意組合) | 不動産の共有持分 | 物権(所有権の一部) | 共有持分は投資家のもの |
| 融資型 | 出資持分(貸付債権への間接的な権利) | みなし有価証券 | 信託されていれば守られる |
| 株式投資型 | 未上場株式 | 有価証券(一般株式等) | 資金は発行会社に渡っている |
| 事業型 | 出資持分 | みなし有価証券 | 分別管理による |
2行目の任意組合型だけが、投資家が物権を持ちます。不動産そのものの共有持分なので、事業者が破綻してもその持分は投資家のものです。
ただし手続きは複雑で、最低投資額も高く(100万円単位が通例)、扱っている事業者も限られます。手軽さと、権利の強さはおおむね反比例しています。
05この差を、投資家の行動にどう落とすか
制度の違いを知って、実際に何をするか。3つに絞ります。
| やること | 理由 |
|---|---|
| 種別ごとに、確かめる場所を変える | 不動産型は国交省と都道府県、それ以外は金融庁。同じ場所を見ても意味がない |
| 登録の種別と、扱っている商品が合っているかを見る | 融資型なら貸金業登録も要る。片方しかない事業者が融資型を出していれば問題 |
| 登録があることを安全の証明にしない | 過去に事故を起こした事業者も全社が登録業者だった |
そして、どの種別でも共通する唯一の保護を確認しておきます。
| 共通する保護 | 中身 |
|---|---|
| 損失は出資額まで | 追加の支払いを求められることはない。匿名組合出資も、不動産の共有持分も、未上場株式も同じ |
| 書面の交付義務 | 契約の前に、重要事項を書いた書面が交付される |
| 説明義務 | 金融サービス提供法に基づく損害賠償の根拠になる |
| 分別管理の義務 | 程度の差はあるが、どの種別にもある |
| 元本保証の禁止 | 出資法により、元本を保証することはできない |
最後の行が、この商品群を見分けるいちばん簡単な基準です。「元本保証」と書いてある業者は、無登録か、法令を理解していないかのどちらかです。根拠法が何であれ、この点は変わりません。
06よくある質問
4種別のうち、どれがいちばん安全ですか。
どれも元本は保証されません。守られ方が違うだけです。不動産型には優先劣後があり、融資型には担保がある案件があり、株式投資型には何もありません。
種別をまたいで分散する意味はありますか。
あります。同じ不動産型の中で案件を分けても、不動産市況という同じ要因の影響を受けます。種別が違えば要因が違います。
同じ利回りなら、どれを選べばよいですか。
下落を先に受ける人がいる設計(優先劣後や担保)のほうが、投資家には有利です。ただし利回りの意味も種別で違います。
初心者はどれから始めればよいですか。
決まった答えはありません。ただし株式投資型は資金が戻る時期が決まっておらず、ゼロになる確率も高いので、無くなっても困らない範囲で出すものです。
07この記事の数字は、どこから取ったか
会社名を挙げて処分や事故を書くにあたっては、照合を法人番号の完全一致に限りました。社名の部分一致で突き合わせると、似た社名の別会社の記録を拾ってしまいます。当サイトが実際に試したところ、82件が一致したように見えてそのほとんどが別会社でした。
できていないことも書きます。不動産特定共同事業者への監督処分は国土交通省・都道府県の所管で、この事例集には含まれていません。また償還後の実績は、事業型を除いてどの事業者も公表していないため、不動産型・融資型については「戻らなかった件数」を外から数えられません。
数字はいずれも元本を保証するものではなく、この記事は特定の商品の勧誘ではありません。

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